DC-DCコンバータ|設計編
グランド
2016.08.02
この記事のポイント
・AGNDとPGNDは分離する必要があり、PGNDは分断することなくトップレイヤーにレイアウトすることが基本。
・PGNDを分断してビアを介して裏面で接続すると、ビアの抵抗やインダクタの影響で損失やノイズが悪化する。
・コモングランドや信号グランドとPGNDの接続は、スイッチングノイズが少ない出力コンデンサ付近のPGNDで行う。
今回は、グランド配線のレイアウトについてです。グランド配線は多くの部品のそれぞれに必要な配線であることから、そのレイアウトには思慮が必要です。また、DC-DCコンバータ回路においては、制御回路につながる出力電圧の帰還などの信号系と、大きな電流をスイッチするスイッチ(パワー)系の分離が重要なことは各項で説明してきたとおりで、これはグランド配線についても同様です。
アナログ小信号グランドとパワーグランド
グランドは、電位としては同電位なのですが、アナログ信号とデジタル信号が混在する回路(昨今ではほとんどですが)では、アナロググランドとデジタルグランドを別個に設け、デジタル信号に起因するノイズが微小なアナログ信号に伝導しないようにする手法が取られます。スイッチング電源回路(DC-DCコンバータに限りません)においても考え方は同様で、例えば、ラインの電圧値が直接的に出力精度につながる帰還経路は、スイッチノードに発生するノイズの影響が最小限になるような配慮が必要です。
呼称はいくつかあるかと思いますが、ここでは、帰還経路のようなノイズを嫌うラインに関連するグランドをアナログ小信号グランド(AGND)と呼び、スイッチノードなど大きな電流がスイッチするラインに関連するグランドをパワーグランド(PGND)と呼ぶことにします。
最も重要なこととして、AGNDとPGNDは分離されていなくてはなりません。同じで電位であり、最終的には接続するのですが、スイッチングにより大きな電流がリターンするGNDと、制御信号のGNDを分けて干渉を防ぐという考え方です。
次に、基本的には、PGNDはトップレイヤーにひとつなぎでレイアウトします(Figure 8の左)。しかしながら、部品の配置などの関係で、どうしてもひとつなぎにできない場合があると思います。そのような場合に、PGNDを分断しビアを介して裏面や内層を利用して接続すると(Figure 8の右)、ビアの抵抗やインダクタンスの影響で、損失の増加やノイズが悪化する可能性があるので、実機で十分な検証をしてください。
グランドプレーン
- AGNDとPGNDは分離する必要がある。
- PGNDは分断することなくトップレイヤーにレイアウトすることが基本。
- PGNDを分断してビアを介して裏面で接続すると、ビアの抵抗やインダクタの影響で損失やノイズが悪化する。
グランドプレーンは、ある程度の面積をもったGND配線のことですが、裏面や内層にグランドプレーンを設けるのは、基本的にDC損失の軽減、シールド、放熱が目的であって、GNDとしてはあくまで補助的な役割であることを最初に理解してください。
多層基板で内層や裏面にグランドプレーンを配置する場合は、高周波スイッチングノイズが多い入力やダイオードのPGNDとの接続に注意を払う必要があります。Figure 9のように、3 層目にコモングランド、4 層目に信号グランドがある場合、それらとPGNDの接続は、高周波スイッチングノイズが少ない出力コンデンサ付近のPGNDに行います。ノイズが多い入力やダイオード付近のPGNDで接続してはいけません。
2 層目に DC 損失軽減のためのPGNDプレーンがある場合、トップレイヤーのPGNDと 2 層目を多数のビアで接続し、PGNDのインピーダンスを小さくする必要があります。
- 多層基板で内層や裏面にグランドプレーンを配置する場合は、高周波スイッチングノイズが多い入力やダイオードのPGNDとの接続に注意を払う必要がある。
- トップレイヤーのPGNDと内層PGNDプレーンの接続は、DC 損失軽減のため多数のビアで行いインピーダンスを下げる。
- コモングランドや信号グランドとPGNDの接続は、高周波スイッチングノイズが少ない出力コンデンサ付近のPGNDで行い、ノイズが多い入力やダイオード付近のPGNで接続してはいけない。
ところで、多くのDC-DCコンバータICが、AGND(SGND)とPGNDの2つのGND端子を備えているのはご存じかと思います。これは、まったく同じ理由でIC内部においても信号系とスイッチ(パワー)系が分離されているためです。また同様に同じ電位である必要があるので、最終的には接続します。ICのAGNDとPGNDは1点で接続することが重要で、最適なポイントはデータシートのレイアウト情報などを参考にしてください。