Siパワーデバイス|基礎編
MOSFETとは-スイッチング特性とその温度特性
2016.09.28
この記事のポイント
・MOSFETのスイッチング特性として、一般にターンオン遅延時間、上昇時間、ターンオフ遅延時間、下降時間が提示されている。
・スイッチング特性は、測定条件と測定回路に大きく影響されるので、提示条件を確認する。
・スイッチング特性は温度変化の影響をほとんど受けない。
前回は、MOSFETの寄生容量について説明しました。今回は、スイッチング特性について説明したいと思います。
MOSFETのスイッチング特性
電力変換においては、MOSFETは基本的にスイッチとして使われます。MOSFETのスイッチング特性は、一般的に、ターンオン遅延時間:Td(on)、上昇時間:tr、ターンオフ遅延時間:Td(off)、下降時間:tfが提示されていることが多いと思います。以下は、低オン抵抗と高速スイッチングを特長とするNch 600V 4AのMOSFET R6004KNXのデータシートからの抜粋です。これらのパラメータの呼称や記号は、メーカー間で多少異なることがあるかもしれません。例えば、ターンオン(オフ)遅延時間をターンオン(オフ)ディレイタイム、上昇(下降)時間を立ち上がり(立ち下がり)時間やライズ(フォール)タイムなどです。
これらのスイッチングに関するパラメータは、測定回路の信号源インピーダンスとドレイン負荷抵抗RLに大きく影響されます。 したがって、基本的に測定条件が規定され、測定回路が提示されています。一般的には、上記の例のようにVDD、VGS、ID、RL、RGの条件がデータシートに示されています。提示されている測定回路に規定条件を適用します。
また、時間のパラメータですので、そのパラメータが「どこからどこまでの時間」であるかも規定されています。
>ターンオン遅延時間:VGSの立ち上がり10%から、VDSの立ち上がり10%までの時間
>上昇時間:VDSの立ち上がり10%から90%までの時間
>ターンオフ遅延時間:VGSの立ち下がり90%から、VDSの立ち下がり90%までの時間
>下降時間:VDSの立ち下がり90%から10%までの時間
ここでの、VDSの「立ち上がり/立ち下がり」という表現は、波形を見ると逆のように思えるかもしれませんが、出力は反転なのでこういった表現になります。例えば、ターンオン時間は「VGSが10%まで上昇してから、MOSFETが10%オンするまでの時間」のように解釈すれはいいことです。
スイッチング特性の温度特性
これらのスイッチング時間は、温度上昇とともにわずかに増加する傾向がありますが、100℃の上昇で10%程度の増加であることから、温度依存性はほとんどないと考えて問題ありません。実測例を以下に示します。
次は、ID-VGS特性の説明を予定しています。
【資料ダウンロード】Siパワーデバイスの基礎
Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。