一歩先を歩む者たち
プロジェクト
  • PROJECT1 シナジー戦略で、未来のビジネスを切り拓く
    • Story1 世界唯一に向け、シナジー開発プロジェクトが画期的なかたちで始動!
    • Story2 高いハードルを乗り越えるためコミュニケーションを徹底し、確実にゴールを目指す
    • Story3 テープアウト&ブートアップ!実績を出したシナジー開発で次代の世界市場に挑む

プロジェクトストーリー

Project Story1 シナジー戦略で、未来のビジネスを切り拓く。

あらゆることが初体験、そして短期間の開発。だからこそ、コミュニケーションを徹底する。

短い開発期間でやると約束したものの、まず開発の前段階となる仕様についての情報のやり取りや打合せだけでも膨大なものがあった。プロジェクトに関わった正規メンバーは、多い時で総勢30名ほど。ローム、ラピスともに総力を結集して厳しい短期スケジュールに挑んでいた。クロックLSIを担当した藤原は、そうしたタイトなスケジュールのなか仕様を詰めていく上でまず不可欠だったのは、インテルアーキテクチャーそのものへの理解だったと言う。

「つまり、インテルのプロセッサー開発の歴史のなかで、彼らが共有している至極当たり前のことを私たちも理解し、同じ土俵で話ができるレベルまでに自分を持っていかないといけない。そこが大変でしたね」

開発キックオフから数カ月間は、月に一度の頻度でマレーシアのペナン島にある「Atom™ E600」シリーズの開発拠点を訪問し、Face to Faceでのミーティングを重ね、仕様の大まかな擦り合わせをクリアした後は、電話会議でのやりとりが主体となった。

「当初は英語が使えないメンバーばかりでしたが、今ではほとんどのメンバーが話せるようになっていますね。話せないと仕事が進まないといった状況で、メールなり電話会議なり、みんな必死に取り組みました。それでもどうしても行き詰った時は、すぐペナンに飛んでFace to Faceで話をしに行きましたからね」

そんな密度の濃いコミュニケーションのもと、苦労の末に彼らがまとめた仕様書やレポートなどの技術資料は、全て英文で作成され、多いものは1,000ページにも及んだ。

また、ロームの開発チームにとっては、様々な面で初めての経験ばかり。パワーコントロールLSIを担当した山本峰久は、当時の心境をこう語る。 「インテル社と、電源とクロックに関しての初めての技術打合せに漕ぎつけたのは2009年7月。もうこの時点で、同年11月に基本動作できるサンプルが必要だということが決まっていたんです。2010年9月に開催するIDF(Intel Developer Forum)でAtom™ E600シリーズとともにチップセットを発表することが最初のゴール。次々に訪れる課題を常にブレイクスルーし続けて行かないといけない。極端な話、通常の半分ぐらいのスピードで進めないと間に合わない状態だったんです。とにかく休むことなくずっとひた走る感覚でしたね」

開発のハードルは高いが、乗り越えれば確実にゴールは見えてくるものだ。

開発のスピード感をそう語る山本とともに電源LSIを担当した酒井優も、「各LSI担当それぞれに共通した苦労は、インテル社が同時進行で開発を続けるAtom™ E600自体の仕様変更に、リリース直前まで幾度となく対応しなければいけなかったこと」だったと言う。

「通常、まず仕様が決まってから、それに対応するLSIを作るというものなのですが、今回はインテル社のCPUと同時並行での開発です。だからCPU本体の仕様変更がある度に、こちらの設計もスピーディーに変更しないとといけない。実際は、大きく4回ほどだったでしょうか。これが非常に大変でしたね。もう一度やり直さないといけないの!?と、どん底に落とされた気分になりましたね」

ひとつのLSIを作るための最終工程として、シリコンウェーハ上にプリントされる回路のマスクデータを出すタイミングのことをテープアウトという。これは一度出してしまうと途中でやり直しがきかない非常に高額なものだ。特に下豊留が担当するIOHは最先端のプロセスを使うため、テープアウトが失敗すると、その費用だけで数千万円が水の泡になってしまう。それだけ重要なテープアウトの直前に、最大のターニングポイントがあったと振り返る。

「我々のコンパニオンチップに共通してある、最も重要なCPUとの接続インターフェースであるPCIエクスプレスという接続のバスがあるのですが、それがプロトタイピングボード上でどうしても動かなかった。何が原因か分からない状態が数十日続き、LSIのテープアウトの期限が近づき焦りましたね。絶対ミスはできないというプレッシャーのなか、開発スタッフたちは途方に暮れる状態。結局、海外のベンダーに全面的に協力を要請し、緊急の電話会議を行って、ようやく不具合の原因が解明され、テープアウトに漕ぎつけました。ここを乗り越えられなかったら、ひょっとするとズルズルといってたかも知れません」

自分たちだけで抱えるのではなく関係する会社とも問題を共有し、少しでも早く解決する大切さを改めて実感したと言う。