回路シミュレーション
SPICEとは
2018.06.11
この記事のポイント
・SPICEベースの代表的なシミュレーションソフトウェアを知っておく。
・以後の基礎的な説明の理解のために、まずシミュレータの動作の仕組みの概要を知っておく。
SPICEとは?
SPICEは電子電気回路のシミュレータの1つで、米国カリフォルニア大学バークレイ校(University of California, Berkeley)で1973年に開発されました。SPICE(スパイス)は、Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis(集積回路用シミュレーションプログラム)の頭文字を取った造語です。当時は、オペアンプなどのIC、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサなどによるアナログ回路動作のシミュレーションを主な目的としていました。
SPICEはSPICE3(1985年)まで開発され、その後はSPICEをベースに改良や機能を追加したものが商用に展開されました。現在でもよく知られているPSPICEは、MicroSim社*が発売した最初の商用SPICEで、メインフレームコンピュータ上で動作するSPICEをパーソナルコンピュータで使えるようにしたものです。*MicroSim社はOrCAD社に統合され、後にOrCAD社はCadence社に買収された。PSPICEはCadence社の設計支援ツールOrCADの一部となっている。
主なシミュレーションソフトウェア
主な商用のシミュレーションソフトウェアには、以下の様なものがあります。基本的には回路動作シミュレーションを目的としているので似通っていますが、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)が多少異なります。性能や仕様面では、収束アルゴリズムや使用可能モデル、使用素子数上限などに違いがあり、同じソフトウェアでも制限を設けた無償バージョンが提供されているものもあります。
動作の仕組み
シミュレータの動作の仕組みを簡単に説明します。
一般には、最初にシミュレーションしたい回路図を入力します。トランジスタやIC、コンデンサ、ダイオード、抵抗、インダクタなどの部品(モデル)が提供されているので、部品を選び結線していきます。これは、普通に回路図を書くのと同じ感覚でできます。
回路が完成すれば、シミュレーション実行ボタンをクリックするだけで、設定したシミュレーションが行われます。図の例では、「Pch-MOSFETのゲートをGND接地してドレインに0~10Vの電圧を0.1Vステップで印加し、その際にMOSFETに流れる電流をモニタする」ための回路図を作成し、実行結果として電流値のグラフを得ています(左側、青矢印の流れ)。
見かけ上はこういった操作になりますが、実際には、作成した回路図はネットリストと呼ばれる部品と回路、シミュレーション条件などのすべての情報が記述されたソースに変換されます。そして、シミュレータはネットリストにより回路計算、つまりシミュレーションを行いデータを出力します。この場合は0.1Vごとの電流値が数値としてストアされます。このデータをもとにグラフ化機能を使ってグラフが出力されます(黄色矢印の流れ)。
以下は先の例とは別のシミュレータですが、同じ内容のシミュレーションのネットリスト例です。詳細については別途説明を予定していますので、ここではネットリストに書かれている内容のイメージができれば大丈夫です。
次回は、まずは動かしてみるために、シミュレーションソフトウェアのダウンロード方法を説明します。
技術資料ダウンロードのご案内
ローム主催セミナーの講義資料やDC-DCコンバータのセレクションガイドなど、ダウンロード資料をご用意いたしました。
回路シミュレーション
-
電子回路シミュレーションの基礎
- SPICEとは
- SPICEシミュレータとSPICEモデル
- SPICEシミュレーションの種類:DC解析、AC解析、過渡解析
- SPICEシミュレーションの種類:モンテカルロ
- SPICEシミュレーションの収束性と安定性
- SPICEモデルの種類
- SPICEデバイスモデル:ダイオードの例 その1
- SPICEデバイスモデル:ダイオードの例 その2
- SPICEサブサーキットモデル:MOSFETの例 その1
- SPICEサブサーキットモデル:MOSFETの例 その2
- サーマルダイナミックモデル(Thermal Dynamic Model)とは
- SPICEサブサーキットモデル:数式を用いたモデル
- 電子回路シミュレーションの基礎 ーまとめー
- サーマルモデル(Thermal Model)とは
-
ROHM Solution Simulatorとは
- ROHM Solution Simulatorのアクセス方法
- ROHM Solution Simulatorを使ってみる その1
- ROHM Solution Simulatorを使ってみる その2
- ROHM Solution Simulatorシミュレーション回路の起動
- ROHM Solution Simulatorツールバーの機能と基本操作
- ROHM Solution Simulatorのユーザインタフェース
- シミュレーションの実行
- シミュレーション結果の表示方法
- シミュレーション結果表示ツール : Wavebox
- シミュレーション結果表示ツール : Waveform Viewer
- シミュレーションのカスタマイズ
- PartQuest™ Explorerへの回路データのエクスポート
- 評価サンプルの購入
- PFC回路の最適化
- インバータ回路の最適化
- DC-DCコンバータの熱シミュレーションとは