ノイズ

EMCの基礎-まとめ

2019.02.26

21回にわたった「スイッチングノイズ-EMC 基礎編」は、今回で最後になります。「EMCの基礎」から、スイッチング電源を前提にした「ノイズ対策(手順と概要)」、「コンデンサによるノイズ対策」、「インダクタによるノイズ対策」、「その他のノイズ対策」に関する基礎を解説してきました。今回は最後に各記事のキーポイントをまとめました。

<EMCの基礎>

EMCとは

この記事のポイント

・EMC(電磁両立性、電磁適合性)は、EMIとEMS両方の性能を両立することを意味する。

・EMI(電磁妨害、電磁干渉、電磁障害)は、電磁波の放射/放出(Emission)による他への妨害。

・EMS(電磁感受性)は、電磁波妨害(EMI)に対する耐性(Immunity)。

スペクトラムの基礎

この記事のポイント

・周波数を高くすると、全体的にスペクトラムの振幅が増加する。

・立ち上がり/下がりを遅くすると、-40dB/decの減衰に入る周波数が低くなり、スペクトラムの振幅は減衰する。

・Dutyを変更すると、偶数次高調波が発生するがスペクトラムのピークには影響しない。基本波のスペクトラムは減衰する。

・立ち上がりのみ遅くすると、trの成分がより低い周波数から減衰する。

コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズとは-原因と対策

この記事のポイント

・電磁妨害EMIは大きく「伝導ノイズ」と「放射ノイズ」の2つに分けられる。

・伝導ノイズはディファレンシャル(ノーマル)モードノイズとコモンモードノイズの2種類に分類できる。

・放射に関しては、ディファレンシャルモードノイズはラインのループ面積、コモンモードノイズはライン長が重要なファクタになる。

・条件が同じでも、コモンモードノイズによる放射はディファレンシャルモードノイズより遥に大きいので注意する。

クロストークとは

この記事のポイント

・平行する配線間においてはクロストークが発生する。

・クロストークの要因には、浮遊(寄生)容量による容量(静電)結合と、相互インダクタンスによる誘導(電磁)結合がある。

スイッチング電源で発生するノイズ

この記事のポイント

・スイッチングにより急峻な電流のON/OFFが発生するループでは、寄生成分により高周波リンギング=スイッチングノイズが発生する。

・このスイッチングノイズは、基板配線の最適化などによって低減できるが、それでも残るノイズはコモンモードノイズとして入力電源に伝導するため漏出を防ぐ対処が必要。

<ノイズ対策>

ノイズ対策の手順

この記事のポイント

・製品開発が進めば進むほど使用できるノイズ対策技術や手段が制限され、対策コストはどんどん上昇する。

・製品開発の初期段階で十分に検討、評価しておくことで、余裕を持ったノイズ対策が可能になる。

・ノイズの種類や性質を理解して、それぞれのノイズに効果のある対策を取ることが非常に重要。

・ノイズ対策は、周波数成分の把握→発生源と伝導経路の把握→GNDの強化→ノイズ対策部品の追加の手順で行う。

スイッチング電源のノイズ対策の基本

この記事のポイント

・ディファレンシャルモードノイズを低減するには、回路基板において大電流経路のループルの面積を小さくして、最適なデカップリングと入力フィルタの追加を行う。

・ノイズの発生源であるディファレンシャルモードノイズはできる限り抑えることが重要で、コモンモードノイズの低減にもつながる。

・コモンモードノイズの低減には、配線を短くしてクロストークを抑え、コモンモード経路を遮断(フィルタ)する。

スイッチング電源の入力フィルタ

この記事のポイント

・スイッチング電源の入力フィルタは、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズのそれぞれにそれぞれの対処を行う。

