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スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : インダクタ編各種パワーインダクタの特徴
2016.06.07
-インダクタの基礎的なことに続いて、パワーインダクタと呼ばれるものにはどんな種類があるのか教えてください。
インダクタは種類、構造ともに非常に多様です。その中でパワーインダクタと言えば、巻き線開磁路タイプ、巻き線閉磁路タイプ、積層タイプになるかと思います。これらの特徴を表にまとめてみました。「×」は、「良いとは言えない」程度に捉えてください。また、優劣はこれらの中での相対比較的なイメージです。この中で、開磁路タイプは、DC損失Rdcが大きく昨今の電源用にはあまり使われませんので、閉磁路タイプと積層タイプに絞ってお話しします。
2種類の巻き線閉磁路タイプについて説明します。一つは「ドラムスリーブ構造」で、もう一つは「スリーブレス構造」です。図を使って説明しましょう。
ドラムスリーブ構造は、コアに線を巻いてスリープを付けたタイプで、エアギャップをもっています。コア材料のフェライトは磁束飽和点があります。エアギャップは磁束を漏らして飽和点を高くし、直流重畳特性を調整するために用いられます。
スリーブレス構造は、最近流行りの構造で、コアに線を巻き、閉磁路を作るためにフェライト粉または鉄粉を混ぜた樹脂を周りにコーティングします。ただし、エアギャップは同じ理由で必要になります。この場合、磁性体を取り巻く樹脂がエアギャップの役目をします。
-スリーブレスが流行りというのはなぜですか?
流行りという表現はさておいて、いくつかメリットがあります。名前の通りでスリーブは使いませんので、コアサイズが同じであれば小型化が可能です。もう一つ重要なのは、ドラムスリーブより飽和特性が穏やかなことがあります。ご存じかと思いますが、フェライトの飽和特性は急激です。飽和点を超えると急激にインダクタンスが低下するので、電源設計ではインダクタに関する注意事項にもなっていると思います。ドラムスリーブでは設定したエアギャップによる飽和点は一点で、それを超すとフェライト材料に依存した飽和特性になります。つまり、基本的に急激です。それに対しスリーブレスの場合、樹脂に混ざり合った磁性体(粉)までのギャップが様々な距離になるので飽和点が混在することになり、結果として飽和が穏やかになります。上図の右側のグラフはそれをイメージしています。これは、電源回路では歓迎される特性です。
-スリーブレスは小型で飽和が穏やかということで優勢ですね。
確かにそうなのですが、弱点と言うか、考慮すべき点があります。簡単に言うと、スリーブがなく巻き線を磁性体樹脂でコーティングしているだけなので、外部からのストレスや応力よって割れる可能性があります。これに対して当社の例では、従来の樹脂をより硬度が高い樹脂に変更することで、強度を上げる対策を行っています。
また、樹脂とコアという異なる材料の組み合わせなので、線膨張係数の違いから割れが発生することがあります。これは、樹脂の線膨張係数をなるべくフェライトに合わせることで対処しています。
これらの対策によって、大幅に強度が向上しているのは事実ですが、メーカーによって向上具合に差が出るところだと思います。
-それでは、積層タイプについて説明してください。
実は、積層構造でのパワーインダクタは、昔はあり得ないと言われていました。電流をちょっと流しただけであっという間に飽和し、発熱に関しても課題がありました。また、大きなインダクタンスを得るのも難題でした。
重畳特性の改善のためには、磁束の回り方を制御し磁束が集中しないように構造を工夫したり、エアギャップ構造を作り込むことで対処しました。また、発熱に関しては内部電極を厚くして抵抗値を下げるなど、様々な改善を積み重ね、積層タイプを電源回路で使えるようにした経緯があります。
特徴としては、巻き線構造に比べて小型化が可能です。インダクタンスは数?H程度までなので、メガ帯の発振周波数の高いスイッチング電源に適します。モバイル機器の電源などがアプリケーションの一例になると思います。
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