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13.56MHz(NFC)ワイヤレス給電のアドバンテージとは Part 3

アドバンテージは電子ペンに搭載できる
小型アンテナと通信機能

注目ワード
  • コネクタによる給電の制限や課題
  • 電子ペンをコネクタより細くすることができない
  • 防塵対策としてペンキャップが必要
  • コネクタの接触不良
  • 13.56MHzの給電方式を採用
  • NFC
  • 主な部品はアンテナと整流ダイオード
  • インダクタンスが小さければコイルは小さくなる
  • アンテナと必要な回路基板を電子ペンの中に収めることが可能
  • NFC通信
  • 256バイトのデータ送受信が可能
  • NFC Forum Type3 Tag

-それでは、このチップセットが、「既存のワイヤレス充電ソリューションでは電子ペンなどに内蔵するのが困難」と言う課題に対して、どういったソリューションなのかを説明していただけますか。

わかりました。電子ペンなどの小型受電デバイスには、従来のワイヤレス充電ソリューションはサイズ的に内蔵できないのはイメージできると思います。そのため、MicroUSBなどのコネクタを接続して充電する有線充電の方法を採っています。しかし、コネクタによる給電の場合、電子ペンの例ではいくつかの制限や課題があります。1つ目はUSBコネクタによる給電では電子ペンをコネクタより細くすることができません。また、電子ペンのコネクタ部の防塵対策としてペンキャップが必要になります。そして、これは他の機器で誰もが経験したことがあると思いますが、コネクタの接触不良です。

電子ペンにおけるUSBコネクタ給電の制限と課題

-確かにあります。日々充電するタブレットでだんだんグラつきが出て接触が悪くなったことがありますし、蓋をしないのが悪いのかもしれませんが、メス側にゴミが溜まっていることもめずらしくはないと思います。また、ペンのサイズと言うか太さがコネクタサイズ以上と言う制限がついてしまうのは、ペンの持った感じや書きやすさはもちろん、デザイン面にも影響しますよね。

そういった意味で、ワイヤレス充電が有望なのですが、既存ソリューションは大きすぎて電子ペンなどには搭載できないと言うジレンマを抱えているのが現状です。そこで、ワイヤレス給電用LSIのML7631とML7630の開発においては、電子ペンなどの非常に小型の受電機器にも搭載できるよう、アンテナを含めた回路規模をできるだけ小型にするため、13.56MHzの給電方式を採用しました。また、13.56MHzと言うのはNFCが使う周波数帯でもあるので、データ通信、NFC Tag通信と言う付加価値機能を搭載しました。

ラピスセミコンダクタ ワイヤレス給電(ML7631とML7630)のアドバンテージ。極小アンテナと通信機能の付加価値

-では、順に詳細を教えてください。アンテナを含めた回路規模の小型化からお願いします。

受信用のML7630は、先にお話したようにパッケージは2.59mm角で高さは0.48mmです。受電回路としての主な部品はアンテナと整流ダイオードで、充電のための周辺部品は充電IC、バッテリ、必要に応じてマイコンの他コンデンサと抵抗が合わせて10個ほどです。従来の受電回路ではアンテナ、と言うよりコイルの面積がかなりあり、それをそのまま電子ペンに搭載することができませんでした。

-どのくらいの大きさなのですか?

この図はQi用の送電および受電コイルと、13.56MHzワイヤレス給電のアンテナの比較です。コイルとアンテナは原理的には同じで、13.56MHz用をデータ通信を含めた意味でアンテナとしています。

Qi規格送電、受電コイルとラピスセミコンダクタ ワイヤレス給電(ML7631とML7630)のアンテナのサイズ比較

-なぜ、こんなに違うのですか?サイズが1桁違いますが。

電力伝送にはコイルの共振が必要です。これはトランスの原理と同じで、共振周波数f0になります。図に示されているように各f0は、Qiの場合は200kHzで、13.56MHzワイヤレス給電は文字通り13.56MHzです。式から読み取れるように、容量Cが変わらないとすれば、f0の周波数が高いほどインダクタンスLは小さい値になります。上記の例では、Qiが20µHを要し、13.56MHzワイヤレス給電はわずか1µHで済みます。「コイルの配線長が同じなら、断面積が大きいほど、巻数が多いほどインダクタンスが大きくなる」と言うコイルの基礎的な性質がありますが、これに当てはめて逆を考えると、インダクタンスが小さければコイルは小さくなります。実際には他の要素も含めての検討になりますが、原理的にはこう言うことです。

-スイッチング方式の電力変換で、スイッチング周波数を高めるとコイルのインダクタンスを小さくでき、それにともなって物理サイズも小さくできると言う話を聞くことがありますが、原理は同じですね。

そうです。この13.56MHzと言う周波数を使うことで、非常に小型のアンテナを使うことができ、受電側のアンテナと必要な回路基板を電子ペンの中に収めることが可能になります。もちろん送電側も小さくて済みますので、コンパクトなペン立てに収めるなり、タブレットの中に組み入れるにしても、非常に省スペースなソリューションだと考えています。

-Qiとの比較例で、13.56MHzワイヤレス給電ではアンテナが非常に小さくて済むことがわかりました。では、付加価値として搭載したとおっしゃっていたデータ通信機能とNFC Tag通信機能についてお願いします。

通信機能については、充電用の電力伝送からちょっと離れて、単純に13.56MHzのNFC通信をイメージしていただければよいかと思います。逆に言えばワイヤレス給電はこの電波を電力に変換していると考えるほうが、コイルをアンテナとしていることも含めてわかりやすいかと思います。

この図が示すイメージで、ML7631とML7630のチップセットは256バイトのデータ送受信が可能です。実効レートは20~50kbps程です。

ラピスセミコンダクタ ワイヤレス給電(ML7631とML7630)のデータ通信機能

-この送受信機能を使ってどんなことができるのですか?

想定しているのは、電力供給があるので電池切れを心配せずにファームウエアのダウンロードを行ったり、バイタル情報などのセンサデータのセキュア転送、バッテリ出力電圧値の転送、個人認証情報、ペン固有情報、製造情報などのデバイス固有の情報のセキュア書き換え、などです。

-NFC Tag通信機能はどんなことに使えますか?

受電側LSIのML7630は、NFC Forum Type3 Tag機能搭載しているので、NCF搭載のスマートフォンとのBluetoothペアリング、Webサイトジャンプ、アプリケーション指定起動、デバイス固有情報のセキュア読み出しが可能です。

ラピスセミコンダクタ ワイヤレス給電(ML7631とML7630)のNFC Forum Type3 Tag通信機能

-ワイヤレス給電だけではなく、電子ペンなどの小型機器にインテリジェンスを持たせることが可能になるのですね。

そうですね。お話した例だけではなく、これらの通信機能によって他にも展開可能なことがあると思います。

これで概要についてはほぼ説明させていただいたので、この13.56MHzワイヤレス給電を電子ペンに実装した例をご覧いただこうと思います。

-実装例があるのですね。ぜひ、お願いします。

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