エンジニアに直接聞く

産業用途グレード降圧DC-DCコンバータ:産業用途では長期供給保証と小口販売は普通の要求

2015.05.12

ロームの降圧DC-DCコンバータICには、産業機器市場の要求に対応するシリーズが用意されている。このシリーズは、厳しい使用条件はもちろん、近年の省電力小型化にも対応し、小ロット生産、長い製品寿命といった産業機器特有の事情も考慮されているという。そのキーポイントについて、ロームのフィールドアプリケーションエンジニアである今村 洋寿(いまむら ようじゅ)氏 に聞いた。

-ロームには「産業用」と位置付けたDC-DCコンバータのシリーズがあるとのことですが、総計数が多くてもまず概要を教えてください。

ここで話をする「産業用」とは、機種名に「LB」というサフィックス、例えば「BD9E100FJ-LB」といったシリーズについてです。他にも動作温度範囲や諸条件が産業機器に対応するICが沢山あるので、誤解のないように最初に申し上げておきます。

現状でのDC-DCコンバータICのLB品は、同期整流降圧型で、パワートランジスタ内蔵タイプが16機種ほど、コントローラ対応が2機種といったラインアップになっています。用途に合わせて、入力電圧範囲、出力電流、スイッチング周波数などが選択できる構成になっています。

-一言で言うと、そのLB品は他のICと何が違うのですか?

性能面では産業機器に要求される厳しい動作条件、環境条件に対応しています。そして、安定的な「長期供給保証」と1巻250個といった「小リール」での販売が可能になっています。

長期供給保証小リール販売をシリーズの仕様に盛り込むといのはあまり聞いたことはありません。
もちろん、特定顧客との取り決めなどではあるのは知っていますが。

確かにそうだと思います。それでは、DC-DCコンバータICの特徴の話の前に、この二つをLB品の仕様に含めた理由をお話しします。

まず長期供給保証ですが、一般に産業機器は10年を超えるような耐用年数が要求されます。また、保守用のボードや部品などもかなり長期にわたって確保される必要があります。そのため、その時点で将来が見通せない最先端のものや、数年で次のバージョンに変更されたり廃品になるような部品は、産業機器に採用されにくいのが一般的です。

-確かに、産業機器の部品選定には保守的な印象があります。

それにはいくつかの理由があるのですが、特に優位点がなくても汎用性が高い部品は需要が継続し、その供給実績が将来に対する供給の継続に繋がるという構図の影響が大きいのではないかと思います。それでも、時にICメーカー側の諸事情により予期しない廃品通知が届き、騒ぎになったというのはよく聞く話です。

02E_graf02

-機器の生産中や保証した保守期間中に必要な部品が供給されなくなると、総計数が多くても具体的にどんなことになるのでしょうか?

一般的にICメーカーの例だと、ライフタイムオーダーといってお客様が将来使用と思われる数量を受注し、その分を責任をもって納入します。ただ、お客様は将来の分を在庫することになり、必要な措置ではありますが好ましくはないはずです。

また、こういった措置を取ることができなかったり、予想が外れ在庫がなくなるといったケースもあり、かなり大変だと聞いています。その際は流通在庫を探すことになるのですが、これには多大な労力と大きなリスクを伴います。

-それで産業機器メーカーは、採用の際に供給期間の保証を要求することが多いのですね。

その通りです。そして、それが、このLB品が長期供給保証をいう仕様を含んでいる理由なのです。産業機器メーカーにとっては、長期供給は必須の要求であり、基本的にその保証を必要としています。もちろん、以前から個別対応はしていましたが、産業用をうたうには長期供給保証を付帯するのは当たり前だと考えました。当然ながら長期だけではなく、安定的な供給も前提です。

-それでは、もう一つのポイントである小リール販売についてはどんな理由があるのでしょうか?

産業機器は、総計数が多くても生産単位が数百いうのは珍しくありません。これに対しICメーカーの販売単位は、少し心苦しいのですが、リールの場合千~数千個単位になってしまいます。これだと数年分、場合によっては必要以上の数量なので買えない=採用したくても採用できないということになってしまいます。こういった状況に対応するため、LB品には1巻250個の小リールを用意しました。

-つまり、小リールによる小口販売も産業機器のお客様の特徴から総計数が多くても利便性を改善した取り組みだということですね。

ご理解いただけてうれしいです。ロームは現在産業分野の市場に力をいれています。産業市場の要求に応える性能を持ったICを提供するのはもちろんなのですが、産業機器市場の特性に対応することも非常に重要だと考えています。

一つ、こちらからいいですか?

-はい。お願いします。

産業用途のLB品の仕様に長期供給保証小リール販売を盛り込んだのは、既存の要求事項に応えるだけではなく、近年、産業機器でも必須の達成事項となっている省力化と小型化のソリューションでもあるのです。

長期供給保証小リール販売が産業機器の省力化と小型化に繋がるというのですか!?

先ほど、産業機器の部品選定は保守的といった印象があると言われましたが、その理由を思い出してみてください。俗に言う「こなれた部品」を選択するのは、継続的な供給や流通が多いので小口でも購入しやすいといった、性能や技術といった理由ではなく、入手性といった本質的ではない要素が大きな制限になっているからです。

つまり、最先端のテクノロジーによる高効率で小型のDC-DCコンバータICに、安定的な長期供給保証小リール販売が伴っていれば、産業機器のお客様は安心してそれらを採用して、省力化と小型化という課題を解決していけるはずです。

-その通りだと思います。つい、ICの機能や性能面だけに気が行ってしまいがちですが、総計数が多くてもこういった利便性、供給や購入条件の対応も非常に重要であることがわかりました。
それでは、LB品のDC-DCコンバータが具体的にどのような特徴や性能を持っているのかお聞きしたいと思います。

※小リール販売は随時対応中です。個別にお問い合わせ願います。

技術資料ダウンロードのご案内

ローム主催セミナーの講義資料やDC-DCコンバータのセレクションガイドなど、ダウンロード資料をご用意いたしました。

エンジニアに直接聞く

この記事の関連資料があります