AC-DC コンバータ|設計編
同期整流回路部:周辺回路部品の選定-DRAIN端子のD1、R1、R2
2019.06.25
この記事のポイント
・BM1R00147Fは、DRAIN端子の電圧によって二次側MOSFET M2のゲートを制御する。
・DRAIN端子の検出レベルは数mVと低く、MOSFET M2のスイッチング時のわずかなサージ電圧を誤検出してしまう。
・対策として、DRAIN端子にサージを吸収するための抵抗とダイオードを付加する。
前回は同期整流部の設計のスタートして、設計に使う電源ICを決定しました。続いて、選択した電源IC、BM1R00147Fの周辺回路部品の選定に入ります。今回は、DRAIN端子のD1、R1、R2です。
同期整流回路部:周辺回路部品の選定-DRAIN端子のD1、R1、R2
DRAIN端子にサージ対策がない場合の回路と波形図の例を示します。
VDS2の波形(水色)には、立ち上がりにサージ(もしくはスパイク)が発生しています。これによって誤検出を起こし、VGS2(赤紫)が本来必要な時間より短い時間でOFFしています。
以下は、このサージ対策として、DRAIN端子にD1、R1、R2を付加した回路と波形図の例です。
D1、R1、R2によってサージが抑制されたことでVDS2は正常に検出され、VGS2も正常な波形になっています。
これで、D1、R1、R2を挿入する目的と効果が理解できたと思いますので、各々の具体的な定数設定について説明します。
■ダイオードD1
ダイオードD1は、MOSFETがON時の電流経路になります。回路図では単にダイオードの記号になっていますが、順方向電圧Vfが低い小信号ショットキーバリアダイオード(SBD)を選定してください。また、DRAIN端子はインピーダンスが高いため、D1にはVDS2以上の耐圧は必要なく、低耐圧品を選定することが可能です。この設計事例ではROHM製RB751VM-40(VR=30V、IO=30mA、Vf MAX=0.37V)を選定します。
■R1
R1はVDS2検出フィルタ用抵抗になります。300Ω~2kΩ程度を挿入してください。VDS2の波形、およびVGS2の波形を確認しながら選定します。この設計事例では1kΩとします。なお、R1の定数設定の詳細は別途説明を予定しています。
■R2
R2は電流制限抵抗になります。二次側MOSFET M2に電流IFET2が流れ始める瞬間、二次側MOSFET M2はOFF状態のため、IFET2は二次側MOSFET M2のボディダイオードを流れるので、VDS2=-Vf_M2(MOSFET M2のボディダイオードのVf)となります。ICのDRAIN端子は負電圧になるため、ICから電流Idが流れ出ます。(下図参照)
R2はICの保護のため、この時に流れる電流Idが6mA以下になるように選択します。R2は下記の式から算出できます。
MOSFET M2のボディダイオードのVfの最大値であるVf_M2 MAXを1.2V、D1のVf最小値Vf_D1_MIN=0.2V、
IC内部ESDダイオードのVf最小値Vf_ESD_MIN=0.4Vとした場合、R2>100Ωとなります。
マージンを考慮し、150Ωを選定します。
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