ブラシ付きDCモーター|基礎編

BTLアンプ回路によるブラシ付DCモーターの駆動:リニア電圧駆動

2018.10.30

この記事のポイント

・BTLアンプをモーター駆動に応用したブラシ付DCモーターのリニア電圧ドライバ例。

・BTLアンプでのブラシ付DCモーター駆動には、電圧駆動と電流駆動がある。

Hブリッジ回路によるブラシ付DCモーターのドライブ駆動方法についていくつか例示してきましたが、続いて「BTLアンプ回路によるブラシ付DCモーターの駆動方法」を説明します。BTL(Bridged Transformer Less他諸説あり)アンプは、元々ステレオアンプの2つの出力をスピーカーに接続し、一方を正相駆動、もう一方を逆相駆動してモノラルアンプとして使用する方法です。それをモーター駆動に応用した方法が今回説明するものです。BTLアンプでの駆動には、電圧駆動と電流駆動があります。最初に電圧駆動から説明します。

BTLアンプ回路によるブラシ付DCモーターの駆動:リニア電圧駆動

ブラシ付きDCモーターをリニア電圧で駆動するBLTアンプ回路を示します。

BTLアンプ回路によるブラシ付DCモーターのリニア電圧ドライバー例および機能ブロック図

この回路は、2つの入力(IN1、IN2)に印加するDC電圧を制御することでモーターにかかるDC電圧(OUT1、OUT2)を制御し、電流の方向についても制御します。回路例は、入力段アンプとそれにつながる2つの出力段パワーアンプで構成されています。モーターは回路図が示すように2つの出力間に接続します。

動作を説明します。出力M0と入力IN1、IN2からなる入力段アンプは単純な差動アンプです。したがって、M0は以下に示すように、IN1とIN2に印加される電圧の差分をR2/R1で決まるゲイン倍した値にVrefを足した電圧になります。

 VM0=(R2/R1)×(VIN2-VIN1)+Vref

出力段パワーアンプの入力M0(=入力段アンプの出力)と各出力OUT1、OUT2との関係を示します。入力段アンプと同様に差動アンプ構成であることから以下となります。M0をOUT1のアンプは反転入力で受け、OUT2のアンプが非反転入力で受けていることから、入力電圧差の項が異なります。

 VOUT1=(R4/R3)×(Vref-VM0)+VM/2
 VOUT2=(R4/R3)×(VM0-Vref)+VM/2

これらの式に最初のVM0を求める式を代入して整理すると以下のようになります。

 VOUT1=(R4/R3)×(R2/R1)×(VIN1-VIN2)+VM/2
 VOUT2=(R4/R3)×(R2/R1)×(VIN2-VIN1)+VM/2

よって、OUT1とOUT2の電圧差は以下の式となります。

 VOUT1-VOUT2=2×(R4/R3)×(R2/R1)×(VIN1-VIN2)

上の式は、IN1の電圧がIN2の電圧より高い場合には、OUT1よりOUT2が低くなるためOUT1からOUT2に電流が流れ、逆の場合はOUT2からOUT1に電流が流れることを示しています。そして、モーターにかかる電圧はIN1とIN2の電圧差に電圧ゲイン、2×(R4/R3)×(R2/R1)をかけた値になります。これで、正転と逆転の制御ができます。

IN1とIN2を同じ電圧にするとOUT1とOUT2は同じ電圧(=VM/2)になるので、ショートブレーキ状態にすることが可能です。ただし、アンプにオフセットがあると出力電圧差が完全にゼロにならないので、調整が必要な場合があります。

オープン状態は、この回路ではできません。オープン状態を作るには、別途回路を構成する必要があります。

次回は、BTLアンプでのリニア電流駆動を予定しています。

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BTLアンプ回路によるブラシ付DCモーターの駆動:リニア電圧駆動

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