ブラシ付きDCモーター|基礎編

Hブリッジ回路によるブラシ付DCモーターの駆動:出力状態の切り替え

2018.09.25

この記事のポイント

・Hブリッジの4通りの接続状態切り替えは2ビットのロジックで行うことが可能。

・実際のブラシ付きDCモータードライブICには、Hブリッジと制御ロジック回路の他にレベルシフトや同時オン防止機能が含まれるものが多い。

前回は、Hブリッジ回路の原理について説明しました。今回は実際のHブリッジの制御(切り替え)について説明します。

Hブリッジ回路:出力状態の切り替え

モーターの2本の端子に電圧を印加する際の接続の組み合わせは、以下の4通りであることは前回説明しました。

 ①2本の端子をそれぞれどこにも接続しない。
 ②一方の端子にDC電源の(+)を、他方に(-)を接続する。
 ③DC電源を②と逆の極性でモーターに接続する。
 ④2本の端子同士を接続する。

これらの4状態は、2値入力が2つあればその組み合わせで作ることができます。簡単な例としては、ロジック入力端子が2本あれば、22=4通りの組み合わせを得られます。以下はHブリッジ回路を搭載したブラシ付きDCモーターのドライバーの例で、概略的な内部機能ブロックが示されています。

Hブリッジを内蔵するブラシ付きDCモータードライバーの機能ブロック図

Hブリッジの状態を切り替えるためのロジック回路は、IN1とIN2を入力とする破線で囲まれたブロックになります。このロジック回路の真理値表は以下の通りです。

Hブリッジの状態切り替えロジックの真理値表

INの入力ロジックに対するVG状態が示されています。VGはQ1~Q4の各MOSFETのゲート電圧状態と理解してください。例えば、Q1のVGがHであるということは、Hレベルの電圧が印加されていることを示しており、Q1のオンオフを直接示しているわけではない点に留意してください。

このHブリッジは、PchのMOSFET(Q1、Q3)とNchのMOSFETの組み合わせになっています。ハイサイドがPch、ローサイドがNchのペア(Q1とQ2、Q3とQ4)になっており、各ドレインとソースが結線されOUT1(Q1とQ2のペア)とOUT2(Q3とQ4のペア)の出力になります。

ブロック図を見ると気づくと思いますが、PchのQ1とQ3はゲートにアクティブLの記号が付いているので、VGがLでオンになります。Q2とQ4はアクティブHなのでHでオンです。これだけを見るとCMOSインバータロジック回路と同じですが、ゲートはIN1、IN2によって個別に制御されます。

OUTは必要な4つの状態を作るのに対応しています。OPENは全MOSFETがオフでハイインピーダンス状態の意味です。LはMOSFETを通じてGNDに接続、Hは同様にモーター電源VMに接続を意味しています。

なお、機能ブロックに示されているレベルシフトと同時オン防止機能は、Hブリッジの制御ロジックには直接関係ありませんがハードウェア制御のために必要な機能の例です。

レベルシフトは、低電圧ロジック回路の出力電圧を高電圧MOSFETのドライブに適応するように変換する回路です。ロジック回路部は一般的な3.3Vや2.5Vのロジックレベルで動作するように設計されていますが、Hブリッジ部はモーターのドライブ電圧である5V、12V、24Vなどの高い電圧で動作しているため、低電圧ロジックの出力レベルそのままではドライブできないことからレベルシフト回路を必要とします。

同時オン防止は、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタのオンオフ切り替わり時に、両方のトランジスタのオン状態がオーバーラップする瞬間があり得るので、それを防止する機能です。これは、ロジックにおける切り替わり時の微妙なタイミングに起因する現象です。よく言われるのは同期整流スイッチング電源の例でシュートスルーなどと呼ばれ、オンのオーバーラップの瞬間に電源からGNDに貫通電流が流れ、スイッチングトランジスタやICが破壊に至る危険性がある現象です。

少々余談を含みましたが、Hブリッジによる4状態を得るために2ビットのロジック入力を利用するということがポイントになります。

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Hブリッジ回路によるブラシ付DCモーターの駆動:出力状態の切り替え

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