Siパワーデバイス|基礎編
MOSFETとは-スーパージャンクションMOSFET
2016.12.20
この記事のポイント
・Si-MOSFETは、低~中電力で高速動作ができるポジション。
・スーパージャンクション構造は、耐圧を維持しながらオン抵抗RDS(ON)とゲート電荷量Qgの低減を実現する。
・スーパージャンクションMOSFETはプレーナーMOSFETよりtrrは高速でirrが大きい特性をもつ。
ここからは、MOSFETの中でも、近年の高耐圧MOSFETの代表格である、スーパージャンクションMOSFETについて説明していきます。
パワートランジスタの特徴と位置付け
最初に、近年の主要パワートランジスタである、Si-MOSFET、IGBT、SiC-MOSFETの電力と周波数のカバレッジを確認したいと思います。今後、スーパージャンクションMOSFETについて話を進めていくわけですが、Si-MOSFETのポジションを理解したうえで、その特徴や特性から使い分けをイメージできればと思います。
以下の図は、各パワートランジスタが扱える電力と周波数の領域を示していいます。Si-MOSFETは、この比較においてオン抵抗と耐圧に関してはIGBTやSiC-MOSFETに一歩譲りますが、低~中電力で、高速動作が得意なことがわかります。
プレーナーMOSFETとスーパージャンクションMOSFET
Si-MOSFETには、製造プロセスからプレーナーMOSFETとスーパージャンクションMOSFETに分類することができます。端的にいえば、パワートランジスタの領域において、プレーナー構造の限界を超えるために開発されたのがスーパージャンクション構造です。
以下の図のように、プレーナー構造は平面的にトランジスタを構成します。この構造では、耐圧を上げるとドリフト層が厚くなるためオン抵抗が増すという課題がありました。それに対して、スーパージャンクション構造は縦型のpn接合を複数並べる構造で、これによって耐圧を維持しながらオン抵抗RDS(ON)とゲート電荷量Qgの低減を実現しました。
また、トランジスタのオフスイッチング特性の検討項目として、内部ダイオードの逆電流irrと逆回復時間trrがあります。以下の波形図が示すように、基本的にスーパージャンクションMOSFETはPNジャンクションの面積がプレーナーMOSFETに比べ大きいため、プレーナーMOSFETよりtrrは高速なのですがirrが多く流れるという特性をもっています。
この特性は、スーパージャンクションMOSFETの課題として改善が進んでおり、高速性や低ノイズといった特徴によって、スーパージャンクションMOSFETはバリエーションがあります。次回からは、バリエーションごとの特徴を確認していこうと思います。
【資料ダウンロード】Siパワーデバイスの基礎
Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。