AC-DC コンバータ|設計編
トランスT1の設計 その1
2017.08.17
この記事のポイント
・トランスT1のコアサイズ、一次側インダクタンス、各巻数を手順に則り計算する。
・設計編第一弾の「絶縁型フライバックコンバータ回路設計」とほぼ同じ考え方で算出できる。
今回からここの回路定数などを算出して具体的な設計に入ります。最初はトランスT1の設計です。算出手順は以下となります。これは、「絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(数値算出)」とほぼ同じ考え方なので、こちらも参照してください。
- ①フライバック電圧VORの設定
- ②一次側巻線インダクタンスLp、一次側の最大電流Ippkの算出
- ③トランスサイズの決定
- ④一次側巻線数Npの算出
- ⑤二次側巻線数Nsの算出
- ⑥VCC巻線数Ndの算出
トランス設計のために導出しなければならないパラメータは、「コアサイズ」、「Lpのインダクタンス」、「Np/Ns/Ndの巻数」になります。
また、T1に与えられる条件は、出力24V1A、VIN(DC)=300V~900Vです。
回路図は、都度、前回示したものを参照願います。
①フライバック電圧VORの設定
フライバック電圧VORは、VO(二次側Vout+二次側ダイオードDN1のVF)に、トランスの巻線比Np:Nsを掛けた値です。VORを決定して、巻数比Np:NsおよびDuty比を求めます。基本式と例を示します。(回路図ではDN1の記載が抜けていますが、T1の二次側に接続されている2個のダイオードがDN1です)
VORは、MOSFETの損失等を考慮して、Dutyが0.5以下になるようにVORを設定してください。グラフはMOSFETのVds波形です。
②一次側巻線インダクタンスLp、一次側の最大電流Ippkの算出
最低入力時(VIN=300V)の最低発振周波数 fsw=92kHzとします。また、他のパラメータは以下とします。
- ・Po=24V X 1A=24W より、過負荷保護等を考慮して、
Po(max)=30W(ディレーティング:0.8) - ・トランス変換効率η=85%
- ・共振用コンデンサ容量Cv=100pF
③トランスコアサイズの決定
Po(max)=30Wから、少しマージンを取ってトランスのコアサイズはEFD30を選びます。以下の表は、出力電力Poに対して適切とされるコアサイズの目安です。詳細はトランスメーカー等に確認ください。
これで、必要な、「コアサイズ」、「Lpのインダクタンス」が決まりました。「Np/Ns/Ndの巻数」は次回に算出します。
トランス設計に必要なパラメータ
トランスコアサイズ | EFD30(または互換品) |
---|---|
Lp(一次側巻線インダクタンス) | 1750μH |
Np(一次側巻線数) | (次回) |
Ns(二次側巻線数) | (次回) |
Nd(VCC巻線数) | (次回) |
AC-DC コンバータ
- 基礎編
-
設計編
-
AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
- 絶縁型フライバックコンバータの基本とは
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:スイッチングAC-DC変換とは
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:フライバックコンバータの特徴とは
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:フライバックコンバータの動作とスナバ
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:不連続モードと連続モードとは
- 設計手順
- 電源仕様の決定
- 設計に使うICの選択
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(構造設計)-その1
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(数値算出)
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(構造設計)-その2
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-MOSFET関連 その1
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-MOSFET関連 その2
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-CINとスナバ
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-出力整流器とCout
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-ICのVCC関連
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-ICの設定、その他
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:EMI対策および出力ノイズ対策
- 基板レイアウト例
- AC-DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法 ーまとめー
- AC-DC 非絶縁型バックコンバータの設計事例概要
-
AC-DCコンバータの効率を向上する二次側同期整流回路の設計
- 設計手順
- 設計に使うIC
- 電源仕様と置き換え回路
- 同期整流回路部:同期整流用MOSFETの選定
- 同期整流回路部:電源ICの選択
- 同期整流回路部:周辺回路部品の選定-MAX_TON端子のC1とR3、およびVCC端子
- 同期整流回路部:周辺回路部品の選定-DRAIN端子のD1、R1、R2
- シャントレギュレータ回路部:周辺回路部品の選定
- トラブルシューティング①:二次側MOSFETがすぐにOFFしてしまう場合
- トラブルシューティング ②:軽負荷時に二次側MOSFETが共振動作によりONしてしまう場合
- トラブルシューティング ③:サージの影響を受けVDS2が二次側MOSFETのVDS耐圧以上になる場合
- ダイオード整流と同期整流の効率比較
- 実装基板レイアウトに関する注意点
- AC-DCコンバータの効率を向上する二次側同期整流回路の設計 ーまとめー
-
SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例
- 設計に使う電源IC:SiC-MOSFET用に最適化
- 設計事例回路
- トランスT1の設計 その1
- トランスT1の設計 その2
- 主要部品選定:MOSFET Q1
- 主要部品選定:入力コンデンサおよびバランス抵抗
- 主要部品選定:過負荷保護ポイントの切り替え設定抵抗
- 主要部品選定:電源ICのVCC関連部品
- 主要部品選定:電源ICのBO(ブラウンアウト)ピン関連部品
- 主要部品選定:スナバ回路関連部品
- 主要部品選定:MOSFETゲートドライブ調整回路
- 主要部品選定:出力整流ダイオード
- 主要部品選定:出力コンデンサ、出力設定および制御部品
- 主要部品選定:電流検出抵抗および各検出用端子関連部品
- 主要部品選定:EMIおよび出力ノイズ対策部品
- 基板レイアウト例
- 事例回路と部品リスト
- 評価結果:効率とスイッチング波形
- SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例 ーまとめー
-
AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
- 評価編
- 製品紹介
- 動画
- FAQ