DC-DCコンバータ|評価編
ロードレギュレーション
2015.03.16
この記事のポイント
・ロードレギュレーションは負荷電流の変動に対する出力電圧の変動の割合、または電圧値で表す。
・電源回路の出力端子で測定するのと、負荷となるデバイスの電源端子で測定するのでは違いが生じる。
・負荷デバイスの電源端子の電圧が変動するのは好ましくないのでリモートセンスをする。
「スイッチングレギュレータの評価」の2つ目となるこの項では、「ロードレギュレーション」についてどのように考え、測定し、評価するかを説明します。
・ロードレギュレーションの考え方
ロードレギュレーションは電源にはもちろん、電源ICにもパラメータとしてある項目です。意味するところは、負荷電流(出力電流)の変動に対して電源の出力電圧がどのくらい変動するかというもので、%のような割合や10mVといった実際の変動値で示されます。理想的な話をすれば、電源出力電圧は安定化されているので、負荷電流が変動しても電圧は一定に保たれます。しかしながら、出力インピーダンスやライン(配線)抵抗が存在する以上、どうしても変化が生じます。
ロードレギュレーションは、電源の出力端子で測定するのと、電源出力に接続する負荷、つまり給電されるICなどの電源端子で測定するのでは主旨が異なります。電源の出力端子でみるロードレギュレーションは、その電源自体のロードレギュレーションになり、電源特性と言えます。負荷デバイスの電源端子でみるロードレギュレーションは、電源特性に電源出力端子から負荷電源端子までのライン抵抗による電圧降下を加えたものになります。
上図の通り、負荷デバイスの電源端子での電圧は単にオームの法則に則ることになります。例えば、ライン抵抗を0.1Ωとした場合に1Aの負荷電流を取ると、ライン抵抗分の電圧降下は0.1Vになり、通常の5V/3.3V電源で求められる5%精度であれば問題ありませんが、FPGAなど1V台の低電圧電源で2%といったような高精度が必要とされる場合はNGになってしまいます。また、電流が増えると5V/3.3Vでもアウトになります。したがって、ロードレギュレーションをチェックする際には、負荷デバイスの電源端子の電圧が要求精度内にあるかどうかを確認することが重要になります。
そうなると、ライン抵抗を小さくすることを考えるかもしれませんが、小さくすることはできますがゼロにすることはできません。つまり、ライン抵抗による電圧降下は原則的に発生することになり、負荷電流が増えれば計算通りにNG状態に至ります。しかしながら、これを回避するために、「リモートセンス」という手法を用いることができます。
安定化電源は、出力電圧を帰還ループ制御することで負荷電流が変動しても出力電圧を一定に保ちます。電源ICで言えばFB端子、電源モジュールではセンス端子などと呼ばれる端子に出力を帰還します。ここで重要なのは、どのポイントの電圧をセンス(帰還)するのかということです。下図は1.8V出力の電源で、電源出力端子の電圧をセンスした場合と、負荷デバイス電源端子をセンスした場合の、負荷電流に対する負荷デバイス電源端子の電圧を示した例です。ライン抵抗は0.1Ωとしています。
電源出力端子の電圧をセンスした場合(赤矢印)は、ライン抵抗がほとんどない条件となるので電源出力端子のところでは1.8Vを維持するのですが、負荷デバイス電源端子では負荷電流×ライン抵抗分の電圧降下が発生します。これは問題が起こっているのではなく、なるべくしてそうなっています。
負荷デバイス電源端子の電圧をセンスした場合(青矢印)は、負荷デバイス電源端子の電圧を1.8Vに維持するように制御されますので、負荷電流にかかわらず設定した1.8Vが維持されます。この場合、電源出力端子の電圧は1.8Vではなく、1.8V+(負荷電流×ライン抵抗)、つまり電圧降下分が付加された電圧になっています。この負荷端での電源出力電圧のセンスをリモートセンスを呼んでいます。特に、大電流、低電圧の条件では、リモートセンスが必要になります。
・ロードレギュレーションと負荷過渡応答
下の2つの波形グラフは、負荷電流を急激に変化させた場合の出力電圧の変化を示しています。ここで注意してほしいのは、このような評価方法では、ロードレギュレーションと負荷過渡応答の両方を見ていることです。この項で説明しているロードレギュレーションは、波形の定電圧部分の電圧値になります。これは分けて考える必要があり、対策も異なります。
左の波形はリモートセンスがされてない場合で、上の軌跡が出力電圧、下が出力電流です。負荷電流がほぼゼロから瞬時に増加すると、瞬時に対応できないため一瞬電圧が下がりますが短時間で追従して一定電圧になります。これは負荷過渡応答特性です。ロードレギュレーションは一定になった電圧を評価し、この場合は電圧降下が発生していることがわかります。右の波形はリモートセンスされているものです。定電圧部分にほとんど差異は見られません。
以下に、ロードレギュレーションの評価ポイントをまとめます。
ロードレギュレーションの評価ポイント
- 評価項目
-負荷電流の変動に対する出力電圧の変動 → 変動した電圧が要求精度を満足するか
※負荷電流変動に対するリップル電圧の変化、波形の異常も確認する - 評価方法
-電圧計で出力電圧を測定 → 負荷デバイスの電源電圧が十分か負荷デバイス電源端子の電圧を測る
-オシロスコープで出力電圧、波形を観察 - 条件設定
-負荷電流:可変タイプの負荷装置が必要
-温度:簡易的にはスポット的な加熱/冷却でも可
【資料ダウンロード】スイッチングレギュレータの特性と評価方法
このハンドブックは、スイッチングレギュレータの基本を確認し、スイッチングレギュレータ用ICのデータシートを読み解くことも併せて、設計の最適化に必要なスイッチングレギュレータの特性の理解と評価の方法を解説しています。
DC-DCコンバータ
- 基礎編
- 設計編
-
評価編
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
-
損失の検討
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- 応用編
- 製品紹介
- FAQ