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フォトカプラ不要の絶縁型フライバックDC/DCコンバータ Part 1

フォトカプラの
メンテナンスから解放
小型で設計が簡単

注目ワード
  • 絶縁型フライバックコンバータ
  • フォトカプラ
  • トランス
  • 補助巻線
  • 三次巻線
  • 部品点数
  • 回路設計
  • 回路規模
  • フォトカプラの寿命
  • メンテナンスコスト

ロームは、二次側からの出力電圧帰還を利用せずに出力を安定化する、絶縁型フライバックDC/DCコンバータICを開発した。絶縁型フライバックコンバータは、FA機器や産業機器の電源によく使われ、帰還経路の絶縁のためにフォトカプラやトランスの補助巻線を利用する。しかしながら、フォトカプラは他の構成部品に比べて寿命が短いことから、メンテナンスが課題の1つになっている。新製品の「BD7Fシリーズ」はフォトカプラや補助巻線を使用せずに出力の安定化を行い、同時に小型化、設計の簡略化、そして従来のフライバックコンバータでは実現できなかった安定性と過渡応答特性を特徴とする。この「BD7Fシリーズ」の詳細について、ローム株式会社のアプリケーションエンジニアである今村 洋寿氏に聞いた。

-今回発表した「BD7Fシリーズ」ですが、フォトカプラを使用しない絶縁型フライバックコンバータICと聞きました。最初にこの製品のコンセプトを教えてください。

「BD7Fシリーズ」は、従来の絶縁型フライバックコンバータが抱えていた課題を解決することを目的に開発しました。課題はいくつかあるのですが、それを理解いただくために、最初に従来の絶縁型フライバックコンバータの回路構成を説明させてください。

一般的に絶縁型フライバックコンバータは、出力安定化のために二次側の出力電圧を一次側の制御回路に帰還する必要があります。この帰還ループによる出力安定化は、コンバータの方式や絶縁、非絶縁に関係なく、安定化電源では基本的な制御方法です。

絶縁型フライバックコンバータは、入力と制御回路がある一次側と出力の二次側はトランスにより絶縁されていますが、二次側の出力を配線でそのまま一次側に帰還してしまうと、二次側と一次側は導通してしまい絶縁電源として成立しなくなってしまいます。絶縁を維持するは、帰還経路を絶縁する必要があり、一般的に絶縁素子であるフォトカプラや、トランス補助巻線(三次巻線とも呼ぶ)を追加する方法を取ります。

右の回路図は、上がフォトカプラ、下が補助巻線による帰還経路の絶縁を示した模式図です。先ほど説明したように、出力VOUTの電圧がフォトカプラを介して制御ICのFBピンに帰還されます。この回路では、フォトカプラの他に数本の抵抗とコンデンサ、シャントレギュレータ(電圧リファレンス)が必要で、さらにフォトカプラのコレクタ電源も必要になります。この場合、部品点数が増え、回路設計も必要になります。

下の補助巻線を使う例では、まず補助巻線をもったトランスを用意する必要があり、基本的にトランス設計を必要とします。他に、整流用のコンデンサとダイオード、あと抵抗が必要になります。トランスは巻線を1つ増やすわけですから当然大きくなります。

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-確かに、ちょっと設計が面倒な印象ですね。

いずれも、従来方式は追加の部品と回路設計が必要で、回路規模も大きくなるという課題をもっています。

そして、もう一つ非常に大きな課題があります。フォトカプラは他の部品に比べると、寿命が短い部品です。実際に発光ダイオードが発光することもあり、エージングや焼けと呼ばれる経年劣化が生じ機能を果たさなくなります。つまり寿命が尽きてしまいます。ICの場合は、本来の寿命に遭遇することはまずありません。耐用年数を遥に超える寿命をもっているからです。近年のフォトカプラは、この課題の改善を進めていると聞きますが、メーカーや品種によってまちまちの様です。

-具体的にどのくらいの寿命なのですか?

むずかしい質問ですね。使用条件により異なるので一概には言えません。逆に、流す電流や使用温度、稼働率などを加味して、例えば「動作寿命10年」を確保するといった設計がなされていることが多いかも知れません。ただし、この様な考慮がなされている設計ばかりとは限りませんし、フォトカプラ自体の寿命もコストなどとの関係も含めて様々です。

-実際に10年かどうかは別にして、そのくらいの寿命だとすれば、例えば耐用年数が長い産業機器などでは問題になるのは?

それは、重要なポイントです。ICなどに比べて寿命が短いのは明らかなので、少し極端な言い方かも知れませんが、フォトカプラを使った絶縁電源の寿命はフォトカプラの寿命にならざる得ません。

-それは困ると言うか、それでいいのですか?

よくはありません。誰もができるだけ長く稼働していてほしいと考えています。ただ、現状では想定寿命をもとにメンテナンス、つまり保守を行っています。多くは、信頼性のバスタブカーブで言うところの、摩耗故障期に入る前に交換することになります。フォトカプラだけを交換するのは稀だと思います。電源がモジュールやユニットであれば、それごと交換するのだと思います。

-それでBD7Fシリーズは、一番に「フォトカプラ不要」をうたっているのですね。

部品数が減り設計が簡単になることは、コスト面も含めて利点なのですが、何よりも、電源の寿命が延びることで、メンテナンスの間隔をより長く取ることができ、メンテナンスコストの削減が可能になることが大きいと思います。これは、耐用年数が長い産業機器などでは、耐用年数が単に延びることより重要かも知れません。この点を理解いただければ、この製品のメリットがおわかりいただけると思います。

-BD7Fシリーズを使った絶縁型フライバックコンバータの、回路構成はどうなっているのですか?

右の回路図の通りです。最初に見ていただいた従来方式と並べて比較する必要もないと思います。回路としては、FBピンへの帰還はトランスの一次側の巻線から取っており、抵抗が1つ挿入されているだけです。見ての通り二次側からの帰還経路はありませんので、必然的に従来方式では必要であった絶縁のためのフォトカプラや補助巻線は存在しません。

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-回路図だけを見ると、非安定の絶縁電源みたいですが、安定化されていますよね?

もちろんです。

(Part 2に続く)

フォトカプラ不要の絶縁型フライバックDC/DCコンバータ Part 2

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    一次側を制御することで二次側を安定化する手法

    一次側を制御することで二次側を安定化する手法
    -回路図だけを見ると、非安定の絶縁電源みたいですが、安定化されていますよね?もちろんです。BD7Fシリーズが、どうやって出力を安定化するか説明しましょう。この説明には図があるとわかりやすいので、おもちしました。…

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