一歩先を歩む者たち
プロジェクト
  • PROJECT1 シナジー戦略で、未来のビジネスを切り拓く
    • Story1 世界唯一に向け、シナジー開発プロジェクトが画期的なかたちで始動!
    • Story2 高いハードルを乗り越えるためコミュニケーションを徹底し、確実にゴールを目指す
    • Story3 テープアウト&ブートアップ!実績を出したシナジー開発で次代の世界市場に挑む

プロジェクトストーリー

Project Story1 シナジー戦略で、未来のビジネスを切り拓く。

テープアウト&ブートアップ!ついに『火を入れる』時がやって来た。

2009年11月に基本動作できるサンプルを上げるというインテル社が求めてきた期限が刻一刻と迫るなか、開発スタッフたちはそれぞれの担当箇所ごとに調整を進めていた。ロームグループは今回、Atom™ E600シリーズのチップセットを仕上げ、さらに「リファレンスボード」としてプロセッサーとチップセットが組まれたボードを開発し、マーケットに提供する計画を当初から持っていた。チップセットのサンプルをある程度仕上げるとともに、メンバーは次なるリファレンスボードの製作へと取り掛かっていった。

「11月の製品発表の段階で、電源・クロック・IOHそしてプロセッサーをひとつのボードとして一緒に動かすことが当面の目標。まずは、お互いのLSIの部分を切り分けたボードを作って調整を進めることになりました。それが動いたねっていう段階で合体させようと。いきなり一式にして作ってしまうと、動作に不具合があってもどこが悪いのか分かりませんから。それぞれがクリアになった段階で合体させました」

下豊留を中心に開発スタッフが全員そろって見守るなか、据えられたボードに電源が入れられた。テストで最初にブートアップすることを通称『火を入れる』と呼ばれる。苦労の果てに、ようやくシステムを動かすまで漕ぎつけた喜びは今でも忘れられないと言う。

「テープアウトから上がったサンプルを使って、『火を入れ』てWindowsのブート画面が出て、旗がなびいた瞬間は感動しました!しかも一発で動きました。メンバー全員から歓声が上がった。ビデオでも撮っておけば良かったと思いました。システムが上手く動いたかどうかって、そこなんですよね。オペレーションのシステムがしっかりと起動するというのが一番大事です。それが大変感動しましたね」

ただしインテル社によるCPUも、その時点ではまだ完成度が高くなかったこともあり、この時点での完成度は85%くらい。10ヶ月後の正式リリースに向けて、インテル社から求められている性能を突き詰めていく修正がそこからまだまだ続いていった。

全世界が注目する画期的なリファレンスボード。グループのシナジーで、次代の世界市場に挑む。

そしてついに迎えた、2010年9月。IDF(Intel Developer Forum)にてインテル社のAtom™プロセッサーE600番台の正式発表の日がやって来た。そこでは同時にロームグループが作ったチップセットが搭載されたリファレンスボードによる動作のデモンストレーションがいち早く公開された。

「その時私たちは日本にいましたが、インテル社のプレゼンはWeb上のムービーで即座にアップされました。ロームグループが作ったチップセットとリファレンスボードが、モニター上にドーンと登場した瞬間、とても感動しましたね。CPU以外の主要部品をサードパーティーベンダーで提供してこのように同時に発表することなんて、おそらくこれまで無かったと思います。チップセットだけでなくボードまでも製品化したのは、世界で唯一ロームグループだけです」

そんな達成感と自信に満ちた藤原の言葉に、酒井も大きく頷く。「新しいコラボレーションで、技術的にも新しいものに挑むという中で、今まで経験したことのないトラブルや修整が、通常の何倍も集中した凄まじい1年間でした。でも、それを乗り越えてシステムとして仕上げられたのはロームグループだからこそ。インテルの発表を見たとき、この日を無事迎えられたという喜びは、もう言葉にできないほどのものでした」

インテルのAtom™ E600シリーズのリリースとともにロームグループが提供を開始したリファレンスボードの意義は非常に大きいと、その魅力を熱く語ってくれたのは山本だ。「従来、CPUを購入したお客様は、電源LSI、クロックLSI、IOHそしてメモリといった各部品を搭載したボード自体を開発するための回路設計や評価を自身で行う必要がありましたが、今回開発したリファレンスボードを使用することで、すごく短い期間でAtom™ E600シリーズやその周辺回路の特性確認の評価を行うことができます。私たちは、お客様にリファレンスボードの回路図、レイアウト図の提供を行っており、お客様が開発するにあたっては、かなりのメリットを提供できるプロジェクトになったと思います」

次代のプラットフォームビジネスにおいては、こうしたリファレンスボードを用意することこそがキーポイントだと、メンバー一同は確信を抱く。 「今回の開発で構築したインテル社とのパートナーシップはもとより、ロームグループとしてのシナジー戦略のもとで、開発によって得た新規技術や、プラットフォームビジネスを進化させていくことで、今後さらにビジネスを拡大していきたいです」

そう語る下豊留はじめメンバー全員が、より一層の意欲と結束を強めて新しいビジネスの視座に立っている。次なる目標に向けて、すでに挑戦は始まっているのだ。

プロジェクトメンバーのコメント

私はこのプロジェクトのクロックLSI担当としてのサポートを継続しながら、すでに次のミッションとしてセンサ関連のICを開発する部門に所属となっています。タブレットPC、スマートフォンに搭載される様なセンシング技術は、PC機器との融合がこれからさらに進む事が想定されます。そういった面から今後センサ関連の商品も含めたチップセットの提案をできるように商品開発を手掛けていきたいと考えているところです。

正式発表となり、プレスリリースされたり、新聞記者会見を行ったりと、いざ注目を浴びると「今、自分たちが世界の最先端になっているな」という嬉しい気分はありましたね。やはり社内的にもインテル社とのコラボレーションというのはセンセーショナルだったんでしょう。そんなことをやっていたんだねと言う驚きの声を貰いました。やはり作ったからには、これから売れてこそとは思うのですが、新技術として今年の社長賞も受賞し、成果に対してはさっそく会社から評価をいただくことができました。

パソコンの主要部品をロームグループで開発し、動かすことができたのは正直に「すごい」と感じました。今回のコラボレーションを機に蓄積することができたインテル社との強力なパートナーシップを活かして、全世界でローム製品がますます採用されるように、まずはこのリファレンスボードのサポートやバージョンアップはもちろん、さらに次の展開にも挑戦していきたいと思います。

今回ロームグループ内の初コラボレーションで感じたロームの魅力は、各担当者に責任がしっかり任せられていて、開発だけでなくビジネスもしっかり考えてやらせてくれるところだと思いました。お客様に喜んでいただくため、製品を採用してもらうために必要な事を各担当者が現場で掴み、行動する。そうすることでモチベーションは与えられずとも、自然に湧いてくる。そういった環境がロームにはあるのだと感じることができ、大変良かったと思います。

プロジェクトメンバーのコメント