Sub-GHz無線|基礎編

無線特性の用語:占有帯域幅

2016.11.15

この記事のポイント

・占有帯域幅とは、Sub-GHz無線では、送信電力の99%が含まれる周波数幅。

・FSKでは変調指数が大きいほど受信機の復調特性が良くなるが、占有帯域幅が拡がり周波数利用効率が悪くなる。

・逆に変調指数が小さいほど占有帯域幅が狭まりまるが、m=0.5を下回ると復調特性が急減に悪化する。

・変調指数0.5のFSKのことを、最も変調指数の小さいFSKという意味で、MSK(Minimum Shift Keying)と呼ぶ。

今回は、「無線特性の用語」の第2回として、「占有帯域幅」について説明をします。引き続きこの章は、ビギナーの基礎として、用語の意味を理解する目的の内容になっています。

占有帯域幅(Occupied Band Width:OBW)

占有帯域幅は、搬送波の変調で占める周波数の範囲で、占有周波数帯幅や単に帯域幅と呼ぶこともあります。英語では、Occupied Band Width になり、この頭文字をとってOBWと略して呼ばれます。OBWという呼称は日本でもよく使うと思います。単位はHzです。

もう少し具体的に説明すると、搬送波に変調をかけると、変調速度に比例して電波の周波数に幅が生じる、つまり広がります。これが不用意に広がると隣接チャネルに干渉するので、占有帯域幅として制限(規制)されます。

占有帯域幅は無線の種類によって異なる場合がありますが、Sub-GHz無線では、空中線電力(送信電力)の99%が含まれる周波数幅と定義されています。以下は占有帯域幅を示すスペクトラムアナライザーの波形例です。

例) 所望の搬送周波数:426MHz
   Fdev: 3kHz、データレート: 9.6kbps

スペアナ画面の情報をみるとわかりますが、99%のOBW として14.3kHzが表示されています。近年のほとんどのスペアナには、OBWを計算してくれる機能が搭載されているので便利です。

条件の「送信電力の99%の周波数帯」というのは、全電力の0.5%~99.5%の範囲の周波数幅で、0.5%のところの周波数が下限、99.5%を上限として、上限周波数と下限周波数の差分がOBWで、全送信電力の前後0.5%を除いた99%分の帯域になります。これは、電波法施行規則によって定義されているものです。

SG_4_f1

FSKの占有帯域幅

FSK 変調の場合、変調偏移(変調の幅)を変えると周波数の振れ幅が変わるので、当然のことながら占有周波数幅も変化します。変化の関係は

  • 周波数偏移が大きいと「深い変調」となり、占有帯域幅は広くなる。
  • 周波数偏移が小さいと「浅い変調」となり、占有帯域幅は狭くなる。

変調偏移または周波数偏移は、ここではFdevとして示しています。上の波形の例では、Fdev=3kHzを記載されています。これは、センターから±3kHzを意味します。以下に2つの例を示します。

例)所望の搬送周波数:426MHz データレート: 9.6kbps

m = 2.0、Fdev = 9.6kHz

SG_4_f20

m = 0.5、Fdev = 2.4kHz

SG_4_f05

「m」は、変調指数または変調度と呼ばれている指数で、Fdev(±の幅)をビットレート(bps)で割ったものです。関係を式で表すと以下になります。

  m=Fdev×2÷ビットレート  変形すると → Fdev=m×ビットレート÷2 

左上の例だと、m=9.6kHz×2÷9.6kbps=2 となり、右上の例では、m=2.4kHz×2÷9.6kbps=0.5 となります。

変形した式からは、ビットレートが同じ場合、変調指数mが大きいと占有帯域幅Fdevが拡がることがわかります。

この関係から知っておくべきことは、FSKでは変調指数mが大きいほど受信機の復調におけるSNが良くなりますが、占有帯域幅が拡がり周波数利用効率が悪くなります。逆に、変調指数が小さいほど占有帯域幅が狭まりますが、特にm=0.5を下回ると復調特性が急減に悪くなります。変調指数m=0.5のFSKのことを、最も変調指数の小さいFSKという意味で、MSK(Minimum Shift Keying)と呼びます。

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