伝達関数
スイッチのオン抵抗が伝達関数に与える影響
2017.12.12
この記事のポイント
・スイッチのオン抵抗の影響も基本的に今までと同様の手順で導出する。
・オン抵抗を加味するかしないかで、一次の虚数項の違いが伝達関数に影響を与える。
・スイッチのオン抵抗は実際には必ず存在するので、伝達関数においても加味するための考察を行う。
前回、前々回と「昇降圧コンバータの伝達関数導出例」をその1とその2に説明してきました。今回は「スイッチのオン抵抗が伝達関数に与える影響」について考察してみたいと思います。
この考察についても、今までと同じアプローチをとります。導出する伝達関数は同様に と で、同様に2つのステップで導出していきます。
スイッチのオン抵抗が伝達関数に与える影響
ここまでの伝達関数の導出では、スイッチ(スイッチングトランジスタ)のオン抵抗の影響はいっさい考慮しませんでした。しかし、実際は必ずスイッチのオン抵抗は存在し、実際の動作にも影響を及ぼすのは周知の事実です。ここでは、スイッチのオン抵抗というパラメータが与える影響を考えてみます。
「昇降圧コンバータの伝達関数導出例 その2」の、ton≠ton’ となる昇降圧コンバータをベースに、同様の手順で進めていきます。
右の回路は、前回提示した昇降圧コンバータの略図に、スイッチであるMOSFETのオン抵抗を、RONpとRONnで示してあります。
●ステップ1:系の安定状態を考える
① コイル電流は一周期で変化しない
② コンデンサの電荷量は一周期で変化しない
式にはオン抵抗に関する項(赤色)が追加になります。
●ステップ2:.外乱に対する変化量を求め、伝達関数を記述する
先の式5-27、5-28からの計算例を示します。式5-27、5-28に対して、、 、 とおいて代入すると、以下のようになります。
そして、式5-31、5-32を連立して、と を求めると、以下のようになります。
結果を見て分かるように、一次の虚数項が大きく異なります。これについては、「伝達関数とは」の章で説明した通りで、ここでは特性結果のみを下図に示します。
最後に、オン抵抗を加味した場合とそうでない場合の、TOTALの伝達関数特性を以下にまとめました。
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