Siパワーデバイス|FAQ

Siパワーデバイスのよくあるご質問

2020.01.01

SiパワーデバイスのFAQ一覧

MOSFET

設計・動作

1.5V駆動品を、1.8V駆動品や2.5V駆動品と置き換えることは可能か?
1.5V駆動の意味は、ゲートーソース間電圧:MIN1.5Vまで駆動できるという意味ですので、1.8V、2.5V駆動の置換えとして可能です。但し、ゲートーソース間電圧に最大定格:±10V以上印加する場合は4V駆動品を使用してください。
瞬間的にドレイン電流定格以上の電流が流れるが、使用可否判断はどのようにすればいいか?
製品毎のSOA(Safe Operating Area)がありますので、エリア内であれば使用可能と判断いたします。
例:VDS=20V、Idpeak=2A、Pw=100μs時 ⇒ Pw=100μsのエリア内なので使用可能です。
MOSFETの発熱が大きく、記載条件以上の基板面積が必要と考えられる場合の算出方法は?
個別に使用基板でのRthの測定が必要となります。

仕様・規格

アバランシェ耐量とは?
起動時、遮断時などに定格電圧を超えることがありますが、アバランシェ耐量(エネルギー)を越えなければ破壊しない許容エネルギーをいいます。
(但し、ドレイン電流、チャネル温度は超えない条件下とする)

ダイオード

仕様・規格

平均整流電流:Ioと尖頭順方向電流:IFMの違いは?
60Hzの交流を印加したとき、その平均の整流電流値を平均整流電流、ピーク電流値を尖頭順方向電流といいます。それぞれの規格は各製品の絶対最大定格に記載しています。
ダイオードのリフローはんだ実装は可能か?
面実装品については全製品リフロー対応できます。実装条件など詳細な内容につきましては各製品の製品仕様書にてご確認下さい。また端子挿入品についてはディップ条件があるのでそちらを参照して下さい。
ダイオードの手はんだは可能か?
全製品対応できます。ただし、パッケージによってははんだ温度の条件が異なりますので各製品の製品仕様書にてご確認下さい。
ダイオード電流はほとんど平均整流電流での表記だが、DCではどのくらい流せるか?
各製品毎に下図のようなIo-Taグラフ、Io-Tcグラフをホームページ上に掲載しておりますのでそちらを参照して下さい。
ただし、実装基板・印加波形・周囲温度などによって変わりますのでご注意下さい。
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ツェナーダイオードの許容損失はどれくらいか?
ツェナーダイオード各製品のホームページ上に下記のような図が掲載しております。例としてお使いの製品がUDZSシリーズであれば周囲温度25℃で200mWです。また87.5℃では100mWということになります。
ただし、実装基板によって許容損失は変わりますのでご注意下さい。
ダイオードの逆回復時間(trr)とは?
順方向電流を逆方向に急激切替え時に一瞬逆方向に電流が流れる時間を逆回復時間(trr)といいます。

一般・その他

TVSダイオード(ESD保護)とは?
過電圧、静電気(ESD)、ノイズを吸収し、回路の誤動作やデバイス保護をするダイオードです。

バイポーラトランジスタ

設計・動作

デジタルトランジスタのVI(ON)とVI(OFF)について
VI(ON)Min.:
デジタルトランジスタがONである領域の最小入力電圧値をいいます。したがって、ON状態からOFF状態にしようとすれば、この最小入力電圧値よりもさらに下げる必要があります。
VI(OFF)Max.:
デジタルトランジスタがOFF状態を保つことができる領域の最大入力電圧値をいいます。したがって、OFF状態からON状態にしようとすれば、この最大入力電圧値よりもさらに上げる必要があります。
デジトラの内蔵トランジスタのベース電流の計算方法は?
DTC114EKAを例に以下説明します。

デジトラの動作時には内蔵トランジスタのエミッタ-ベース間(EB間)の順方向にベース電流が流れているため、EB間には順方向電圧(25℃で約0.7V)がかかっています。デジトラでは内蔵トランジスタのEB間と抵抗R2が並列に接続されているため、R2にも同じ0.7Vが印加されています。したがってR2には
IR2=0.7V/10KΩ=70μAの電流が流れていることが分かります。
入力電圧Vinが5Vの場合、IN端子の電位が5Vで、内蔵トランジスタのEB間電位差が0.7Vなので、抵抗R1の両端には 5V-0.7V = 4.3V の電圧がかかっていることが分かります。したがって、R1には
IR1=4.3V/10KΩ = 430uAの電流が流れていることが分かります。
したがって、内蔵トランジスタのベースには430μA-70μA=360μAの電流が流れていることが分かります。
このような計算で内蔵トランジスタに流れるベース電流が計算することができます。デジトラを十分ONさせる( =出力電圧Vo(on)を小さくする) には出力電流 Io が内蔵トランジスタに入るベース電流の10~20倍程度以下になるように出力電流:Ioや入力電圧Vinを調整して下さい。入力電圧Vinが足りなくて、十分な出力電流を流せない場合は、入力抵抗R1の小さいタイプのデジトラをご使用ください。

