Bluetooth®|基礎編

Bluetooth®v4とは

2016.07.25

この記事のポイント

・Bluetooth v4はBluetoothの低消費電力化バージョンで、v4.1以降はv3以前ととは互換性がない。

・Bluetooth v4はRF回路規模の縮小と、用途を限定したことによる通信スループット制限により低消費電力化を実現した。

Bluetooth® は、Bluetooth、Bluetooth SMART、Bluetooth SMART READYという3つの正式な商標と分類がありましたが、Bluetooth SIGの2016年通達により、Bluetooth一本に統一され、バージョンを識別子と利用することになりました。

今回は、ここでの対象となるBluetooth v4(旧Bluetooth SMART、別称Bluetooth low energy)がどういうものか、他のバージョンのBluetoothとの関係と変遷を含めて説明したいと思います。

Bluetooth v4とは

Bluetooth v4は、ワイヤレスセンサネットワークをメインのアプリケーションとする、ZigBeeやANT等の低消費電力無線に対抗して仕様策定されたもので、端的に言うとBluetoothの低消費電力版です。それゆえに、Bluetooth low energy という呼び名があります。

v3までのBluetoothは、音声や音楽など連続データを扱い、乾電池で駆動することが前提で、条件によっては、あまり低消費とは言えないところがありました。それに対してBluetooth v4.0からは、センシングデータ(温度、脈拍など)など少量データの伝送に用途をしぼり、インターバルを含んで非連続で伝送し、コイン電池での動作が可能になるように低消費化を図ったバージョンです。

使用する帯域は無線LANなどでも利用している2.4GHz(ISM帯)です。これは、バージョンかかわらず同じ周波数です。また、物理層もIEEE802.15.1で同じです。しかしながら、Bluetooth v4.1以降とv3以前には互換性はありません。つまり接続できません。

いずれも、Bluetooth SIGというアライアンスが仕様を策定しています。ちなみにこのメンバーにならなくてもBluetooth通信技術に準拠した商品を製造および販売可能ですが、認証と登録が必要になります。

BT_2_tbl1_2

Bluetoothのバージョン

以下の表は、Bluetoothのスペックシートバージョンと、大まかな仕様です。便宜上、旧呼称との関係も示します。

BT_2_tbl3_2.gif

旧Bluetoothはv3まで、旧Bluetooth SMART READYはすべて、旧Bluetooth SMARTはv4からですが、v4.0は今までのバージョンをすべて含んでおり、旧Bluetooth SMART READYのことを示すことが多いです。

v4.0では低消費電力化のために無線仕様の緩和や用途を少量のデータ伝送に向けました。v4.1ではIoTを視野に入れネットワーク機能が強化され、v4.2ではIoT対応をさらに強め、データ量の関係からアプリケーションが限られるといった課題に対してデータ転送方式の追加、セキュリティの強化が実施されています。

Bluetooth v4の低消費電力化

Bluetooth v4の低消費電力化について、もう少し詳しく説明します。低消費電力化には2つのキーポイントがあります。1つは「無線仕様を緩くしたことによるRF回路規模の縮小」、2つ目は「用途を限定したことによる通信スループット制限」です。下の表を使って説明して行きます。

BT_2_tbl3_2.gif

<無線仕様を緩くしたことによるRF回路規模の縮小>

Bluetoothではバージョンによらず、使用周波数帯域はおおよそ80MHzです。Bluetooth v3以前は79チャネル配置するのに対しBluetooth v.4は40チャネルになり、その分Bluetooth v.4はチャネルあたりの帯域が2MHzと広くなっています。一般的に同じデータレートでは、帯域が広い方が無線機としては回路構成が簡素化でき、低消費電力化に向いています。
 
変調方式がFSK(GFSK)限定であることも、低消費電力化に寄与しています。電力消費は、2.4GHzで動作する回路ブロックが圧倒的です。このため、PAやLNA、VCO+XOの回路ブロックでの消費電力を削減することが重要になり、中でもPAの消費電力は変調方式に大きく依存します。

Bluetooth v3以前のEDR(Enhanced Data Rate)規格では、変調方式にPSKの一種であるQPSKを使っています。PSKでは、変調波形を正確に表現するために、送信ブロックで振幅を忠実に表現する必要があります。そのため、送信ブロックの最終段であるPAには、振幅に対する高いリニアリティが要求され、消費電力が増加する傾向にあります。

それに対しFSKでは、変調波は周波数の偏差で表現されるため、振幅に対するリニアリティは要求されないので消費電力を低減することができます。そのため、アナログ波形を再現しない、スイッチング動作を使用したD級方式のアンプを利用することも可能です。

<用途を限定したことによる通信スループット制限>

バージョンの説明で使った表に戻ってください。この表のデータレートとスループットを比較してみます。Bluetoothの基本データレートは1Mbpsで、歴代のどの規格バージョンにおいても、ペイロード行効率(スループットをデータレートで割ったもの)は約0.7となります。しかし、v4.0に関しては約0.03で、極端に低いことに気づくかと思います。これが、低消費電力化のもう1つのキーポイントになります。

Bluetooth v4が対象とするアプリケーションは、非連続データの伝送であり、最初に述べたように温度や脈拍といったセンサからのデータが例となります。これらのデータは、1回の送受信ペイロードは大きくなく、また、データの特性としては音声の様に連続性がなく、断片的かつ非連続的なデータなので通信も断片的で問題ありません。

体温モニタの例では、1バイト(32~42℃/256諧調、分解能0.1℃)のデータを1分ごとに伝送すれば十分です。この例ではタイムスタンプを含んでも(実際には、体温計プロファイルが実装される)、表に示した最大パケットサイズである27バイト(=octet)以下のペイロードで十分であり、1分に1回という通信インターバルの送受信となります。

この条件での平均消費電力は、ラピスセミコンダクタのBluetooth v4 LSIの例ではわずか1μWほどで、CR1220(35mAh)のような小型のコイン電池でも、4年の連続動作が可能となります。

つまり、センシングデータの伝送に用途を限定したことにより、短いパケット、長い通信インターバルの通信が可能になり、コイン電池で駆動できるまでの低消費電力化が実現したわけです。

これで、Bluetooth v4が低消費電力である理由を理解いただけたかと思います。

※ 本稿は、Bluetooth SIG 2016年通達への対応のため、2016/7/25の掲載後書き換えを行いました。