DC-DCコンバータ|設計編
補足-入力コンデンサの選択
2019.01.15
この記事のポイント
・入力コンデンサはリップル低減用の大容量のコンデンサに加えて、高周波ノイズ低減用のデカップリングコンデンサとの組み合わせになる場合が多い。
・入力コンデンサはICのVIN端子にできるだけ近づけて配置し、デカップリング用コンデンサをVIN側に配置する。
この記事は、「DC-DCコンバータのインダクタとコンデンサの選定」の記事「入力コンデンサの選定」に関する補足です。
入力コンデンサの選択-補足
前記事では入力コンデンサの選定ために、入力コンデンサと出力コンデンサの役割をおさらいし、入力コンデンサを選択するためのポイントと、電圧およびリップル電流の定格、リップル発熱特性、セラミックコンデンサの温度特性とDCバイアス特性について説明しました。
ここでは、多くの実際の回路における入力コンデンサが、前記事で説明した主たるCINに加えてCBYPASSと呼ばれる高周波ノイズ低減を目的としたコンデンサとの組み合わせになっていることから、CBYPASSに関する説明を追加します。
入力コンデンサCBYPASSの役割
しかし実際の入力には、本来の入力電流のオンオフによるリップルだけではなく、スイッチングにともなう高周波の電流遷移が電圧スパイクやノイズとなって現れます。これらはノイズとして他に悪影響を与えるため低減する必要があります。下図は、入力における電流の遷移に対するリップルとノイズの関係を示しています。
この様な理由から、入力にはスイッチング周波数のリップルと高周波ノイズの、2つの帯域のノイズが存在します。
前述のようにCINは、主にリップル電圧の低減を目的とするため比較的静電量容量が大きなコンデンサになります。ところが、一般的にCINに適切なコンデンサは高周波数帯域でのインピーダンス特性が悪く、リップル電圧の低減には効果を発揮しても高周波ノイズを十分に低減することはできません。したがって、より高い周波数帯域でインピーダンスが低いコンデンサを追加して対処することになります。このコンデンサはCINと区別する意味でCBYPASSと呼んでいます。一般には0.1μFほどのセラミックコンデンサが利用されます。この趣旨は、よく言うところの「高周波ノイズ低減用のデカップリング(またはバイパス)コンデンサ」と同じです。
下図は、CINとCBYPASSをともなう回路例でC2がCIN、C4がCBYPASSです。また、例としてCIN=22μF、CBYPASS=0.1μFのインピーダンス特性を示します。入力としては、2つのコンデンサの合成インピーダンス特性が得られます。
もし、入力コンデンサが比較的静電容量が小さくて済む場合には、セラミックコンデンサ1個でCINとCBYPASSを兼用できる場合があります。ただし、そのコンデンサのインピーダンス特性と発生しているリップルとノイズの周波数を確認する必要があります。
基板上での配置に関する注意
入力コンデンサは、できるだけICのVIN端子に近づけて配置するのは基板レイアウトの大原則です。配置が離れるとその距離に応じた基板配線の寄生インダクタンスを介することになり、インダクタンスと急峻な電流のオンオフによって思わぬ大きさのスパイク電圧が発生することはよく知られています。
また。静電容量の小さいコンデンサをノイズ源に近い方に配置するのも原則です。この場合はVIN(PVIN)端子がノイズ源に当たるので、回路図のようにICのPVINから見てCBYPASS(C4)、CIN(C2)の順で配置します。CINは小さな積層セラミックコンデンサになることが普通なので、ICのVIN端子の極近傍に配置しやすいかと思います。