DC-DCコンバータ|設計編
インダクタの配置
2016.05.10
この記事のポイント
・インダクタは、なるべくICの近くに配置する。
・銅箔面積を必要以上に広くしてはいけない。
・インダクタの直下にGND層を配置してはいけない。信号線の配置も極力避ける。
・インダクタ端子の配線を近付け過ぎない。
前回は「サーマルビアの配置」ということで、基板と構造を利用した放熱について説明しました。今回は部品の話に戻り、「インダクタの配置」について説明します。
インダクタ
最初にレイアウトに関連するインダクタの特性について少しおさらいをします。
インダクタに電流が流れると磁力線が発生します。この磁力線が導体、PCBであれば銅箔を通過すると、その部分に渦電流が発生します。つまり、インダクタの近くに導体があると、渦電流によって問題が発生する場合があります。渦電流が磁力線を打ち消す方向に流れるのでインダクタンスが減少したり、Qが低下(損失が増加)したりします。ちなみにQとは、インダクタの損失量を表すパラメータの一つで、「Qが大きい=損失が少ない」ということを表します。その他に、インダクタの近くの銅箔が信号線の場合は、渦電流によって信号にノイズが伝搬することがあり回路動作に悪影響が及ぶ可能性があります。
もう一つあります。インダクタは発熱する部品です。インダクタに電流が流れると、巻線の抵抗成分と他の損失により発熱します。インダクタが高温になると部材に劣化の他に、フェライトコアの場合はキュリー温度を超えると急激にインダクタンスが減少することはよく知られていると思います。目安として、電流定格や抵抗値のスペックが提示されており、実装においては放熱を考慮する必要があります。
これらを念頭に置きながら、以下のポイントを確認してください。
インダクタの配置
インダクタは、スイッチングノードからの輻射ノイズを最小限にするため、入力コンデンサほどではありませんが、なるべくICの近くに配置してください。
配線抵抗の低減と放熱のために銅箔面積を広く取りすぎると、銅箔がアンテナとして働くことがありEMIが増加するので、銅箔面積を必要以上に広くしてはいけません。
EMIの観点から配線面積を考慮したレイアウトをFigure6-aに、必要以上に広い配線を配置した良くないレイアウトをFigure6-bに示します。
具体的な配線幅の決定には、電流耐量を一つの目安にすることができます。Figure 5に、ある電流を流したときの導体幅と自己発熱による温度上昇のグラフを示します。
例えば2Aの電流を導体厚35μmの配線に流した場合、20℃の温度上昇に抑えるためには0.53mmの導体幅で対応できます。ただし、配線は周辺部品の発熱や周囲温度の影響を受けるため、十分なマージンをもたせることが必要です。例えば1オンス(35μm)基板では1Aあたり1mm幅以上、2オンス(70μm)基板では1Aあたり0.7mm幅以上にすることを推奨します。
インダクタ周辺の配線ですが、インダクタの直下にGND層を配置してはいけません(Figure 6-c)。これは、先に説明した通りで、磁力線が導体であるGND層を通過し渦電流が発生することにより、磁力線の打ち消し効果でインダクタ値の低下やQの低下(損失の増加)が発生します。
GND以外の信号線でも、渦電流により信号にスイッチングノイズが伝搬する可能性があるので、インダクタ直下の配線はとにかく避けてください。やむを得ず信号線を配線する場合は、磁力線の漏れが小さい閉磁路構造のインダクタを使用してください。ただし、問題が発生していないか実測することは必須です。
また、インダクタ端子の配線間のスペースにも注意が必要です。Figure 6-dの様に端子の配線間の距離が近いと、スイッチングノードの高周波信号が浮遊容量を介して出力へ容量誘導されます。
インダクタに限ったことではありませんが、部品の配置や配線の引き回しに制約が生じることが多々あります。しかしながら、押さえるべきポイントをしっかりとレイアウト設計に盛り込むことは非常に重要です。理想から離れた場合には、必ず実測をして問題の有無を確認する必要があります。