AC-DC コンバータ|設計編
設計事例回路
2017.07.21
この記事のポイント
・擬似共振方式は、トランス一次巻線のインダクタと共振コンデンサの電圧共振を利用した自励式のフライバックコンバータ。
・擬似共振方式によりスイッチング損失やノイズを低減することができる。
前回は設計に使う電源ICについて説明しました。今回は、設計事例の回路について説明します。
擬似共振方式
前回説明したように、電源ICは、SiC-MOSFET駆動用AC-DCコンバータ制御ICであるBD7682FJ-LBを使います。変換回路は擬似共振方式で、トランス一次巻線のインダクタと共振コンデンサの電圧共振を利用した自励式のフライバックコンバータで、一般的にPWMフライバックコンバータよりも損失とノイズを下げることが可能です。
基本はフライバックコンバータですので、MOSFETのオン期間にトランスに蓄積したエネルギーを、オフ期間に二次側に伝送します。この動作はPWMフライバックコンバータでも同じですが、擬似共振方式ではトランスがエネルギーを放出した後に、トランスの一次巻線インダクタンスと共振コンデンサの容量によって共振による電圧振動が起こります。そして、その電圧振動を利用し、Vdsのボトム電圧をICが検知し次のオンを行います。このタイミングでのオンは、トランスに流れる電流はゼロでドレイン電圧も低いことから、スイッチング損失やノイズを低減することができます。これが擬似共振方式のメリットになります。
ちなみに、この動作により擬似共振コンバータのスイッチング損失は、基本的にオン時は発生せずオフ時の損失が支配的になります。
もう一つの動作の特徴として、軽負荷時には不連続動作となり、負荷の上昇とともにスイッチング周波数が上昇します。その後、ある負荷電流を境(臨界点)に臨界動作となり、この状態では負荷の上昇とともにスイッチング周波数が減少します。負荷によりスイッチング周波数が変動するので、一種のPFMコンバータといえます。
24V/1A絶縁型擬似共振コンバータの設計事例回路
設計事例の入出力条件と回路図を示します。この条件をもとに回路部品の定数を計算していきます。
出力:24V、1A(24W)
入力:300~900VDC(400~690VAC)
入力に関しては、DC電圧入力とAC電圧入力の両方をもたせますが、AC入力電圧を整流した以降はDC電圧ですので、DC入力電圧値をもとに定数設定をしていきます。
回路図はクリックで拡大します。
AC-DC コンバータ
- 基礎編
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設計編
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AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
- 絶縁型フライバックコンバータの基本とは
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- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-CINとスナバ
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AC-DCコンバータの効率を向上する二次側同期整流回路の設計
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- 同期整流回路部:周辺回路部品の選定-DRAIN端子のD1、R1、R2
- シャントレギュレータ回路部:周辺回路部品の選定
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- 主要部品選定:出力整流ダイオード
- 主要部品選定:出力コンデンサ、出力設定および制御部品
- 主要部品選定:電流検出抵抗および各検出用端子関連部品
- 主要部品選定:EMIおよび出力ノイズ対策部品
- 基板レイアウト例
- 事例回路と部品リスト
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AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
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