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Sub-GHz無線開発の基礎知識

無線特性の用語:まとめ

5回にわたって「無線特性の用語」について、特に重要なものをピックアップして説明してきました。他にも用語はあるのですが、スタートラインでチェックしておく用語は基本的に押さえたと思います。念のため、今回は予定を変更して、今まで説明した用語のまとめにしたいと思います。詳細や図での確認は、各記事を利用してください。

今後、ここにはない用語が出てくることがあると思いますが、その際は必ずその用語の意味を調べて理解することが重要です。無線にかかわらず、用語の意味がわからないまま先に進むことはできません。

無線特性用語のまとめ

搬送波周波数(Carrier frequency)
搬送波の周波数です。搬送波は変調されることで情報を含んだ電波として送信に利用されるものです。搬送波周波数のことを、チャネルがあるアプリケーションなどではチャネル周波数、他にもセンター周波数、送信周波数などと呼ぶことがあります。
周波数精度(Frequency accuracy)
周波数精度は、通常は公称周波数の誤差範囲/許容差のことをいいますが、所望する周波数に対する実際の周波数との差をもって「精度(誤差)はxx%」ということもあります。単位には、一般にppm(百万分率)が使われます。単純な例では、100MHzのクロックの精度が最大±10ppmであるとするなら、得られる周波数は100MHz±1kHの範囲の周波数になります。また、逆に公称周波数が100MHzで、実際の周波数が100,000,900Hzだったとすれば、精度(誤差)は+9ppmということになります。特に、搬送波周波数の精度は、変調と復調に使う搬送波周波数の精度/誤差になるので重要です。
送信パワー(Tx Power)
送信機が空中線(アンテナ)に供給する電波の強さです。単位はmWまたはdBmです。「送信電力」という言葉も使われますが同じ意味です。送信パワーは、全帯域総和電力で定義される場合と、決められた帯域幅(チャネル帯域)で定義されて場合があるので確認が必要です。
隣接チャネル漏洩電力(ACP:Adjacent Channel leakage Power)
隣に位置するチャネル帯域に放射される/漏れ出す電力を、隣接チャネル漏洩電力と呼びます。ACPはゼロがベストですが、実際はそうはならないので最大値などがデータシートで示されています。単位は絶対値なのでdBmです。隣接チャネルは両隣に存在しますが、ACPは同じ値になることはありません。データシートでは両隣を別々に提示している場合もありますが、普通は、2つのうち大きい方の値のみを記し、どちらの側かは別にして最大のACPが示されていることが多いです。
隣接チャネル漏洩電力比(ACPR/ACLR:Adjacent Channel Leakage Ratio)
ACPが電力の絶対値であるのに対して、相対比で示したものを隣接チャネル漏洩電力比といいます。基準となる信号を変調波にした場合の単位はdBとなり、無変調波とした場合の単位はdBcとなります。隣接チャネル漏洩電力比をACLRと略している場合もありますが、もちろん同じ意味です。
占有帯域幅(Occupied Band Width:OBW)
占有帯域幅は、搬送波の変調で占める周波数の範囲で、占有周波数帯幅や単に帯域幅と呼ぶこともあります。英語では、Occupied Band Widthで、この頭文字をとってOBWと略して呼ばれます。単位はHzです。搬送波に変調をかけると、変調速度に比例して電波の周波数に幅が生じる、つまり広がります。これが不用意に広がると隣接チャネルに干渉するので、占有帯域幅として制限(規制)されます。
スプリアス(Spurious)
スプリアス:Spuriousは、「偽の」、「見せかけの」という意味をもった語で、無線の世界では不要な電波のことをいい、以下の2種類があります。

  • ・不要輻射(Spurious/Spurious Emissions)
    不要輻射は、目的とする帯域外への電波の発射で、そのレベルを無線通信に影響を与えないで低減できるものをいい、高調波(Harmonics:ハーモニクス)を含みます。 送信レベルや受信感度を変えずに、低減できる不要輻射のことをいいます。
  • ・帯域外発射(Out-of-band Emissions)
    帯域外発射は、変調よって生じる目的とする帯域に近接する周波数への電波の発射で、そのレベルを無線通信に影響を与えないで低減できない不要輻射のことにいいます。送信レベルや受信感度を変えなければ低減できない不要発射のことをいいます。許容される放射レベルは周波数帯毎に異なり、各国の規定で定められます。前に出てきた「隣接チャネル漏洩電力」は、帯域外発射の規格の一部です。
受信感度(Receiver Sensitivity/Rx Sensitivity/RF Sensitivity)
受信感度は、受信性能を示す重要なパラメータです。どのくらい弱い電波まで受信できるかという能力を表すもので、決められた誤り条件を満たす最小の入力レベルです。単位は、dBmを使い、受信電力が1mWのときを0dBmとして相対的な電力で表します。誤り条件としては、ビットエラーレート(BER/バー)やパケットエラーレート(PER/パー)が用いられます。当然ながら%値が小さくなると誤る率(エラーレート)が低くなるので、受信感度が高く性能が良いことになります。
選択度(Selectivity)
選択度は、受信感度と並ぶ受信性能を示すパラメータです。受信機が妨害波(不要波)をどの程度分離して、目的の信号(希望波)を受信することができるかという能力です。妨害波レベルを希望波レベルとの比で示すので、単位はdBです。妨害波の定義により、選択度には3つの呼称があります。

  • ‧ 隣接チャネル選択度:隣のチャネル帯域の妨害波
  • ‧ 次隣接チャネル選択度:2つ離れたチャネル帯域の妨害波
  • ‧ 同一チャネル選択度:受信帯域と同じチャネルの妨害波(Co-Channel/コチャネル耐性とも呼ばれる)

隣接チャネルおよび次隣接チャネル選択度は、希望波とチャネル(中心周波数)が異なるので、無線機内のチャネルフィルタの周波数選択性能の恩恵を受けで、希望波より大きな値になります。同一チャネル選択度/Co-Channel耐性は同じチャネルにおいてという定義であるため、妨害波が希望波より大きいレベルだと受信は無理なので、妨害波は希望波より小さな値になります。

ブロッキング(Blocking)
妨害耐性を示すパラメータで、搬送波周波数から離れた周波数(オフセット)上での妨害波(不要波)を除去して、目的の信号(希望波)を受信する能力です。単位はdBです。
スプリアス応答/スプリアスレスポンス(Spurious Response)
受信回路の構成上、スプリアスポイントと呼ばれる目的の信号以外の周波数の信号が受信されてしまいます。そのスプリアスポイントの妨害波を除去して、目的の信号(希望波)を受信する能力です。

  • ・スプリアスポイント
    イメージ周波数とマスター(入力)クロックのn倍の周波数になりますが、イメージ周波数は減衰できないため、一般にスプリアス応答はイメージ周波数に対する妨害耐性を示します。
  • ・イメージ周波数
    原理的に発生するものです。受信では混合器を使い、希望周波数と局部発振器周波数の差が中間周波数になるように変換します。ところが、差分ということでは、局部発振器周波数をまたいで、中間周波数の2倍分離れた周波数との混合結果が、中間周波数と同じ周波数になるため受信されてしまいます。この周波数をイメージ周波数と呼びます。

次回は、設計に関する新章を予定しています。

キーポイント:

・スタートラインでチェックしておく用語をまとめた。

・意味のわからない用語は、必ず意味を調べて理解することが重要。

・無線にかかわらず、用語の意味がわからないまま先に進むことはできない。


無線通信の基礎