AC-DC コンバータ|設計編
主要部品の選択:出力整流ダイオード D4
2016.11.15
この記事のポイント
・通常、出力整流ダイオードは、スイッチングが高速なタイプを使う。今回はファストリカバリダイオードを使用。
・出力整流ダイオードは、基本的に耐圧と損失の検討により選択する。
今回は、出力整流ダイオードの選択について説明します。
出力整流ダイオード D4
出力整流ダイオードは、キャッチダイオードまたはフリーホイールダイオードとも呼ばれます。また、同期整流型では、このダイオードはトランジスタに置き換えられて、ローサイドスイッチなどと呼ばれる部分です。
右の回路図が示す通り、出力ダイオードD4は出力からGNDに接続されます。ハイサイドのMOSFETがオフすると、インダクタに蓄えられたエネルギーがD4通じて出力されます。
出力ダイオードの定数算出
出力整流ダイオードは、スイッチング周波数でオンオフするので、高速なスイッチングが可能なファストリカバリダイオードを使用します。検討することは、耐圧と損失になります。
出力ダイオードに印加される逆電圧は、マージンを考慮して以下とします。
Vdr = VIN (max)÷0.7 = 372V÷0.7 = 531V → 600V とする
ダイオードの損失は、概算になりますが、以下になります。
Pd = VF×Iout = 1V×0.2A = 0.2W
ダイオードは 回路図に指定があるように、RFN1L6Sを使います。
以下は、ファストリカバリダイオード RFN1L6Sの規格値表とVF-IF特性です。今回は回路例があるので、実際にダイオードを探す作業は必要ありませんが、せっかくなので、検索か何かで、600V耐圧で0.2A以上流せるダイオードとして、このRFN1L6Sがヒットしたとして検討してみましょう。
耐圧として、VR、VRMともに600Vが最大定格ですので、算出した値に合致します。IOは0.8Aなので、能力的には実際のIoutの0.2Aに対してかなり余裕がありますが、許容電力を考えるとこのくらいの余裕があってもよいかと思います。また、設計仕様にぴったりなバリエーションがあるとは限りません。というよりも、ちょうどいいことの方がすくないかもしれません。いずれにしても、近似で余裕のある側のもので妥協する必要はあります。
そして、VFーIF特性を載せたのは、計算ではVFを1Vとしましたが、スペックでは最大1.45V、Typ 1.15Vが規定されているので、「1Vで計算してよいのか?」という疑問をもった方への説明のためです。VFの条件としてIF=0.8Aとなっています。実使用時のIFは0.2Aなので、グラフから0.2A時のVFを求めると、最悪の温度条件でも1V以下であることがわかります。つまり、この算出は実際の条件に近い数値を使った計算になっています。
どこまでマージンを取るかというのは、経験則によることになります。あまりマージンを取り過ぎると過剰な設計になり、コストやサイズがかさむことがあり判断は難しいのは事実です。やはり経験を積むことになります。
経験則の話をしましたが、実際に使用する条件において、損失とジャンクション温度を確認することは必須です。
【資料ダウンロード】非絶縁型バックコンバータの設計事例
AC-DC コンバータ
- 基礎編
-
設計編
-
AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
- 絶縁型フライバックコンバータの基本とは
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:スイッチングAC-DC変換とは
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:フライバックコンバータの特徴とは
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:フライバックコンバータの動作とスナバ
- 絶縁型フライバックコンバータの基本:不連続モードと連続モードとは
- 設計手順
- 電源仕様の決定
- 設計に使うICの選択
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(構造設計)-その1
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(数値算出)
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:トランス設計(構造設計)-その2
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-MOSFET関連 その1
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-MOSFET関連 その2
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-CINとスナバ
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-出力整流器とCout
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-ICのVCC関連
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-ICの設定、その他
- 絶縁型フライバックコンバータ回路設計:EMI対策および出力ノイズ対策
- 基板レイアウト例
- AC-DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法 ーまとめー
- AC-DC 非絶縁型バックコンバータの設計事例概要
-
AC-DCコンバータの効率を向上する二次側同期整流回路の設計
- 設計手順
- 設計に使うIC
- 電源仕様と置き換え回路
- 同期整流回路部:同期整流用MOSFETの選定
- 同期整流回路部:電源ICの選択
- 同期整流回路部:周辺回路部品の選定-MAX_TON端子のC1とR3、およびVCC端子
- 同期整流回路部:周辺回路部品の選定-DRAIN端子のD1、R1、R2
- シャントレギュレータ回路部:周辺回路部品の選定
- トラブルシューティング①:二次側MOSFETがすぐにOFFしてしまう場合
- トラブルシューティング ②:軽負荷時に二次側MOSFETが共振動作によりONしてしまう場合
- トラブルシューティング ③:サージの影響を受けVDS2が二次側MOSFETのVDS耐圧以上になる場合
- ダイオード整流と同期整流の効率比較
- 実装基板レイアウトに関する注意点
- AC-DCコンバータの効率を向上する二次側同期整流回路の設計 ーまとめー
-
SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例
- 設計に使う電源IC:SiC-MOSFET用に最適化
- 設計事例回路
- トランスT1の設計 その1
- トランスT1の設計 その2
- 主要部品選定:MOSFET Q1
- 主要部品選定:入力コンデンサおよびバランス抵抗
- 主要部品選定:過負荷保護ポイントの切り替え設定抵抗
- 主要部品選定:電源ICのVCC関連部品
- 主要部品選定:電源ICのBO(ブラウンアウト)ピン関連部品
- 主要部品選定:スナバ回路関連部品
- 主要部品選定:MOSFETゲートドライブ調整回路
- 主要部品選定:出力整流ダイオード
- 主要部品選定:出力コンデンサ、出力設定および制御部品
- 主要部品選定:電流検出抵抗および各検出用端子関連部品
- 主要部品選定:EMIおよび出力ノイズ対策部品
- 基板レイアウト例
- 事例回路と部品リスト
- 評価結果:効率とスイッチング波形
- SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例 ーまとめー
-
AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
- 評価編
- 製品紹介
- 動画
- FAQ