一歩先を歩む者たち
プロジェクト
  • PROJECT1 シナジー戦略で、未来のビジネスを切り拓く
    • Story1 世界唯一に向け、シナジー開発プロジェクトが画期的なかたちで始動!
    • Story2 高いハードルを乗り越えるためコミュニケーションを徹底し、確実にゴールを目指す
    • Story3 テープアウト&ブートアップ!実績を出したシナジー開発で次代の世界市場に挑む

プロジェクトストーリー

Project Story1 シナジー戦略で、未来のビジネスを切り拓く。

世界で唯一。これまでにない画期的な製品。「インテル® Atom™ プロセッサーE600番台用チップセット」とは?

「まさか我々がインテル社のキーデバイスであるAtom™ プロセッサーのチップセットをトータルに開発する事になるとは、さすがに考えていませんでした」プロジェクトのスタート時を振り返り、そう語るのは、今回のプロジェクト全体をまとめたラピスセミコンダクタの下豊留 勉だ。

2010年9月、マイクロプロセッサー世界最大手であるインテル社は、米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された自社製品発表会で「Atom™ プロセッサー E600 番台」を新たに発表した。この新製品は、同社が従来のパソコンやサーバー向けプロセッサーに続く新たな事業の柱とすべく、携帯情報機器やカーナビなどのさまざまな組み込み機器向けCPU市場を開拓するために開発された、いわゆる戦略製品だ。

その会場で同時に発表されたのが、ロームとグループ会社ラピスセミコンダクタ(当時の社名:OKIセミコンダクタ)によって開発された"専用チップセット"だ。

「チップセットを構成するのは、 私たちラピス社が 開発を担当した、組み込まれる機器のアプリケーションに対する入出力を担う『IOH(Input Output Hub LSI)』、そしてロームにより開発された、システムの電源供給とコントロールを行う『パワーマネージメントLSI』とシステムのクロック供給を行う『クロックジェネレータLSI』の合計3つのLSIです。つまり、機器組み込みに不可欠な主要チップをセットとしてロームグループで開発することに成功したのです」

このようにインテル社のパートナーとしてCPU以外の主要 LSI をチップセットとしてCPU本体と同時発表をしたのは、世界で唯一彼らだけだという。 「インテル社のプラットフォームへの参入は私たちラピス社にとって念願だったこと。それが今回ロームと一体となることで、チップセットというトータルかつ最適なかたちで提供できたのです」 と、ロームグループとしてのシナジー効果を下豊留は熱く語る。

ロームグループ初のシナジー開発プロジェクトが画期的なかたちで始動した!

今回インテルがリリースしたAtom™ E600シリーズの最大の特長は、細分化した組み込み機器のニーズに効率よく柔軟に対応できるインターフェース規格であるPCI Expressを採用し、専用LSI開発については、積極的に外部ベンダーに門戸を開いた点だ。そして、最初のIOHのパートナー・ベンダーとしてインテル社から白羽の矢が立ったのがラピス社だった。これについて下豊留は以下のように分析する。

「従来、インテル社はCPUを取り巻く周辺ブリッジLSIまで自社で開発してきましたが、組み込み機器市場の多様な入出力ニーズに対応するパッケージを作り込んでいくことは難しいと感じていたのでしょう。 そこで今回はそのサウスブリッジ(機器のアプリケーションに対する入出力に関わるLSI)をすでに産業機器向けに実績があるサードパーティーに任せるという選択をしたのです。我々はタイミングよくそれに上手く乗って行けたんです」

しかしタイミングだけで採用に至ったわけではない。ラピス社が有する、通信・車載など向けのロジックデバイスの高い技術と、そうした産業機器向けに展開するLSIビジネスの実績が、信頼性の面からもインテル社に認めてもらえたのだ。

「その後、まもなくしてラピス社がロームグループに入ったのですが、ロームはプラットフォームを構成する主要なLSIである電源、クロックLSIの分野を得意としている。そこでグループとして一緒に開発するという話が急浮上してきたのです」 この下豊留の話を受け、クロックジェネレータLSIの開発を担当した藤原正勇はこう語る。

「ラピス社からロームのマーケティング部門に話を持ちかけられてからの経営陣のアクションは早かったですね。『やるぞ』となった後は、早速プロジェクトチームが編成され、インテル社に向けて、ラビス社のIOHとロームが持つ電源とクロックをワンセットで開発する技術的なメリットのPRを行いました。結果、インテル社から速やかに認めていただき開発に参画することになりました。まさに途中参戦のため、当然スケジュールも非常にタイト。でも『IOHとチップセットで発表できるようやり遂げる』と宣言したからこそ、相手に認めてもらえたのです」

こうして2009年春よりインテル社との連携のもと、ロームグループとして初のシナジービジネスに挑む開発がスタートした。しかもこの開発はローム社内でも極秘のプロジェクトだ。こうして開発者たちの孤独な闘いは静かにスタートした。