ブラシ付きDCモーター|基礎編

1スイッチ回路駆動、ハーフブリッジ回路駆動

2019.02.12

この記事のポイント

・1スイッチ回路駆動は、回転、空転の2つの状態を1つのスイッチで制御する。

・1スイッチ回路駆動にパワートランジスタをスイッチに使う場合、逆起電圧でトランジスタがダメージを受ける可能性があるので、クランプダイオードを使う必要がある。

・ハーフブリッジは、回転、空転、ブレーキの3状態を制御可能。

・ハーフブリッジはスイッチにMOSFETを使った場合、MOSFETの寄生ダイオードによりブレーキ動作が可能。1スイッチ、ハーフブリッジともにPWM駆動、電流駆動が可能。

今回は、ブラシ付きモーター駆動方法の最後として、「1スイッチ回路」と「ハーフブリッジ回路」による駆動について説明します。どちらも、DC駆動、PWM駆動の両方が可能です。

1スイッチ回路による駆動

ブラシレスモーターの1スイッチ回路による駆動の模式図と電子回路図。

これは、1つのスイッチを使いDC電源の(+)と(-)をモーターに接続する状態と、モーターとDC電源の(+)もしくは(-)との接続を切る2つの状態を作る回路で、1つのスイッチで可能なので1スイッチ回路と呼ばれます。

スイッチをオンするとモーターが極性に従った一方向に回り、オフすると電圧がからなくなるので空転してその後に停止します。スイッチの場所は①のような(-)側でも③のように(+)側でも構いません。スイッチを半導体パワートランジスタ(図ではMOSFET)に置き換えて電子回路にすることもできます。②のように(-)側に入れる場合はNchのMOSFETを使い、④のように(+)側の場合はPchのMOSFETを使います。

パワートランジスタを使う場合には注意点があります。この回路では、オフ直後にモーターのインダクタンスが電流を流し続けようとするので、①ではモーターの(-)側が電源電圧以上に、③ではモーターの(+)側がGND以下に振れます。この電圧は電源電圧の数倍以上になります。このためパワートランジスタを使用する場合には、②と④の回路図にすでに記されているようにパワーダイオードをモーターと並列に接続し、ダイオード順方向電圧で発生電圧を抑制(クランプ)することでトランジスタを保護する必要があります。

このクランプダイオードがある場合、モーターの発電による電流は発電電圧がダイオードの順方向電圧より高い間はこのダイオードを通じて流れるため、回転方向と逆にトルクが働きショートブレーキ動作となりモーターは速やかに停止します。

この回路ではPWM駆動も可能であり、モーター電流を検出して負帰還することで電流駆動も可能になります。

ハーフブリッジ回路による駆動

ブラシレスモーターのハーフブリッジ回路による駆動の模式図と電子回路図。

図のように電源間に2個のスイッチが縦列接続した回路を、4つのスイッチを使ったHブリッジ(フルブリッジ)の半分であることからハーフブリッジ回路と呼びます。また、Hブリッジ1つを1chと数えることから、半分の0.5chと呼ぶこともあります。

①においてSW2を、③ではSW1をオンにするとモーターが極性に従った一定方向に回ります。①において、回転している状態で同時にSW2をオフ、SW1をオンすると、ショートブレーキ動作になりモーターは速やかに停止します。③においてはこの逆で、同時にSW1をオフ、SW2をオンにするとショートブレーキ動作になります。また、①と③ともに回転状態からSW2とSW1をオフすると電圧がかからなくなるので空転して停止します。

先の1スイッチ回路と同様に①と③のスイッチ部分を半導体パワートランジスタに置き換えることができます。回路例ではDC電源の(-)側にはNch MOSFETを、(+)側にはPch MOSFETを使用しています。MOSFETには寄生ダイオードが存在するため、回転状態からQ1とQ2をオフしてもモーターに対して並列接続となるMOSFETの寄生ダイオードが電流を回生するためショートブレーキと同じ動作になります。寄生ダイオードの順方向電圧以下にモーターの発電電圧が下がらない間はこのショートブレーキ状態が続きます。

Hブリッジ回路と同様にハーフブリッジ回路も電源-GND間に2つのスイッチ(トランジスタ)が直列に接続されているので、スイッチ切り替え時に両方のスイッチが同時にオンしない同時オン防止制御がプリドライブ回路には必要になります。同時オンが起こると、電源間にシュートスルーなどと呼ばれる大電流が流れスイッチ(トランジスタ)を破壊する恐れがあります。

また、回転、ブレーキ、空転の3つの出力状態を作るには、2値入力を2個、もしくは3値入力を1個用意する必要があります。2値入力1個であれば、3つの出力状態から2つ選択することになります。

この回路でもPWM駆動が可能であり、モーター電流を検出して負帰還することで電流駆動も可能になります。

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1スイッチ回路駆動、ハーフブリッジ回路駆動

ブラシ付きDCモーターと駆動方法の基礎