DC-DCコンバータ|評価編
同期整流降圧コンバータの導通損失
2017.10.03
この記事のポイント
・同期整流降圧コンバータのMOSFETの導通損失は、オン抵抗とオン時の電流およびオン期間から算出する。
前回は、同期整流降圧コンバータにおける損失発生箇所確認し、コンバータ全体としての損失は各部の損失の合計であることを説明しました。今回から、各ポイントの損失算出方法を検討していきます。今回は、パワースイッチである出力段MOSFETの導通損失です。
- PONH:ハイサイドMOSFETオン時の
オン抵抗による導通損失 - PONL:ローサイドMOSFETオン時の
オン抵抗による導通損失 - PSWH:スイッチング損失
- Pdead_time:デッドタイム損失
- PIC:ICの自己消費電力損失
- PGATE:ゲートチャージ損失
- PCOIL:インダクタのDCRによる導通損失
出力段MOSFETの導通損失
出力段MOSFETの導通損失は、ハイサイドおよびローサイドMOSFETのオン時のオン抵抗(RDS(ON))によるもので、伝導損失とも呼ばれます。ここでは、以下の記号を使います。
PONH:ハイサイドMOSFETオン時のオン抵抗による導通損失
PONL:ローサイドMOSFETオン時のオン抵抗による導通損失
オン抵抗はMOSFETの特性を示す重要なパラメータの一つで、MOSFETには必ず存在します。したがって、抵抗をもつ導体に電流が流れるわけなので、単純にその分の損失が生じるのはわかると思います。
それでは、MOSFETの導通損失を求めていきます。下の回路図のIONH(赤)はハイサイドMOSFETオン時の電流を示しています。IONL(青)はローサイドMOSFETオン時の電流です。波形図のLXはスイッチノードの電圧波形、IONHとIONLはスイッチングにともなう各電流波形、ILはインダクタ電流で、標準的な例です。
同期整流では、ハイサイドスイッチのオン時にはローサイドスイッチがオフし、ローサイドがオン時にはハイサイドがオフします。スイッチノードの波形の赤部分はIONHが、青部分はIONLが流れていること示しています。つまり、この期間MOSFETに電流が流れる電流とMOSFETのオン抵抗による電力損失が、それぞれの導通損失になります。以下に計算式を示します。
見ての通りオームの法則に基づくI2・Rに、オン期間をかけた値です。電流は平均電流であるIoを使ったモデルです。
ちなみに、ダイオード整流(非同期整流)の場合は、同期整流のローサイドMOSFETがダイオードになるだけなので、同様の考え方で損失を求めることができます。ダイオードにはオン抵抗というパラメータはありませんので、順方向電圧Vfから計算します。こちらは電圧(Vf)がわかっていますので、V・Iで計算できます。また、スイッチがバイポーラトランジスタの場合も、ダイオードと同じ考え方でVCEによって計算できます。
実際の計算で大事なことは、オン抵抗の値は、Ioの値におけるオン抵抗で計算することです。MOSFETのデータシートにはオン抵抗RDS(ON)とIDSのグラフがあると思いますので、それを利用してください。これはダイオードのVfやバイポーラトランジスタのVCEも同様です。
次回はスイッチング損失を予定しています。
【資料ダウンロード】降圧DC-DCコンバータ 損失の検討
DC-DCコンバータ
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評価編
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
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損失の検討
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