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2014.05.27 DC/DC

効率と熱計算

リニアレギュレータの基礎

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リニアレギュレータの効率と熱計算について説明します。前述のように、リニアレギュレータを使う上では必須の検討事項です。

リニアレギュレータの効率

リニアレギュレータ(LDO)の効率計算式と例。入出力間の差が大きいと効率は下がる。

図 24

効率の定義は、投入した電力に対して変換した出力電力の割合で、通常は%で示します。これはスイッチングレギュレータでも同じです。下の式の入力電流IINに含まれるICCはIC自体の消費電流です。ただし、これは小さな値なので負荷電流が大きい時は無視しても構いません。そうした場合、入力と出力の電流を同じとすることができますので、単純に出力電圧を入力電圧で割るだけで計算できます。

図24の例では、5Vから3.3Vの変換での効率は64%です。昨今のスイッチングレギュレータの効率は80%~90%以上なので、64%は低いといわざるを得ません。

ここで、図24の例題の入力電圧5Vを3.6Vに変更してみましよう。5Vはシステム電圧、3.6Vはリチウムイオン二次電池の電圧がイメージできます。

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リニアレギュレータ(LDO)の損失電力とは。入力と出力の差分がそのまま損失になる

図 25:損失電力

なんとこの条件での効率は89%です。つまり、リニアレギュレータでも入力と出力の電圧差が小さいと効率が高くなり、スイッチングレギュレータと変わらない高効率が得られます。ます。図25を見るとよくわかりますが、VINがドロップアウト電圧VDROPOUTに近づけば損失電力が減り効率は高くなります。

このような条件だと、LDOの貢献度は非常に高いものになります。この条件では、入出力差は0.3Vなのでリニアレギュレータの選択肢はLDO、しかもドロップアウト電圧が0.3V以下のLDOになります。標準型のリニアレギュレータではこの条件に対応することはできず、もし、どうしても標準型を使うのであれば、入力電圧は6.3V以上必要で(ドロップアウト電圧を3Vとすると)、最初の5V入力の条件に対応できません。また、効率も52%に下がってしまいます。逆に12Vから5Vを作るような時は、LDOでも標準型でも効率や損失は変わりません。

リニアレギュレータの効率は入出力電圧差に依存します。ドロップアウト電圧は、どこまで入出力電圧差を小さくできるかということに対しては関係しますが、効率には直接関係ないのは式にドロップアウト電圧の項がないことで明らかです。この点を混同しないようにしてください。

キーポイント

・効率は電力変換効率の意味で、リニアレギュレータもスイッチングレギュレータも考え方は同じ。

・リニアレギュレータでも条件を整えれば、スイッチングレギュレータと変わらない効率が得られる。

・図25の損失電力部分を以下に小さくするかが、リニアレギュレータの効率向上のポイント。

リニアレギュレータの熱計算

熱計算には、損失電力、パッケージの熱抵抗、そして周囲温度の情報が必要になります。損失電力は効率計算での計算方法と同じで、単純には入出力電圧差と入力電流を掛けた値です。熱抵抗はデータシートに記載があると思います。ない場合はメーカに問い合わせる必要があります。基本はチップ(ジャンクション)と周囲(アンビエント)間の熱抵抗、θjaを使います。ICによっては、ケースまでの熱抵抗θjcが提供されている場合がありますが、いずれにしてもθjaまでの熱抵抗を求めます。最後に周囲温度ですが、これは機器の定格などから、例えば50℃のように想定のものでも構いません。条件がシビアな場合は実測することもあります。

リニアレギュレータ(LDO)の熱計算。損失電力×熱抵抗θjaにTaを加算。入出力電圧差と出力電流が大きくなると発熱は増加する

図 26

考え方としては、損失電力と熱抵抗からICチップの発熱を求め、それに周囲温度を加えることで、チップの温度が求められます。計算したTj(チップ温度)がTjmax(チップ温度の最大定格)を超えていないかを確認します。もし、Tjmaxを超えている場合は、いずれかの条件を変更します。これが、前項で説明した、すべてがスペック通りに使えるわけではなく、入出力電圧、出力電流、周囲温度によって制限されるという意味です。

一般に、定格を超えたからといって入力電圧や出力電圧を変更できる例は少ないと思います。対処として、負荷電流(出力電流)を減らすことは可能かもしれません。この場合、電力供給を受けるデバイスはなるべく消費電流の少ないものを選ぶことになります。他の方法としては、周囲温度を下げることも可能です。自然対流の空冷からファンによる冷却に変更したり、すでにファンがあるのなら冷却能力を上げたり、対流の見直しをするなどです。また、リニアレギュレータに放熱板を取り付け、熱抵抗を下げ発熱を低減する方法もありますが、放熱板のコストとサイズは大きな検討事項になるでしょう。そして、電源の効率を上げて発熱を減らすという観点では、次項で説明するスイッチングレギュレータを使うことを視野に入れます。

キーポイント

・TjMAX(最大定格)を超えないための重要検討項目。

・調整にはTaと発熱(損失電力×熱抵抗)間でのトレードオフが必要。

リニアレギュレータとスイッチングレギュレータの基礎