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Siパワーデバイス

特徴を生かしたアプリケーション事例

臨界モードPF : ダイオードによる効率向上の例

実際のアプリケーション回路では、ダイオードやトランジスタは特性や性能の違いによって使い分ける必要があります。パワー系アプリケーションでの主な使い分けの目的は、効率の向上にあります。今回はPFC(力率改善)の例で、ダイオードの特性の違いによる臨界モード(BCM)PFCの効率改善の例を示します。PFCに関しては、前回の説明を参照してください。

臨界モードPFC:液晶テレビでの回路例

この回路は、液晶テレビのPFC部で、シングルPFCの臨界モード(BCM)制御方式の例です。PFC回路のダイオードD1はファストリカバリダイオード(以下、FRD)を使用しています。

液晶テレビの臨界モード(BCM)力率改善(PFC)回路例。PFCのダイオードはファストリカバリダイオード(FRD)を使用

このダイオードに、順方向電圧VFが低いタイプと、逆方向回復時間trrが速いタイプを使った場合の損失のシミュレーションを行います。以下に、使う2種類のダイオードの主な仕様を示します。VFとtrr以外の仕様は、基本的に同等です。

  RFNL10TJ6S 低VF RFV8TJ6S 高速trr 単位
VRM 600 600 V
IF 10 8 A
VF 1.25 @IF=8A 3 @IF=8A Vmax
IR 10 10 µA
trr 65 20 ns max

それぞれのシミュレーション結果を示します。

PFC臨界モードにおけるダイオードの損失シミュレーション結果。低VFのRFNL10TJ6Sは0.23Wと損失が小さい

PFC臨界モードにおけるダイオードの損失シミュレーション結果。高速trrのRFV08TJ6Sは0.41Wと損失が大きい

中段の波形が、ダイオードの損失電力を示しています。上段はコイル電流=ダイオードのIF、下段は出力電圧=ダイオードへの印加電圧です。ダイオードの損失電力は波形を見ての通りで、低VFのRFNL10TJ6Sが低くなっています。平均値では、低VFで標準trrのRFNL10TJ6Sが0.23W、高速trrで標準VFのRFV08TJ6Sが0.41Wです。VFの違いは、1.25V対3V(IF=8A時)です。

この結果は、PFC臨界モードではダイオードのVFの違いが損失に大きな影響を与え、trrの影響は少ないことを示しています。これは、臨界モードでは、電流がゼロからピーク値まで流れるので、ダイオードのVFが大きいとその分の導通損失が増えるのが理由です。

臨界モード制御のPFCでは、なるべくVFの小さいダイオードを選択することで、回路効率を改善できます。

次回は、連続モード(CCM)でのダイオードの影響について説明する予定です。

Key Points:

・臨界モードPFCではダイオードのVFが損失に大きな影響を与えtrrの影響は少ない。

・臨界モード制御のPFCではVFの小さいダイオードを選択することで回路効率を改善できる。


シリコンパワーデバイスの特徴を活かしたアプリケーション事例