DC-DCコンバータ|基礎編
制御方式 (電圧モード、電流モード、ヒステリシス制御)
2014.05.27
この記事のポイント
・各制御方式の特徴、長所/短所を検討して、設計に一番適する方法を選択する。
最初にスイッチングレギュレータのフィードバック(帰還)制御方式には、電圧モード、電流モード、ヒステリシス制御の3種類があることを説明しました。リニアレギュレータ同様にスイッチングレギュレータも帰還ループによって安定化を行っていることは前述しました。ここでは、各詳細を説明します。各長所と短所がありますので、どの方式を選ぶかはバランスを考える必要があります。
電圧モード
電圧モード制御は最も基本的な方式です。帰還ループを介して、出力電圧だけを帰還します。エラーアンプで基準電圧と比較した差分の電圧をさらに三角波と比較することで、PWM信号のパルス幅を決めて出力電圧を制御しています。この方式のメリットは、電圧だけの帰還ループなので制御が比較的単純なこと、ON時間を短くできること、ノイズ耐性が高いことです。デメリットとしては、位相補償回路が複雑になることで、設計が面倒になる可能性があります。
電流モード
電流モード制御は、電圧モード制御を改良したものです。電圧モード制御で使う三角波の代わりに、回路のインダクタ電流を検出して使う方式です。インダクタ電流の代わりにトランジスタの電流や、電流センス抵抗で電流検出を行うことも出来ます。帰還ループは、電圧ループと電流ループの両方があり制御は比較的複雑になりますが、位相補償回路の設計が大幅に簡単になるメリットがあります。ほかのメリットとしては、帰還ループの安定性が高いこと、負荷過渡応答が電圧モードより高速なことことなどがあります。デメリットは、電流検出が敏感なのでノイズに弱いことですが、最近はこの部分がICに内蔵されているので問題は少なくなっています。
ヒステリシス制御(リップル制御)
ヒステリシス制御方式は、さらに高速な負荷過渡応答が必要な負荷、例えばCPU、FPGAなどの電源要求に対して開発された方式です。出力のリップルを検出して制御しているので、リップル制御方式とも言います。この方式は、出力電圧を、エラーアンプを介さずにコンパレータで直接モニタします。設定したしきい値を上回った、あるいは下回ったことを検出して、コンパレータが直接的にスイッチのON/OFF制御を行います。ON時間固定で、しきい値を下回ったことを検出する方式と、OFF時間固定でしきい値を上回ったことを検出する方式があります。
この方式のメリットは、コンパレータによって、直接的な制御をしているので、過渡応答が極めて高速なことと位相補償が不要と言うことです。デメリットは、スイッチング周波数が変動すること、ジッターが大きいこと、出力リップルを検出するために、ESR(等価直列抵抗)が比較的大きな出力コンデンサが必要になる点ですが、この辺りは改良が進んでおり、この方式を採用するICが増えています。例として、本来出力に現れるリップルをIC内部で帰還することによって、ESRが小さなセラミックコンデンサを使用できる様にして、出力リップルが小さくなる工夫をしているものがあります。