3相ブラシレスモーター|基礎編

3相全波ブラシレスモーターの駆動:センサ付、正弦波通電PWM駆動

2020.01.14

この記事のポイント

・正弦波通電駆動は各相が120度ずれながら、正弦波で駆動する。

・正弦波駆動は120度通電駆動のようにスパイクノイズが出ないため騒音面に優れる。

・PWM駆動により高効率である。

前回の「120度通電リニア電流駆動」に続いて、今回は「正弦波通電PWM駆動」について説明します。

前回も説明したように、3相全波ブラシレスモーターの通電方式は、120度通電駆動と正弦波通電駆動があります。正弦波通電駆動は120度通電駆動に対して制御精度や効率、騒音の面で優れていますが、システムが複雑になるのとコスト面では矩形波駆動が優位になります。

3相全波ブラシレスモーターの駆動:
センサ付、正弦波通電PWM駆動回路例

正弦波通電駆動は、ハイサイドとローサイドスイッチで構成されるドライバーが3相分用意された制御およびドライブ回路で駆動します。以下に、センサ付、正弦波通電PWM駆動の回路ブロックと各入出力波形図の例を示します。

基本動作は、ホールアンプの入力に3つのホールセンサからの信号が入力され、波形合成を経た信号はコンパレータと三角波によってPWM化され、出力段MOSFETによりモーターのコイルを駆動します。A1、A2、A3のPWM信号の等価電圧は120度位相がずれた正弦波通電波形です。120度通電は120度オンして60度オフという矩形波による通電方法ですが、正弦波通電駆動は180度通電であり、ゼロから最大値を正弦波で通電するので、なめらかな動作になり低騒音の動作が得られます。また、PWMは効率向上に寄与します。

3相全波ブラシレスモーターのセンサ付、180度(正弦波)通電PWM駆動回路例。

3相全波ブラシレスモーターの駆動:
センサ付、正弦波通電PWM駆動波形例

各波形の例を使って詳細を説明しますが、最初に正弦波のPWM変換について説明しておきます。

3相全波ブラシレスモーターのセンサ付、180度(正弦波)通電PWM駆動のPWM変換。

先に示したブロック図のH1P/H1N入力のチャンネルを例にします。ホールアンプの出力H1は波形合成回路によって、図では紫色で示された正弦波M1になります。M1と三角波発振器からの三角波がコンパレータに入力され、比較結果としてのパルス幅を持つ矩形波P1(コンパレータ出力)が出力されます。P1はレベルシフト/同時オン防止回路を通じて出力段MOSFETのゲートを制御して、モーターコイルを駆動するPWM出力になります。このコンパレータと三角波を使うPWM変換は一般的なもので、スイッチングレギュレータのPWM生成など、多くの回路に使われている手法です。

続いて各入出力波形を見ていきます。

ホール素子電圧の入力H1P/H1N~H3P/H3Nは、ホール素子からの信号を差動で受け120度ずつずれたH1~H3の正弦波を出力します(波形図ホール素子電圧波形参照)。

ホール素子電圧は波形合成回路を通じM1~M3となります。このとき各波形は元の位相より30度以上進んだ位相で生成されます(合成波形参照)。これは進角と呼ばれるもので、詳細は別途説明します。

先に説明したように、M1~M3はコンパレータにより三角波と比較されPWM信号に変換されます(コンパレータ波形P1~P3参照)。

モーターコイルの電圧波形にはPWM信号ですが、波形図には等価電圧波形を示してあります。等価的には正弦波で駆動されることがわかります。

3相全波ブラシレスモーターのセンサ付、180度(正弦波)通電PWM駆動各波形図。

コイル電流は、当然ながら正弦波になります。波形合成回路で進角を行うことで、コイル電流波形を常にホール素子電圧(H1~H3)より30度進めています。この一連の制御を進角制御と言います。

120度通電の場合は、コイル電圧波形にコイル電流のオンオフに起因したスパイクノイズが見られましたが、正弦波通電駆動は180度通電のためオンオフがないので、スパイクノイズは発生しません。

次回は進角制御の説明を予定しています。

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