伝達関数
昇降圧コンバータの導出例 その1
2017.07.21
この記事のポイント
・各コンバータにおいて導出するのは、Δvout/ΔD、ΔiL/ΔDである。
・伝達関数は、系の安定状態を考え、外乱に対する変化量を求める2つのステップで導出する。
・昇降圧コンバータの伝達関数も基本的に昇圧コンバータ、降圧コンバータ同様に手順で導出する。
降圧コンバータと昇圧コンバータの伝達関数を導出してきました。今回からは、昇降圧コンバータの伝達関数の導出に入ります。昇降圧コンバータには制御方式が存在しますが、ここではその中から2つを取り上げ伝達関数を導出します。今回は1つ目についてです。
再三申し上げている通り、今回の昇降圧コンバータの伝達関数導出に関しても降圧および昇圧コンバータと同じく、あくまで導出する伝達関数はとで、同様に2つのステップで伝達関数を導出していきます。
昇降圧コンバータの伝達関数導出例 その1:ton=ton’ となる昇降圧コンバータ
前述の通り、昇降圧コンバータには様々な制御方式が存在します。それは、入力電圧から出力電圧を決定するパラメータが1つではないことが理由です。これについて、少々説明をします。
降圧コンバータの場合、入力電圧と出力電圧の関係は以下の式のようになります。
式が示すように降圧コンバータはVIN、Vout、T(周期)が決定すれば、tonは1通りに決まります。しかし、昇降圧コンバータの場合は以下のようになり、VINとVoutが決まっても、1通りには決まりません。
したがって、様々制御方法が存在することになります。今回はその中から1つ目として、「ton=ton’」となる昇降圧コンバータの伝達関数を導出します。
ton=ton’となる昇降圧コンバータ
右の回路は、降圧スイッチと同期して昇圧スイッチをオンする制御方法です。この場合の立式ですが、降圧および昇圧コンバータと同様に2つのステップにより行います。
●ステップ1:系の安定状態を考える
①コイル電流は一周期で変化しない
②コンデンサの電荷量は一周期で変化しない
●ステップ2:.外乱に対する変化量を求め、伝達関数を記述する
先の式5-15、5-16からの計算例を示します。
式5-15、5-16に対して、とおいて代入すると以下のようになります。
そして、式5-19、5-20を連立して と を求めると、以下のようになります。
前回の昇圧コンバータの伝達関数と比較すると、結果的に、昇圧コンバータと同様の特性結果が得られることがわかります。
次回は、ton≠ton’となる昇降圧コンバータの伝達関数を導出します。
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