エンジニアに直接聞く
IoTにはLPWAが1つの解になるLPWAについて考える-通信距離の実力はスペクトル拡散方式の違いに その1
2018.10.30
-それでは、長距離化手法に関する回路方式について説明をお願いします。
わかりました。最初に申し上げますが、回路方式と言っても事細かに回路を説明したいのではなく、ここで理解してほしいことは、長距離化手法としてDSSSを採用しているIEEE802.15.4kと、同じスペクトル拡散でもCSSを採用しているLoRaWANの回路方式の違いと、その違いによって妨害波や反射波に対する耐性に差があることです。少々複雑なブロック図や説明がでてきますが、このポイントに関するイメージができればよいかと思います。
最初にこの図を見て下さい。これは、あくまでも模式図ですがデータを送信する際の変調をイメージしています。CSSはモジュレータ(周波数変換器)においてノイズを注入(拡散)します。搬送波の振幅が一定で連続的に周波数が変化する名称の由来でもあるチャープ信号を使って、デジタルデータ(1/0)を伝送します。対してDSSSはデータそのものにノイズを注入した後に変調を行い送信して、受信時に逆拡散して復元します。そのため、妨害波は逆拡散において逆にノイズになるため、本来の信号は妨害波の干渉を非常に受けにくくなります。干渉や妨害については後でもう少し詳しく説明しますので、ここではDSSSとCSSの違いがイメージできればよいかと思います。
-おおよそですが、イメージができてきました。ということは、回路構成も違ってくるということですね。
違ってきます。ここにDSSSとCSSの機能ブロックの例があります。それぞれの赤枠部と青枠部は、先の模式図の色部分と同じ部分であることを示しています。
注:DSSSのブロック図はIEEE802.15.4kに基づく。CSSのブロック図はRoLaの機能ブロックではなく、CSSに関するIEEE802.15.4ベースの近似ブロック図。
DSSSには、赤枠で囲んだGold Code Generatorとモジュレータのセクションがあります。ここでGold Code、またはGoldシーケンスと呼ばれる疑似ランダムノイズによって直接データの拡散が行われ、BPSK/O-QPSK変調を経て最終的な変調が行われ送信されます。Gold CodeはCDMAやGPSにも使用されており、コード間の相関性が低いため同じ周波数を複数のデバイスで使用できるなど、干渉に強いことが特長です。
CSSは、先ほど説明したようにデータを直接拡散する機能ブロックはなく、データはCSK Generator(赤枠)により拡散された搬送波によってDQCSKモジュレータ(青枠)で最終的な変調が行われ送信されます。チャープ信号によるCSSは、Gold Codeによりデータ自体が拡散されるDSSSに比べて堅牢さは劣ります。
-ポイントをまとめてもらえますか?
ポイントとしては、DSSSとCSSはどちらもスペクトル拡散の一種ではありますが、方式と回路が異なること、そしてDSSSで使用される拡散符号Gold Codeは干渉に強いものであることです。端的に言えば、IEEE802.15.4kとLoRaWANを比較すると、仕様上の見通し通信距離や受信感度は同じでも、妨害波などの干渉に対してはIEEE802.15.4kのほうが優れているということです。今回は、これを機能ブロック図をともなって説明させてもらいました。
-つまり、実使用での条件によって通信距離が違ってくる可能性の根拠の1つがDSSSだということですね。それでは、先ほど干渉についてもう少し詳しくお話しいただけるということでしたので、お願いできますか。
わかりました。
(続く)
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