電源設計の技術情報サイト

技術資料ダウンロード

DC/DC

スイッチングレギュレータの特性と評価方法

電源ICのデータシートの読み方:電気的特性の勘所

「電源ICのデータシートの読み方」として、「データシートの表紙」、「ブロック図」、「絶対最大定格と推奨動作条件」に続いて、この項では「電気的特性の勘所」について説明します。

いずれも、スイッチングレギュレータの特性と評価方法を理解する上で、電源ICのデータシートを読み解くことが非常に重要あるというのが主旨です。

・電気的特性の勘所
データシートには、ICの特性とその保証値が示されている規格値表が必ずあります。設計はこの特性値を使って行いますが、残念ながらありとあらゆる条件で特性値を示すことは不可能です。したがって、特性値は定められた電源電圧、温度などの条件の下で規定されています。そして多くは、その条件での値、例えばTa=25℃の値であって、Ta=25.1℃の値ではありません。しかしながら、実使用条件にはTa=25℃ちょうどというのは当然のことながらあり得ず、機器の起動時には室温ですが時間が経つにつれ筐体内は50℃に上がる、といった例は珍しくはありません。

つまり、規格値表の値は、どの条件での値なのか、さらには、最小値、最大値といった保証値なのか、標準値(typ)なのかということを理解し、それを加味した上で使う値なのです。以下に、規格値表の参考例を示します。赤い矢印のところで条件が定められています。これらの条件下で、記載の値は保証されますが、少しでも条件が違うと保証されません。この例では、温度条件はTa=25℃ですが、温度の場合は比較的規定の全動作温度範囲での保証値が提示されている場合があります。その場合は、もちろん全温度範囲での保証値を参照します。

8D_spec_1

◆規格値表には、設計に欠かせない特性値が示されている

  • 保証値の条件(赤矢印)には注意。自分の使う条件となるべく近似の条件の値を参照するか、グラフを利用
  • ほとんどの規格値が指定条件での一点値なので、温度や電源電圧など変動要件がある場合は必ずグラフで確認
  • 規格値欄の最小/最大値は保証値。標準(Typ)は保証値ではない
  • 設計には標準値を参照しても良いが、最悪条件(最少/最大値)での検証は必須

次は、ICの特性値と応用回路の特性値の関係について考えるべきことについて述べます。電源ICの規格値は、そのままそのICを使った電源の特性値にはならないということを理解する必要があります。

一例を示します。出力電圧を設定する基準となるFB端子電圧(リファレンス電圧と呼ぶメーカーもある)は、基本的に最大値と最小値が規定され保証されています。出力電圧を決める大事な特性値ですので、当たり前と言えば当たり前です。

昨今のスイッチング電源用ICは、FB端子電圧の精度は±1%といった高精度なものが多いのですが、分圧抵抗を接続して出力電圧を設定すると(そうする仕様になっている)、残念ながら出力精度は±1%を保証できません。もっと単純な話をすれば、抵抗値とFBピン電圧の公称値を使って計算した出力電圧は、抵抗とFBピン電圧の許容差がある限り、偶然を除いて絶対に計算値通りにはなりません。以下に、±1%精度の抵抗を使い、FBピン電圧の精度が±1%の場合の、出力電圧の誤差の例を示します。

◆規格値=電源特性(性能) になるわけではない例

出力電圧の精度は以下を含む
・FB電圧の誤差:±1%
・抵抗の公差:精度(例±1%)+系列から近似値の選択(計算通りの抵抗値があるとは限らない)

8D_spec_2

8D_fb_vout

つまり、出力電圧精度±1%の電源を作りたい場合に、FBピン電圧の精度が±1%の電源ICを選択すると、出力電圧精度±1%は保証できないということになります。「それは、ワーストケースで計算した場合で、標準値(typ)では±1%に入るよ」という意見もあるかもしれませんが、厳密な保証が求められる場合は「できない」とすべきです。

このように、規格値はあくまでもICの特性値であって、回路として構成した場合にそれが反映されるのですが、そのままの値や特性が得られるわけではないことを知っておく必要があります。

キーポイント

・電源設計のためには電源ICのデータシートを読み解くことが必要。
・ICの規格値と電源回路としての特性値は直接的に一致しない。
・すべての特性が規格値化されているわけではない。
・グラフや波形が規格値にない特性を補足してる場合があるので必ずチェックする。


スイッチングレギュレータの特性と評価方法