DC-DCコンバータ|基礎編
同期整流式の軽負荷時の効率を改善する機能
2014.05.27
この記事のポイント
・低負荷時、待機時の効率は自己消費電力が支配的になるため、自己消費を減らす動作に移行するアプローチ。
・IC自体にこれらの機能が搭載されているので、追加の回路や部品は基本的に不要。
・ノイズに関しては、効率を犠牲にしても抑えなければならない場合が少なくない。
前項で、同期式は軽負荷時に逆電流のために効率が低下すると説明しました。せっかく効率が高い同期式ですから、軽負荷時にも高効率であってほしいと誰も期待するはずです。何より最近は、待機時電力の削減が大きなテーマになっています。一番の軽負荷時は、給電している回路がシャットダウン状態にある時です。電源もシャットダウンしてしまえるといいのですが、微小な電力を与え続けなければならず、その際の効率が低いことは大きな問題です。
不連続モードの追加
同期整流式の軽負荷時の効率改善の一つの方法として、軽負荷時には不連続モードで動作する機能を追加する方法があります。考え方は非常にシンプルで、インダクタ電流がゼロ付近まで低下したことを検出して、下側のトランジスタをOFFにし、逆流が起こらないようにするという方法です(図43)。
ただ、この方法は完璧というわけではありません。この時、インダクタのトランジスタ側のノードは開放と同じ状態になるので、出力コンデンサの放電は負荷電流に依存することになり、軽負荷時のため電圧が降下する時間が長くなってしまいます。その結果、スイッチングスピードが落ちるので、リップル電圧が増える場合があります。
また、上側トランジスタは出力電圧が下がるまでONしませんので、スイッチング周期が変わってしまいます。ノイズのフィルタリングを考えた場合に、ノイズの周波数が変動するのは問題になります。これも効率とのトレードオフになります。
PWMモードからPFMモードに切り替え
もう一つ別の方法を説明します。今までPWMを前提に話を進めてきましたが、この方法はPWMとPFMを使い分ける方法です。負荷が重い時はPWM動作、負荷が軽い時には効率が良いPFMに制御を切り替えてやります。PWMは、最も一般的な電圧制御方法で、周波数が一定なので重負荷時も軽負荷時もON/OFFの時間比は違ってもスイッチする回数は同じです。そのため自己消費電力は変わらないので、軽負荷時にはスイッチング損失が支配的になって効率が低下します。これがPWMモードが一般に低負荷時の効率が急激に低下する理由です。
PFMは、ON時間が一定でOFF時間が変わる、またはOFF時間が一定でON時間が変わります(図44はON時間一定の例)。別の言い方をすれば、次にONするまでの時間が変わります。軽負荷時には、電力の追加供給は少なくて済むので、ONになる周期が長くなって単位時間当たりのスイッチング回数が減り、スイッチング損失は減少し効率が維持されます(図46参照)。
それでは、単純にPFM方式にしてしまえば良いということになりそうですが、ONになる周期、つまり周波数が変わるとスイッチングに起因するノイズが不定期になってしまい、周波数を特定できないのでノイズのフィルタリングが大変やっかいになります。つまりノイズを除去するのが困難になります。また、周波数が可聴帯である20kHzに入ると、音鳴りが発生したり、オーディオ機器ではS/Nに影響を与える可能性があります。ノイズに関してはPWMの方が扱いやすい面があると言えます。したがって、ここでもトレードオフが必要になってきます。