SiCパワーデバイス|基礎編
活用のポイント: 専用ゲートドライバーとスナバモジュールの効果
2018.03.27
この記事のポイント
・専用ゲートドライバとスナバモジュールを利用すると、大幅にサージやリンギングを抑制することができる。
・損失に関しては、Eonは増加しEoffは減少する。損失全体(Eon+Eoff)で比較すると損失は減少する。
今回は、フルSiCモジュール活用のポイントとして、前回取り上げたスナバコンデンサに加えて、専用ゲートドライバーを利用した場合のスイッチング特性の改善について説明します。
フルSiCモジュールのドライブ仕様と基本構成
以下の条件、および回路構成に対して、スナバコンデンサと専用ゲートドライバーを用いた特性の比較を行います。回路構成には、前回説明した電解コンデンサ、フィルムコンデンサが付加されています。専用ゲートドライバーを用いない場合はゲート誤オン対策として、マイクロオーダのCGSを追加し、VGSはマイナスバイアスとし-5Vを印加します(第二世代SiCMOSFET搭載のフルSiCモジュールの場合)。
フルSiCモジュール評価用専用ゲートドライブボートとセラミックスナバコンデンサモジュール
これらが上記の基本構成に付加する専用ゲートドライバーとスナバコンデンサです。これらは、フルSiCモジュール評価用として用意されているものです。
そしてこれらを実装した実機です。
専用ゲートドライバーとスナバモジュールの効果
最初に、専用ゲートドライバーとスナバモジュールのある、なしでターンオン時の波形の比較を示します。
上から順に、ID、VD、VGで、赤と橙のラインが専用ゲートドライバーとスナバモジュールを装着した場合の波形、青と緑が未装着時の波形です。明らかにサージやリンギングが抑制されているのがわかります。
続いて、ターンオフ時の波形です。
同様に、サージやリンギングが大幅に抑制されています。
損失に関しては、Eonは4.3mJから5.3mJに増加し、Eoffは5.3mJから3.8mJに減少しています。これは影響を及ぼすインダクタンスが小さくなると、Eonが大きくなりEoffは小さくなることが理由です。損失全体(Eon+Eoff)で比較すると損失は0.4mJ削減されています。
結論として、フルSiCモジュールの性能を十分に活用するには、スナバを付加し、ゲートドライバーは専用設計のものを使うことが良策と言えます。ここまで、「フルSiCモジュールの活用のポイント」と題して、ゲートドライブに関する考察、スナバの効果、そして今回は専用ゲートドライバーについて説明してきました。高電圧、大電流を非常に高速でスイッチングするには、こういった補完部品と評価に基づく調整がポイントになります。特に初期的な評価に関しては、評価ボードなどを利用することで開発がスムーズに進行します。
【資料ダウンロード】SiCパワーデバイスの基礎
SiCの物性やメリット、SiCショットキーバリアダイオードとSiC MOSFETのSiデバイスとの比較を交え特徴や使い方の違いなどを解説しており、さまざまなメリットを持つフルSiCモジュールの解説も含まれています。