回路シミュレーション
SPICEデバイスモデル:ダイオードの例 その2
2019.02.26
この記事のポイント
・SPICEモデルの形式には、「デバイスモデル」と「サブサーキットモデル」の2種類がある。
・デバイスモデルのパラメータ値を変更することで特性を調整できる。
・デバイスモデルは理論式に基づくので、シミュレーションは式が表せる範囲の結果になる(実際と異なる場合がある)。
前回の「その1」に続き、ダイオードのSPICEデバイスモデルを例に、デバイスモデルの説明を続けて行きます。
SPICEデバイスモデル:ダイオードデバイスモデルのパラメータ調整
デバイスモデルはパラメータを設定するので、逆に記述されている設定値を書き換えるとそれがシミュレーション結果に反映されるのは容易に想像できると思います。以下に、前出のダイオードデバイスモデルのVFを調整した例を示します。
ダイオードのVFを調整するには、IS(飽和電流)を変更します。IF=IS*exp(Vd/(N*Vt)-1) これは「その1」で示したIFの式ですが、式からISの増減がIFに比例することがわかると思います。グラフは、ISの値を10倍と1/10にした場合のIF-VF特性のシミュレーション結果です。VF=0.7VのIFが10倍と1/10になっています。
パラメータとダイオードの特性の関係の理解には、モデル式とパラメータを理解している必要があります。
SPICEデバイスモデルの制限
デバイスモデルは、基本的にモデルの理論式の特性を示します。したがって、理論式では表しきれない特性はシミュレーション結果に反映されません。シミュレーション結果はこの点を念頭において解釈する必要があります。
このグラフは、先ほどのとは別のダイオードのIF-VF特性です。左はデータシートに掲載されている実際のダイオードの代表特性で、右はこのダイオードのデバイスモデルによるシミュレーション結果です。
IF-VF特性の直線性を比較すると、シミュレーション結果は理論式に基づいた結果であることがイメージできると思います。
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