EnOcean|基礎編

ERP2のサブテレグラムタイミング

2018.11.13

この記事のポイント

・ERP2ではテレグラム間の衝突を避けるため、最大で3回のサブテレグラムを送信する。

・送信、受信ともに決められた満期時間(Maturity Time)で送信、受信を行う。

・送信(TX Maturity time)は25ms以内に最大3回のサブテレグラムを送信し、2回目、3回目の送信は決められた時間枠内のランダムなタイミングで行う。

・受信(RX Maturity time)は100ms以内で、期間内に受信した同じサブテレグラムは1つのテレグラムとみなされる。

前回は、ERP2のフレームとサブフレームについて説明しました。今回はサブテレグラムのタイミングについて解説します。

ERP2のサブテレグラムタイミング

EnOcean通信では、ACKなしの片方向通信が標準となっているので、無線信号同士の衝突による受信の失敗を回避し受信成功確率を向上させる衝突回避スキームとして、サブテレグラムのタイミング管理が用意されています。

同一のサブテレグラムを決められた時間内に最大で3回(モジュールによっては2回。以降3回を例に説明)送信する仕組みで、受信機側はそのうち1つの受信が成功すれば通信は成功したとみなします。

3回のサブテレグラムは、個々のデバイスが持つIDに応じてランダムに生成される固有の時間間隔で送信される仕組みになっていますが、送信(TX)と受信(RX)のそれぞれに送信/受信を完了しなければならない満期時間(Maturity time)が仕様で決められています。送信満期期間(TX maturity time)は25msで、3回のサブテレグラム送信は25ms以内で行われます。これは日本の電波法ARIB-T108に従っています。また、受信(RX maturity time)は100msとなっており、同様にこの時間を超えることはできません。

ERP2サブテレグラムタイミング管理。受信、送信のMaturity time。

また、全3回のサブテレグラム送信のすべてが衝突してしまわないように、2回目と3回目のサブテレグラムの送信タイミングはランダムになるように設定されています。ただし、サブテレグラムを送信することができるタイミングには時間枠の規定があります。2回目は4~12ms、3回目は14~22msの間のランダムなタイミングで送信することになります。

ERP2サブテレグラムタイミング管理。受信、送信のMaturity timeと送信時間枠の関係。

なお、受信において100msのRX maturity time以内に複数の同じサブテレグラムが受信された場合は同一のテレグラムとみなされますが、RX maturity time超えた場合は、同じサブテレグラムでも別のテレグラムとみなされます。

このように、2回目、3回目のサブテレグラムの送信タイミングは各デバイスが持つ固有ID(32bit)から生成されランダムではありますが、3回の送信すべてが衝突してしまう可能性はゼロではありません。したがって、複数のデバイスが同時に送信する可能性があるアプリケーションでは、システム設置時に検証が必要です。

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