DC-DCコンバータ|基礎編
追補-同期整流降圧コンバータ動作時の電流経路
2019.04.16
この記事のポイント
・同期整流降圧コンバータ動作時の電流経路は、基本的に非同期(ダイオード)整流コンバータと同じ。
・電流経路と急峻な電流変化が生じるラインを理解して、PCBレイアウトを行う必要がある。
この記事は、「スイッチングレギュレータの基礎」の「降圧型スイッチングレギュレータの動作原理」に関する追補記事です。「降圧型スイッチングレギュレータの動作原理」では、「降圧型非同期(ダイオード)整流式スイッチングレギュレータの回路と動作」について解説しています。この記事では補足として、近年の高効率DC-DCコンバータにおいては標準的と言える同期整流式降圧コンバータ動作時の電流経路の説明をします。
同期整流降圧コンバータ動作時の電流経路
上述の記事では例として、非同期(ダイオード)整流降圧コンバータの電流経路を説明しています。最初に確認しておきたいのは、動作時の電流経路は非同期整流も同期整流も基本は同じという点です。同期整流は非同期整流のローサイドスイッチであるダイオードをトランジスタに変更した回路方式だからです。その前提で、同期整流降圧コンバータの電流経路と注意点を解説します。
■ハイサイドスイッチ「オン」時の電流経路
- 上図の赤色の線は、ハイサイドスイッチ(実際にはMOSFET)Q1がオン時にコンバータに流れる主な電流を示している。
- CBYPASSは高周波用のデカップリングコンデンサで、CINは大容量コンデンサ。
- ハイサイドスイッチQ1がオンした瞬間に流れる急峻な電流の大半はCBYPASSから供給され、次にCINから供給される。
- 緩やかな変化の電流は入力電源から供給される。
■ローサイドスイッチ「オン」時の電流経路
- 同期整流方式は、ハイサイトとローサイドのスイッチが交互にオンオフする。
- 上図の赤色の線は、ハイサイドスイッチQ1をオフし、ローサイドスイッチQ2がオンした時の電流の流れを示す。
- インダクタと出力コンデンサCOにより出力電圧Voは平滑化される。
- 降圧コンバータは出力にインダクタが直列に挿入されているため、出力コンデンサの電流は滑らか。
■スイッチング電流波形
以下はスイッチング電流波形とインダクタ電流の波形を示しています。IHGはハイサイドスイッチ、ILGはローサイドスイッチの電流です。上記の説明と照らし合わせてみてください。
インダクタ電流ILはIHGとILGの合成になり、出力電流IOはILの平均値になります。
■スイッチング電流とPCBレイアウトの注意点
下図の青線は、上出の電流経路で示したスイッチオンオフ時に流れる電流の差分を示しています。
この電流には以下の特徴があります。
- ハイサイドスイッチQ1がオフからオンへ、オンからオフへ変化する度に青線の部分の電流は激しく変化する。
- この系は変化が急峻なため高調波を多く含んだ波形が現れる。
したがって、PCB(基板)レイアウトにおいては、この差分の系は要注意箇所として、セオリーにしたがったレイアウトが必須となります。基板レイアウトに関しては、設計編の「DC-DCコンバータの基板レイアウト」を参考にしてください。