AC-DC コンバータ|設計編
設計に使うICの選択
2014.07.30
この記事のポイント
・電源の場合は設計開始時点で仕様が完全に決まっていないことが多々ある。
・設計開始に必要な情報を可能な限り集めて、変更がある前提で許容幅と柔軟性をもって設計に入る。
・現実的な電源設計においては、電源ICが担う部分が大きく、使うICによって回路や部品が決まる。
電源としての仕様が固まれば、設計の手順の2番目として、「制御用電源ICの選択」に入ります。
なぜ、「ICの選択」なのかというと、昨今の電源回路の設計には電源用ICを利用するのが一般的であり(電源メーカーは違うかもしれません)、非常に優れた制御が可能なだけではなく、様々な保護機能が搭載されているので、設計が簡素になり実装面積などの面でも有利だからです。
ここでは、PWM方式のフライバック型AC-DCコンバータを設計するために、例題として具体的な電源仕様を設定し、それに対応する電源ICを決定します。
電源の仕様は、「設計開始のために最低限決めておきたい仕様」の項目に基づいて、一般的な条件を設定しました。また、その条件をもとにICを選択する際の着目点も記します。
例題としての電源仕様 | IC選択のポイント | |
---|---|---|
・入力電圧:85~264VAC | ⇒ | ワイド入力対応の電源方式 |
・出力:12VDC±5% / 3A 36W | ⇒ | 出力パワートランジスタ外付け |
・出力リップル電圧:200mVp-p | ⇒ | 電流モードタイプ |
・絶縁耐圧:一次-二次間 3kVAC | ⇒ | フォトカプラによるフィードバック制御 |
・動作温度範囲:0~50℃ | ⇒ | 動作保証温度範囲:-40~85℃ |
・効率:80%以上 | ⇒ | スイッチング方式 |
・無負荷時入力電力:0.1W以下 | ⇒ | 起動回路内蔵、低消費電力タイプ |
・入力電圧:85~264VAC
入力の仕様は世界対応を想定しました。ICはこの広い入力範囲に対応する耐圧をもち良好な動作ができるものを探します。
・出力:12VDC±5% / 3A 36W
出力電圧は、産業機器で標準的に使わるバス電圧12Vで、±5%の精度も一般的なものです。出力電流は3Aとし、スイッチングトランジスタ内蔵型ICの対応もありますが、基本構成を理解するためにスイッチング用のパワーMOSFETを外付けにします。
・出力リップル:200mVp-p
出力リップルは標準的なレベルです。リップルを低く抑えることが可能な電流モードの制御ICに着目します。
・絶縁耐圧:一次-二次間 3kVAC
トランスももちろんですが、出力電圧の安定化のためのフィードバック制御のために二次側の電圧(出力電圧)を一次側に戻すラインが必要で、このラインも絶縁する必要があります。フィードバックラインの絶縁にはフォトカプラを利用します。
・動作温度範囲:0~50℃
動作温度範囲は機器の一般的な仕様にしました。これをカバーするためには、これより広い範囲のICと部品を選択します。
・効率:80%以上
この効率も一般的なものです。DC-DCコンバータでは90%を超える効率が要求されることがありますが、AC-DCコンバータの場合は、もちろん改善の余地はありますが、80%は決して低い効率ではありません。この効率を実現するには、スイッチング方式のAC-DC変換回路が必要です。
・無負荷時入力電力:0.1W以下
これを実現するには、低消費電力を意図した制御ICを選択する必要があります。
こういった電源仕様を実現できるICを探すことになりますが、そのためにはAC-DC変換の方式と特徴、市場に流通している制御用ICの種類や機能を知っている必要があります。一見大変そうですが、変換方式を決めてしまえば、そんなに難しくはありません。今回は、PWM方式のフライバックコンバータなので、ICを探す際には、まずフライバックコンバータを構成できるICを探します。次に、PWM方式のものを探し、入力範囲や出力仕様に合うものいった順に探すことができます。ICメーカーのwebサイトでは条件検索ができますので、大いに利用しましょう。
以下に、この電源仕様を実現できる電源ICを示します。
BM1P061FJ:AC-DC用 PWM コントローラIC
特長
- PWM 周波数65kHz
- 電流モード方式
- 軽負荷時バースト動作、周波数低減機能
- 650V 起動回路内蔵
- VCC 端子 低電圧保護、過電圧保護
- CS端子 オープン保護
- CS端子 Leading-Edge-Blanking 機能
- サイクルごとの過電流リミッタ機能
- 過電流リミッタAC 補正機能
- ソフトスタート機能
- 2次側過電流保護回路
- 周波数ホッピング機能有り
BM1P061FJは、AC-DCコンバータ用のPWMコントローラICで、絶縁型のフライバックコンバータを構築することができます。ICとしての特長は上記の通りですが、今回の設計例の仕様に対して、264VACを整流したDC電圧に十分対応する650V 耐圧起動回路を内蔵した電流モードのPWM方式スイッチング電源用ICである点、起動回路と軽負荷時スイッチング周波数低減機能を搭載し省電力かつ高効率を実現できる点、そして、BM1PXXX シリーズとしてラインアップを構成おり、設計途中での仕様変更などに対応しやすいことが主な選択理由になっています。
また、フライバックコンバータを構築する際の基本回路構成も示しました。見ての通り、ICの集積化が高いので外付け部品が非常に少なくなっています。ICの詳細については、データシートを参照いただければと思います。
さて、設定した電源仕様を実現するICが決まりましたので、簡単にAC-DC変換についておさらいをして設計に進みたいと思います。
【資料ダウンロード】PWM方式フライバックコンバータ設計手法
AC-DC コンバータ
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設計編
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- 絶縁型フライバックコンバータの基本とは
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- 主要部品選定:電源ICのBO(ブラウンアウト)ピン関連部品
- 主要部品選定:スナバ回路関連部品
- 主要部品選定:MOSFETゲートドライブ調整回路
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- 主要部品選定:電流検出抵抗および各検出用端子関連部品
- 主要部品選定:EMIおよび出力ノイズ対策部品
- 基板レイアウト例
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- SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例 ーまとめー
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AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法概要
- 評価編
- 製品紹介
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