AC-DC コンバータ|設計編
主要部品の選択:出力コンデンサ C5
2016.09.13
この記事のポイント
・出力コンデンサは、設計目標の出力リップル電圧を満足するように、リップル電流とコンデンサのインピーダンスから選択する。
・アルミ電解コンデンサは寿命のある部品で、リップル電流が大きいと寿命が短くなる。
出力コンデンサは、インダクタをともない出力電圧を平滑化するLCフィルタの役目と、負荷電流を供給する役目をもっています。また、出力リップル電圧の大きさは、コンデンサのインピーダンスに大きく依存します。
出力コンデンサ C5
右の回路図は出力周辺の切り抜きです。出力コンデンサC5は出力からGNDに接続されています。インダクタをともなってLCフィルタを形成しているのは見ての通りです。
ICに内蔵されているMOSFETがオンの時は、出力ダイオードD4はオフで、出力コンデンサは充電されるとともに負荷電流を供給します。
MOSFETがオフの時は出力ダイオードはオンになり、この時は出力コンデンサが負荷電流を供給します。
出力コンデンサの定数算出
出力コンデンサは、出力のピークリップル電圧(ΔVpp)が、設計目標とした出力リップル電圧以内になるように選択します。出力リップル電圧は、ピークインダクタ電流の実効値であるリップル電流と、コンデンサのインピーダンスにより決まります。したがって、目標とするリップル電圧を起点に計算して行きます。C5のインピーダンスZは以下の式から計算できます。
ΔVpp=100mVとすると:
求められたZは、この回路の最小スイッチング周波数である60kHz時の値です。一般的なスイッチング電源用電解コンデンサ(低インピーダンス品)のインピーダンス規定条件は100kHzです。コンデンサのインピーダンスは、共振点まで周波数に対してほぼ直線的に低下するので、以下の式により100kHz時のZを求めることができます。
次に、リップル電流 Is(rms) を求めます。
これで、コンデンサのインピーダンスとリップル電流が求まりました。
続いて、耐圧は経験則から出力電圧の2倍程度を目安にするのが一般的です。
VOUT×2 = 20V×2 = 40V → 35V以上とする
インピーダンスが0.08Ω以下、リップル電流定格が0.4A以上、耐圧35V以上を満たす電解コンデンサを選定することになります。この回路では、スイッチング電源用の低インピーダンスタイプで、35V耐圧、 470μFの電解コンデンサを選択しました。
出力コンデンサに限りませんが、実際のリップル電圧、リップル電流は必ず実機で確認してください。
また、電解コンデンサは寿命がある部品で、リップル電流を多く流すと寿命が短くなります。寿命に関しては、コンデンサメーカーから算出方法や規定が提示されていますので、使用するコンデンサメーカーに確認してください。
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