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IoTにはLPWAが1つの解になる Part 5

LPWAについて考える
-通信距離の実力は
スペクトル拡散方式の違いに
その2

注目ワード
  • LPWA
  • IEEE 802.15.4k
  • LoRaWAN
  • SIGFOX
  • 長距離化手法
  • 妨害波や反射波に対する耐性
  • DSSS
  • CSS
  • UNB
  • 同一システム波
  • 他システム波
  • 自波干渉
  • 反射波
  • 電波のスペクトル
  • ARIB STD-T108
  • マルチパス

-それでは、干渉に関してもう少し詳しくお話しいただけるということでしたので、お願いできますか。

干渉を起こす妨害波は大きく分けて、同一システム波、他システム波、自波干渉の3種類になります。

同一システム波は、文字通り同じシステムが発する電波による干渉です。

他システム波は、他のシステムの電波による干渉です。920MHz帯は用途が限定されていません。例えばWi-SUNは、スマートメータのAルート、Bルート、そしてHEMSなどにも使用されるので、他のシステムの電波が干渉することは大いにありえます。

自波干渉反射波とも呼ばれ、発信源が同じ電波が地面や建物に反射し、時間差をともなって複数受信されるマルチパスよって起こる干渉です。

最初に、同一システム波と他システム波が、IEEE 802.15.4k(DSSS)、LoRaWAN(CSS)、Sigfox(UNB)に干渉した際にどうなるかを説明して行きます。まずはこの図を見てください。これは、それぞれの電波のスペクトルをイメージしたものです。ご存知の通り電波は目に見えませんし、もちろん色味もありませんので、これはあくまでもイメージだとご理解ください。

-わかりました。想像を働かせてみます。

IEEE 802.15.4k(DSSS)、LoRaWAN(CSS)、Sigfox(UNB)の任意時間スペクトルと積分時間スペクトル。

この図の縦軸は時間で、横軸は周波数です。横軸の間隔(破線)は200kHzです。200kHz/CHと記されているのは、電波法ARIB STD-T108に基づく単位チャネル1chの帯域幅を意味しています。LoRa(CSS)とSigfox(UNB)にある一点鎖線は、それらが実際に使用している帯域幅を示しています。

IEEE 802.15.4k(DSSS)は、信号自体が拡散されノイズ化した電波で、2ch分(400kHz)を使います。実際に色はありませんが、拡散によって色味があるようなイメージをしてください。

LoRa(CSS)は、キャリア周波数の変化による拡散ですので、信号周波数が少しずつ移動していることをイメージしています。1ch(200kHz)を使用しますが、実際に使うのは125kHzです。

Sigfox(UNB)は、時間軸に対して周波数の変化がない電波です。こちらも1ch(200kHz)の使用ですが、実際の帯域幅は200Hzでチャネル幅の1/1000しか使用していません。

-それが何かに関係するのですか?

実際に使用している帯域幅に関しては後ほど補足します。とりあえずここでは、IEEE 802.15.4k(DSSS)は使っているチャネルの帯域をフルに利用しているのに対して、LoRa(CSS)とSigfox(UNB)は全部を使っていないことを覚えておいてください。

-わかりました。続けてください。

下段にある「積分時間スペクトル」というのは、上段のイメージの断面と理解してください。IEEE 802.15.4k(DSSS)とSigfox(UNB)は周波数が変化しない、つまり左右に変動しないので断面は上段のイメージと同様です。LoRa(CSS)の断面が台形なのは周波数の変化によるもので、台形の幅は周波数の変動幅を示しています。IEEE 802.15.4k(DSSS)の色のグラデーションは信号拡散のイメージです。他の2つには色味はありません。

これらのイメージを頭に浮かべながら次の図を見てください。先の図を簡素化したもので、横軸が周波数、縦軸という概念は同じです。

IEEE 802.15.4k(DSSS)、LoRaWAN(CSS)、Sigfox(UNB)の同一システム波および他システム波による干渉に対する耐性を示す模式図。IEEE 802.15.4k(DSSS)は直接拡散により耐性が高く復元可能である。

中段と下段は、それぞれの信号(電波)に3つの妨害波のうち、同一システム波と他システム波(妨害波)の2つが干渉した場合のイメージになっています。

中段の同一システム干渉は、それぞれに同じ電波が干渉するので、IEEE 802.15.4k(DSSS)の場合は色味の違う、つまり拡散の違うノイズが重なりますが、元の色がわかるので逆拡散によって復元可能です。LoRa(CSS)の場合は、図のように同色、つまり同じ電波がぐちゃぐちゃに重なってしまうので復元ができなくなってしまいます。そして、Sigfox(UNB)の場合も同様で、ほぼ重なってしまうので復元はできません。

下段は、同じ920MHz帯を使うWi-SUN(帯域幅400kHz)の電波を他システムからの妨害波とした例です。IEEE 802.15.4k(DSSS)の場合は色味の違いから判別可能で復元可能です。LoRa(CSS)とSigfox(UNB)はすっぽり覆われてしまい、色味の違いがないので判別不能となり復元はできません。

結果として、EEE 802.15.4k(DSSS)の信号自体を拡散してノイズ化する方法は、他の2つとの比較において妨害波に対して耐性が高いことが理解できると思います。

-つまり、元の信号の直接拡散するDSSSは色味を持っているので混じっても判別できるというイメージですね。それでは、3つ目の自波干渉について説明をお願いします。

自波干渉は、マルチパスと呼ばれる1箇所から送信された電波がいろいろな方向から到達することで起こる障害です。下の図が示すように、受信においては直接到達する電波の他に、地面や床、建物や壁に反射した電波も受信することになります。

マルチパスによる自波干渉/反射波妨害を示す模式図。

反射した電波は、直接受信された電波より若干の遅れをもって到達するので、少しずつずれた電波を複数受信することで障害が起こります。この図は、マルチパスによる自波干渉をイメージしたものです。

マルチパスによる自波干渉/反射波妨害に対する、IEEE 802.15.4k(DSSS)、LoRaWAN(CSS)、Sigfox(UNB)の各耐性のイメージ。IEEE 802.15.4k(DSSS)は直接拡散により耐性が高く復元可能である。

I HAVE A PENという信号を送った場合、IEEE 802.15.4k(DSSS)の信号は色味を持つので、I HAVE A PENが時差をもって複数受信されてもなんとなく判別できると思います。対して、LoRa(CSS)とSigfox(UNB)では、色味がないので同色の文字が重なってしまうので判別ができなくなってしまいます。もちろん実際に文字そのものが送信されるわけではないですが、マルチパスによる自波干渉がイメージできるのと、IEEE 802.15.4k(DSSS)は自波干渉に対しても耐性が高いのがわかると思います。

-確かに、DSSSの方はなんとなくI HAVE A PENが読めますね。もちろん、実際にはこういうことではないのはわかります。でも、イメージとしてはわかりやすかったです。

-それでは、先ほど少し話に出た単位チャネルの帯域幅と実際に使う帯域幅について説明いただけますか。

(続く)

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