DC-DCコンバータ|評価編
スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
2015.02.27
この記事のポイント
・スイッチングレギュレータの特性を評価するには、測るべきポイントを知り、測定スキルも必要。
・出力電圧の評価においては、諸条件を変えながらオシロスコープでリップルやノイズなどを観察する。
・比較する基準としてはデータシートのグラフや評価ボードを利用する。
この項から新章「スイッチングレギュレータの評価」に入ります。「スイッチングレギュレータの基本」、「電源ICのデータシートの読み方」の2つの章は、スイッチングレギュレータを実際に評価するために必要な基礎知識という位置付けです。ここからは、実際の回路動作や特性について、「何をどう見るのか」という話をしていきます。
以下は、今後の予定も含めたインデックスです。既存の項にも「スイッチングレギュレータの評価」に関係する内容が多くありますので、参照いただければと思います。
それでは、「スイッチングレギュレータの評価」の1項目、「出力電圧」についての説明から始めます。
出力電圧
スイッチングレギュレータの仕事は、安定化された出力電圧を発生させることで、それを負荷(他のデバイス)の電源とすることが期待されます。したがって、当たり前ではありますが、出力特性の評価が主要事項となります。主な出力特性として、電圧、電流、過渡応答、ノイズなどがありますが、これらには相互関係があります。この項では、まず出力電圧について説明します。
一般的に出力電圧の評価ポイントは以下になります。
・評価項目
-電圧精度:リップル電圧を含んだ最小値、最大値
-リップル電圧の大きさ:電圧幅、波形
-高調波ノイズ、スパイクなど
・評価方法
-オシロスコープで出力電圧を観察
-(スペクトラムアナライザ)
・条件設定
-出力負荷電流:可変タイプの負荷装置が必要
-入力電圧:可変タイプのDC電源が必要
-温度:簡易的にはスポット的な加熱/冷却でも可
具体的には、条件を変えながらオシロスコープで出力電圧を観察することになります。状況によってはスペクトラムアナライザが有効なことがありますが、オシロスコープだけでもほとんどの確認が可能です。ここで大事なのは、オシロスコープで観察するということです。本来オシロスコープは正確な電圧測定を行うものではありませんが、スイッチングレギュレータの出力電圧にはリップルやノイズなど様々な成分が含まれており、これらは測定値を平均化して表す電圧計などでは確認することはできません。
電圧精度は、リップル電圧の最低値と最大値が、負荷デバイスが要求する精度内に入っているかどうかを確認します。FPGAなど昨今の高性能デバイスは±2%以下といった非常に厳しい電源電圧精度を要求します。さらに電源電圧が1V台と低いものが多く、実際の許容電圧はわずかです。これを平均値ではなく、リップル電圧のピーク幅を含んで満足する必要があります。
リップル電圧は、設計時に下記に式で設定した電圧になっているか、リップル波形に異常がないかといった点を確認します。
もちろん、リップル電圧が設計通りでも、結果的に負荷デバイスの精度要求を満たさなければ見直しが必要になります。同様に出力に異常なスパイクや高調波が含まれていないか観察します。
これらの特性は負荷や温度に依存して状態が変わりますので、必ず変動要因を加味して観察を実施してください。
評価には、出力電圧および波形がどうなっているべきかという見本が必要になります。多くの場合、その電源ICのデータシートに標準的かつ理想的な波形が掲載されています(下図参照)。これに関しては「電源ICのデータシートの読み方」でも触れました。
また、ICメーカーが評価ボードを提供している場合は、それとの比較を行うことが可能です。同じ測定器や環境で評価ができるので現実的で良い方法です。
オシロスコープでの観察に関して、高速の波形を扱う観点から若干の注意が必要です。下記の写真とグラフは、同じ基板でもプローブの当て方で正しい波形が観察できなくなる例です。
左の写真と波形グラフは、オシロスコープのプローブでテストターミナルに接続しクリップでGNDを取ったもので、出力波形に多数の高周波スパイクが見られます。一方右の写真とグラフはプローブを専用のコネクタを用いて接続したものです。こちらには、スパイクは見られません。本来の出力電圧は右の波形で、左の波形はプローブのグランドワイヤなどの影響により、本来存在しないスパイクを発生させている例です。
このようにスイッチング電源の評価に当たっては、高周波を扱う、測定するためのスキルが必要になります。
【資料ダウンロード】スイッチングレギュレータの特性と評価方法
このハンドブックは、スイッチングレギュレータの基本を確認し、スイッチングレギュレータ用ICのデータシートを読み解くことも併せて、設計の最適化に必要なスイッチングレギュレータの特性の理解と評価の方法を解説しています。
DC-DCコンバータ
- 基礎編
- 設計編
-
評価編
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
-
損失の検討
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- 応用編
- 製品紹介
- FAQ