DC-DCコンバータ|評価編
降圧動作原理
2014.07.15
この記事のポイント
・スイッチングレギュレータにはAC-DCとDC-DCがあり、その中でも様々変換方式がある。
・設計に適した方式を選択するため、各方式の長所/短所を理解する必要がある。
・DC-DC変換は、スイッチングにより出力に必要なエネルギーを時間で切り分け、
それを整流-平滑することで再びDCに変換することを理解する。
・各ノードでの電流と電圧波形を理解しないと評価ができない。
ここからは、最も利用することが多い降圧型スイッチングレギュレータを例にして動作原理を説明していきます。
降圧DC-DC変換は、VINというDC電圧を、スイッチによって時間分割し、次にインダクタとコンデンサにより平滑化することで所望のDC電圧に変換します。降圧DC-DC変換の概念的な回路と動作を右に示します。
PWM動作で説明すると、S1=ON/S2=OFFでVINを給電する時間を25%、S1=OFF/S2=ONでゼロボルト(GND)状態を75%のパルス周期にし、そのパルスを平均化すると25%のDCになります。VINが10Vだとすると、Voは25%の2.5Vになります。
実際のPWMでは、平均化された出力の負荷電流が変動しますので、ON時間がずっと一定では負荷電流に依存して電圧が上下してしまいます。それではレギュレータではないので、出力が降下するとON時間を増やして、より多くのエネルギーを入力から送って、出力電圧を上昇させます。十分に出力電圧が回復したら、今度はON時間を短くして出力の上昇を止めます。
下の回路は、概念図を実際の回路に置き換えたものです。スイッチS1はMOSFETで置き換えられ、S2はショットキダイオードに置き換えられており、割愛されていた比較回路と制御回路も示されています。これは、非同期もしくはダイオード整流式と呼ばれている代表的なスイッチング降圧回路です。
降圧スイッチングレギュレータの動作
- 出力電圧が設定電圧になっているかを基準電圧と比較する
- 設定電圧よりも低い場合は、スイッチがオンとなり入力から出力へ電力を供給
- この時インダクタに磁気エネルギーが蓄積される
- 出力電圧が設定電圧よりも高くなるとスイッチがオフ
- インダクタに蓄積されていた磁気エネルギーが電流となって出力負荷へ供給され、再びインダクタへ戻る
- インダクタの磁気エネルギーがなくなり、出力電圧が下がってくると、再びスイッチがオンになる
実際の電流および電圧のスイッチング波形も記します。S1はMOSFETのスイッチングトランジスタ、D1はショットキダイオード、L1はインダクタ、C1は出力電圧、VINは入力電圧です。
ここでは、基本的なスイッチングレギュレータの動作を復習的な意味で説明しました。実際の評価を行う際には、各ノードにおける電流や電圧波形などをチェックしていきます。その際には、このような基本的な動作を理解している必要があります。
【資料ダウンロード】スイッチングレギュレータの特性と評価方法
このハンドブックは、スイッチングレギュレータの基本を確認し、スイッチングレギュレータ用ICのデータシートを読み解くことも併せて、設計の最適化に必要なスイッチングレギュレータの特性の理解と評価の方法を解説しています。
DC-DCコンバータ
- 基礎編
- 設計編
-
評価編
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
-
損失の検討
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- 応用編
- 製品紹介
- FAQ