無線通信|基礎編
電波とは
2016.07.25
この記事のポイント
・電波は電磁波のひとつで、電波法により「300万メガヘルツ以下の周波数の電磁波」と定義されている。
・電波は媒体がない真空でも伝わり、自由空間での速度は1秒間に約30万kmで光と同じで、速度は周波数に依存しない。
・電波は電界と磁界が連鎖反応を起こし、それが継続し受け側に到達する。
「無線通信の基礎」の最初は、「電波」とはどういうものかという話をします。
電波とは
電波は電界と磁界が振動しながら空間を伝播するもので、音や光に似たイメージのものです。ただ、音は空気など振動媒体がないと伝わりませんが、電波は宇宙空間のような真空の空間でも伝わります。伝播速度は光と同じなので、音より速いことになります。
また、電波は電磁波の一つで、電波法第2条の1で、「300万メガヘルツ(3THz)以下の周波数の電磁波」と定義されています。電磁波には電波の他に赤外線やX線も含まれています。以下の表に、周波数帯による電磁波の呼び名をまとめてみました。ただし、区別の境界は曖昧なことを覚えておいてください。また、普段あまり目にしないPHzとかEHzといった単位がありますので、念のために単位の一覧も示します。
ちなみに、「無線通信」と言う表現は、電波による通信のことを言っています。例えば赤外線通信は、電磁波による空間の通信で線は使いませんが、これは赤外線通信と呼び無線通信とは言いません。
そして、この3kHz~3THzの電波の中にも以下のような種類があります。
このTech Web IoTでも別途取り上げている、Sub-GHzと呼ぶ帯域の電波を使う特定小電力無線があります。サブギガHzというのは、1ギガHzに満たない周波数の呼び名で、日本で利用されている周波数は420MHzや920MHzです。これは「極超短波:UHF」と呼ばれる帯域の電波になります。また、2.4Gの無線LANやBluetoothもこのUHFに属します。
電波の基本特性
先にも記しましたが、電波は音のように媒体がなくても伝わります。自由空間(物質のない理想的な空間)での速度は、1秒間に約30万kmで光と同じです。また、電波の速度は周波数に依存しません。
通り道に物質がある場合は、通り抜けたり、反射したり、回折したりします。電波の通りにくい代表的なものは金属、コンクリート(反射)、水(散乱、吸収)になります。どれも、意外に身近なものです。回折とは障害物を回り込んで伝わっていくことですが、電波は波長が短くなるほど光の性質に近づき直線性を増すので、周波数の低い電波の方が回折性が高く、障害物が多い環境では届きやすい性質をもっています。
電波は、振動方向が進行方向と直行する横波です。また、電解と磁界の振動方向も直行します。言葉にするとわかりづらいので、下のイメージを参考にしてください。
電波が伝わる仕組み
電波は、電界と磁界が連鎖反応を起こし、それが続いて受け側に到達します。これも図を使って説明します。左の送信側のアンテナに高周波電流が流れると、周囲に磁界が発生します。これは、「右ネジの法則」に該当します。そして、この磁界の変化を妨げる方向に電界が発生し、その電界の変化を妨げる方向に磁界が発生するといった繰り返しが起こります。その磁界の中にアンテナを置くと交流電圧が発生します。これが受信です。
① 送信:アンテナに高周波電流が流れると、周囲に磁界が発生する。
② 発生した磁界の変化を妨げる方向に電界が発生する。
③ その電界の変化を妨げる方向に磁界が発生する。
④ さらに発生した磁界の変化を妨げる方向に電界が発生し、これを繰り返す。
⑤ 受信:磁界の中にアンテナを置くと交流電圧が生じる。
基本的な用語
特別な用語ではありませんが、この項で使った用語の定義を念のために記しておきます。
<周波数>
電気振動(電磁波や振動電流)などの現象が、単位時間当たりに繰り返される回数です。Hzの場合は1秒に繰り返される時間となり、振動の周期(T)の逆数になります。これは一般に使われる周波数の定義で、電波固有のものではありません。
<波長>
電波の1周期に進行する距離です。電波の周波数をf、真空中の電波の速度をCとすると、電波の波長をλ(ラムダ)は以下の式で表すことができます。
先ほど説明したSub-GHzの代表周波数の波長を計算すると以下のようになります。
・429MHzの波長λ:
λ [m]=3×108 [m/s]÷429×106 [Hz]=0.699 [m]=70 [cm]
・920MHzの波長λ:
λ [m] = 3×108 [m/s]÷920×106 [Hz]=0.326[m]=33 [cm]
<位相>
周期振動において、一周期の中の位置をある起点に対して相対的な位置で示したものです。
周期的な振動や運動をするものが、一周期内のどの時間(位置)にいるかを示す量で、単位はラジアンを用います。これも言葉にするとわかりにくいので、下の図を参照してください。これも電波固有の用語ではなく、オペアンプの「ゲインと位相」などの位相のことです。180°=π(パイ)=反転、となり、360°で1周期です。