DC-DCコンバータ|基礎編
VinがVoutを下回った場合の挙動
2019.02.12
この記事のポイント
・降圧スイッチングレギュレータでVinがVout設定値を下回った場合、Vin復帰のタイミングでVoutが大きく持ち上がる可能性がある。
・悪影響があれば、Vin条件や電源ICの応答特性を見直す必要がある。
降圧スイッチングレギュレータは、入力電圧VinをVinより低い電圧に変換します。しかしながら、Vinの変動により設定したVoutよりVinが低くなってしまうケースはゼロではありません。この条件において発生する可能性のある挙動について説明します。
降圧コンバータのVinがVoutを下回った場合の挙動
降圧スイッチングレギュレータでは、Vin>Voutが正常な関係です。厳密には、Voutに入出力間の電圧降下を加えた電圧が正常動作するVinとなります。例えば、3.3Voutに対して最小動作電圧3.8Vinといったイメージです。
しかしながら、何らかの理由でVinが短時間の間Vout以下の電圧に低下してしまうことがあり得ます。例えば、同じVinを共有する他のデバイスが急激に大きな電流を引き込んだため電圧が一瞬低下するなどです。
通常、VinがVoutより低くなると、Voutは設定した電圧を維持できず低下します。一般的にある程度までは低下したVinから主にスイッチ(トランジスタ)の電圧降下分を差し引いた電圧がVoutに出力されますが、さらにVinが低下すると動作に異常をきたしVoutは不確定な状態になる可能性があります。この状態は給電しているデバイスやシステム動作を不確定にするだけではなく、場合によってはダメージを与える可能性があります。これを避けるために、近年のほとんどの降圧スイッチングレギュレータICはUVLO(Under Voltage Look Out)と呼ばれる入力電圧低下時の保護機能を備えており、一般にVinが設定されているUVLOのしきい値を下回った場合にはICはシャットダウンし、Vinが復帰すれば再起動するという動作によってシステムを保護します。
ここで取り上げたいのは、UVLOが作動しないレベルでVinがVoutを下回り、Vinが復帰した際に発生する可能性がある挙動についてです。図を使って説明します。
左側の波形図が示しているのは、入力電圧Vinが出力電圧Vout(回路図ではVo)を下回らない範囲で低下した場合の挙動です。一般的にはVinが変動してもVoutはほとんど影響を受けません。
中央の波形図は、今回の話題である「VinがVout設定値を下回った場合」に発生する可能性のある挙動です。条件としては、VinがVoutの設定値を下回るがUVLOが作動するレベル(赤ライン)までは下がらない、というものです。VinがVout設定値を下回った場合のVoutの挙動は先に説明したとおりで、おおよそVin-スイッチの電圧降下のレベルになります。この状態は帰還回路からしてみれば、Voutが設定値より低下した状態であり、Error Ampはそれを検出し出力Error outはHighになり、ハイサイドスイッチはON、ローサイドはOFFになり出力に電力を供給する状態になります。
この状態においてVinが急に普及すると、ハイサイドスイッチからの電力供給が急に増加しVoutも急に上昇し、短い期間ですが設定値を大きく超える可能性があります。その後はこれを検出したError AmpがハイサイドスイッチをOFFにしてVoutを下げる制御をしてVoutを設定値に戻します。この現象は、Vin復帰の急峻さやError Ampの応答速度などに関連するものです。Voutの持ち上がりが給電しているデバイスなどの定格を超えるとダメージを与える可能性がありますので、実使用条件において発生の有無について確認すべき現象です。これが問題になるようでしたら、Vinや電源ICの応答特性を見直すことが必要になります。
ちなみに右の波形はVinがUVLOのしきい値を下回った場合で、UVLOの作動により電源ICはシャットダウンし、Vinが復帰するとVoutはソフトスタートをともなって再起動します。