・コモンモードノイズにはコモンモードフィルタを利用する。

・ディファレンシャルモードノイズには、コンデンサ、インダクタ、ビーズ、抵抗などの部品でフィルタを構成する。

<コンデンサによるノイズ対策>

コンデンサのインピーダンスの周波数特性とは?ESR、ESLとの関係

この記事のポイント

・ノイズ対策用コンデンサの選定は、容量ではなくインピーダンスの周波数特性で選定する。

・静電容量とESLが小さいと共振周波数が高くなり、高周波領域でのインピーダンスが低い。

・静電容量が大きいほど容量性領域のインピーダンスは低い。

・ESRが小さいほど共振周波数におけるインピーダンスが低い。

・ESLが小さいほど誘導性領域におけるインピーダンスが低い。

コンデンサを使用したノイズ対策とは

この記事のポイント

・ターゲットとするノイズの周波数のインピーダンスを下げることでノイズ振幅を低減する。

・ノイズ対策用コンデンサの選定は、容量ではなくインピーダンスの周波数特性で選定する。

デカップリングコンデンサ(バイパスコンデンサ/パスコン)の使い方 ポイント1

この記事のポイント

・効果的なデカップリングコンデンサの使い方として、①複数を使用する、②コンデンサのESLを下げる、2つのポイントがある。

・複数を使用する場合は、静電容量が同じか異なるかで効果が変わる。

効果的なデカップリングコンデンサの使い方 ポイント2

この記事のポイント

・効果的なデカップリングコンデンサの使い方として、①複数を使用する、②コンデンサのESLを下げる、2つのポイントがある。

・コンデンサのESLを減らすことによって高周波特性を改善し、より効果的に高周波ノイズを低減することが可能。

・同静電容量でも、サイズや構造の違いでよりESLの小さいコンデンサが存在する。

効果的なデカップリングコンデンサの使い方 その他の注意点

この記事のポイント

・Qと周波数-インピーダンス特性の関係を理解して、目的によってQの違いを使い分ける。

・高Qのコンデンサは狭帯域でインピーダンス低下が急峻。低Qのものは広帯域で穏やかな低下を示す。

・基板パターンのサーマルリリーフなどはインダクタ成分を増加させ、共振周波数を低周波側に移動させる。

・対策検討時の仮実装は、現実の修正に沿った実装の仕方をしないと、修正後の基板で検討時の効果が得られない可能性がある。

・静電容量変化率が大きいと共振周波数が変動し、所望の周波数でのノイズ減衰が得られなくなる。

・温度条件や変動が厳しいアプリケーションでは、CH、C0G規格のような温度特性のよいものの使用を検討する。

効果的なデカップリングコンデンサの使い方 まとめ

<インダクタを使用したノイズ対策>

インダクタのインピーダンスの周波数特性と共振周波数の求め方とは?

この記事のポイント

・インダクタは共振周波数までは誘導性特性(周波数が高くなるにつれてインピーダンスが増加)を示す。

・インダクタは共振周波数以降は容量性特性(周波数が高くなるにつれてインピーダンスが減少)を示す。

・インダクタは共振周波数より高い周波数ではインダクタとして機能しない。

・インダクタンスLが小さくなるとインダクタの共振周波数は高くなる。

・インダクタの共振点インピーダンスは寄生抵抗成分によって制限される。

フェライトビーズとインダクタの基本特性とノイズ対策としての使い方

この記事のポイント

・ノイズ対策に使うインダクタは、大別すると巻線タイプのインダクタによるフィルタと、フェライトビーズによる熱変換。

・フェライトビーズは、一般的なインダクタに対して抵抗成分Rが大きくQが低い。

・一般のインダクタは比較的大きな直流重畳電流を許容でき、その範囲内であればインピーダンスは直流電流の影響をあまり受けることない。

・フェライトビーズは直流電流に飽和しやすく、飽和によりインダクタンスが低下して共振点が高域に移動する。

・一般的なインダクタによるフィルタは、広いインダクタンス値の選択が可能。

・フェライトビーズはQが低いので比較的広い周波数での対策に効果的。

コモンモードフィルタを使ったノイズ対策

この記事のポイント

・コモンモードノイズの除去にはコモンモードフィルタを使用する。

・コモンモードフィルタは、自己誘導作用を利用してコモンモード電流を通過させないフィルタ。

注意点 : クロストーク、GNDラインからの回り込み

この記事のポイント

・基板配線レイアウトによっては、クロストークによりフィルタ効果が低下する。

・Π型フィルタのコンデンサのGNDの取り方によっては、ノイズがGNDラインから回り込んでくる。

・これらは基板配線レイアウトを適正にすることで回避可能。

インダクタを使用したノイズ対策 まとめ

<その他のノイズ対策>

RCスナバ回路

この記事のポイント

・RCスナバ回路は、寄生容量や寄生インダクタンスにより発生する電圧スパイクを、抵抗で熱に変換して低減する。

・スナバ回路の追加により効率が低下する可能性があるので、ノイズレベルと効率の妥協点を検討する必要がある。

・抵抗はノイズ電圧を熱に変換するので、抵抗の許容損失に注意が必要。

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EMC(電磁両立性)の基礎とスイッチング電源のノイズ対策に関するハンドブックです。ノイズの基礎の理解を基に、スイッチング電源におけるコンデンサとインダクタを使ったノイズ対策を解説しています。

EMCの基礎-まとめ

スイッチング電源 EMC の基礎とノイズ対策