3相ブラシレスモーター|基礎編

3相全波ブラシレスモーターの駆動:進角制御

2020.02.12

この記事のポイント

・モーターのトルクは、磁石磁界の位相が巻線磁界の位相に対し90度遅れているときに最大トルクが得られる。

・相誘起電圧と相電流の位相が同じ場合に上記条件になり最大トルクが得られる。

・ただし、相誘起電圧と同じ位相で電圧を印加すると相電流に位相遅れが生じてマイナストルクが発生する。

・相電流の位相を相誘起電圧の位相と合わせるために、相印加電圧の位相を進める方法が進角制御。

前回の「正弦波通電PWM駆動」の説明において、「進角制御」という動作が出てきました。今回は、「進角制御」とはどの様な制御なのかを説明します。

3相全波ブラシレスモーターの駆動:進角制御

モーターのトルクは、磁石(ロータ)磁界の位相がコイル(巻線)磁界の位相に対し90度遅れているときに最大トルクが得られます。相誘起電圧は磁石(ロータ)磁界に対して90度位相が進み、相電流はコイル磁界と同位相であることから、相誘起電圧と相電流の位相が同じ場合にこの条件、つまり最大トルクが得られることになります。

しかしながら、下図が示すように、相電流(黄)が相誘起電圧(青)と同じ位相になることを期待して相誘起電圧と同じ位相で電圧を印加(赤)すると、巻線のインダクタンス成分により相電流(黄)は位相遅れが(赤色矢印)生じます。相のトルクは相誘起電圧と相電流を掛け合わせた値になりますが、掛け合わせた値が負になる部分(下図左側波形、灰色の帯で示した期間)が生じ、この期間はマイナスのトルクになってしまい効率が低下します。

3相全波ブラシレスモーターのセンサ付、180度(正弦波)通電PWM駆動における進角制御

これを改善し効率を向上させるために、相印加電圧の位相を進めることで相電流の位相を進め、相誘起電圧と相電流の位相を合わせる(上図右側、緑色矢印)ことで、マイナストルク期間を排除する補正方法があります。これが進角制御で、この相印加電圧の位相進み角度を進角値と呼びます。

進角値は、モーターの特性、回転数、負荷トルク(電流値)により最適値が様々に変化するので、使用状態に応じて適正な値に設定する必要があります。モータードライバーによる主な進角制御方法としては以下があります。

  • ・固定
  • ・相電流の位相を検出し、ロータ位置信号の位相と比較し合わせる
  • ・回転数に応じて変化
  • ・トルク指令値に応じて変化

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3相全波ブラシレスDCモータは、ブラシがないため低ノイズで長寿命がメリットです。このハンドブックでは、3相全波ブラシレスDCモータの基礎として、構造、動作原理、位置検出、駆動方法などを解説しています。

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