Sub-GHz無線|基礎編

無線設計のポイント:回路設計

2018.01.16

この記事のポイント

・無線通信LSIを使った設計はLSIの集積度が高いため、アンテナ、水晶他わずかなLCR部品で構成できる。

・回路設計は基本的にそのLSIの水晶回路に従う。

前章の「無線設計ガイダンス」では、無線設計の経験があまりない、もしくは初めてという人が無線設計を始めるという設定で、無線通信モジュールを使ってシステムを構築する手順やポイントを説明しました。ここからは、基本的に無線通信LSIを使っての設計に関して、「回路設計」、「基板(PCB)設計」、「調整、測定」に関するポイントの説明を予定しています。今回は「回路設計」のポイントについてです。

無線設計のポイント:回路設計

近年の無線通信LSIは非常に集積度が高く、わずかな外付け部品だけで回路を構築可能です。このブロック図と回路例は、ラピスセミコンダクタのML7345という消費電力対応Sub-GHz(160~960MHz帯)RFトランシーバLSIのものです。

ML7345:ラピスセミコンダクタ製Sub-GHz無線通信LSI
ML7345:ラピスセミコンダクタ製Sub-GHz無線通信LSIの内部機能ブロック図

ML7345は、RF部、IF部、MODEM部、HOSTインタフェース部が1チップに集積されており、外付け部品は、アンテナ、水晶という無線回路らしい部品の他は、基本のコンデンサ、抵抗、インダクタ(コイル)だけです。

しかしながら、回路設計においては、いくつかの検討事項や注意点があります。(このLSI固有のという意味ではなく、Sub-GHz無線設計、もしくは無線設計全般においてのものととらえてください。)

基本の回路は推奨(リファレンス)回路に従う
提示されている部品や接続などは、十分な検討が行われています。実機においては調整が必要ですが、基本的にデータシートや設計マニュアルにある回路に従います。

アンテナも推奨回路に従う
パターンアンテナもチップアンテナもλ/4の構成が基本です。推奨回路通りのGND量の寸法指示などを守らないと、データシート通りの特性にはなりません。

マスタークロックは通信規格仕様と開発機器の温度仕様に合わせて選択する
マスタークロックを発生させる水晶、発振器、TCXOは、通信規格に合致することはもちろんですが、機器の温度仕様において必要な精度を維持するものを選択する必要があります。

RFのSAWフィルタの要/不要は環境により異なる
条件によって必要かどうかは異なるので、迷ったら後にSAWフィルタを搭載できるよう、回路、基板(PCB)、スペースなどを考慮しておくことを推奨します。

無線部回路のインダクタ(コイル)やコンデンサは極力偏差が少ないものを使う
必要な定数に対する初期精度、温度変化、経時変化など、変動の少ない部品を選ぶ必要があります。

インダクタ(コイル)は積層型より巻線型を推奨
積層型だと損失が発生するためです。

設計をする際には、これらを念頭において進めることを強くお勧めします。

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