温度が25℃のときはエミッタ-ベース間順方向電圧は約0.7Vですが温度が変化した場合、順方向電圧は1℃上昇する毎に約2.2mV 減少しますので例えば50℃のときは0.7V-(50℃-25℃)×2.2mV=0.645V程度になります。逆に、-40℃に低下した場合は0.7+(25℃-(-40℃))×2.2mV=0.843V程度になります。
このように、温度によっても順方向電圧:VFは変化しますので、ご注意ください。また、25℃においての順方向電圧0.7Vもあくまでも目安です。±0.1程度上下することがございますのでご注意ください。
デジトラの場合、内蔵抵抗R1、R2には±30%程度のバラツキがございますので、抵抗値が最悪の場合を考えて計算ください。
このように、順方向電圧や抵抗値にはバラツキがありますので、上記の計算方法はあくまでも目安としてお考えください。

バイポーラトランジスタのコレクターエミッタ間に、耐圧と逆方向の電圧を印加可能か?
NPNトランジスタの場合、エミッタをGNDとしてコレクタに正の電圧を印加していったときの耐圧が仕様書に記載しているVCEOです(PNPトランジスタの場合はコレクタをGNDとしてエミッタに正の電圧を印加していったときの耐圧がVCEOです)。
これと逆方向(NPNの場合、コレクタをGNDにしてエミッタに正の電圧を印加した場合)の耐圧はエミッタ-ベース間の耐圧とほぼ同じになります。エミッタ-ベース間の耐圧は通常5-7V程度なので、コレクタ-エミッタ間の逆方向の電圧は5V以下でご使用いただくよう、お願いいたします(コレクタ-エミッタ間の逆方向に耐圧に近い電圧をかけるとhFE低下などの劣化が起こることがあります)。コレクタ-エミッタ間の逆方向の電圧が5V以下なら、電流はリーク電流程度しか流れません。


デジタルトランジスタも上記と同様にコレクタ-エミッタ間(OUT-GND間)の逆方向には5Vまで電圧を印加することができますが、GND-IN間に抵抗が入っている場合では、この抵抗を介して電流が流れます。

仕様・規格

バイポーラトランジスタのベース電流の最大定格は?
ベース電流の最大定格はコレクタ電流の最大定格の1/3です(ダーリントン接続トランジスタの場合は1/10です)。
例.2SD2656の場合
コレクタ電流最大定格はDCで1A 、パルスで2Aなので、ベース電流最大定格はDCで333mA、パルスで666mAになります。
デジトラの場合は、仕様書に記載してあるVinの定格を守れば入力電流が定格内になるようにVinの定格を設定してあります。
hFEの実力値のばらつきは?
hFEの範囲は弊社仕様書に示しております。上限・下限ともに表示しているものもあれば下限のみを示している品番もございます。上限・下限ともに示している品番につきましては、実力値はその全範囲の値になることがあります。下限のみを示している品番につきましては、実力値は下限値の数倍程度の範囲にあることが多いですが、詳しくはお問い合わせください。

仕様・規格

デジタルトランジスタ(デジトラ)とは?
デジタルトランジスタ(デジトラ)は、バイポーラトランジスタに抵抗を追加したものです。

通常のバイポーラトランジスタ 抵抗R1(入力抵抗)を追加 抵抗R2(EB間抵抗)を追加
■抵抗R1について
・抵抗R1の役割:入力電圧を電流に変換してトランジスタの動作を安定させる。
バイポーラトランジスタは、入力(ベース端子)にICなどの電圧出力を直付けして電圧制御で動作させると、動作が不安定になります。
ICとベース端子の間に抵抗(入力抵抗)を入れて電流制御として動作させることで動作を安定させることができます
(出力電流は入力電圧に対して指数関数的に変化しますが、入力電流に対してはリニアに変化するためです)。
この入力抵抗を内蔵したのが、デジトラの抵抗R1です。

入力が電圧の場合と、電流の場合のトランジスタの動作を比較してみます。

  電圧制御
入力:エミッタ-ベース間電圧VEB
電流制御
入力:ベース電流IB
測定回路図
理論式
入力-出力特性

入力-出力特性を見ると、右側の電流制御では出力は入力に対してリニアに変化しているのに対して、左側の電圧制御では出力は入力に対して指数関数的に変化することがわかります。つまり、電圧制御では、ごくわずかな入力の変化で出力電流が大きく変化してしまい、動作が不安定になってしまいます。
たとえば、右側のグラフでは、入力電流が40μAから80μAに2倍変化したときに出力電流は9mAから18mAに2倍になりますが、左側のグラフでは入力電圧が0.7Vから0.8Vにわずか14%だけ変化しただけで出力電流は10mAから70mAに7倍にもなってしまいます。
これでは、入力電圧にわずかなノイズが入っただけで出力電流が大幅に変化してしまい、実際の使用には適しません。
このように、バイポーラトランジスタは電流制御のほうが安定するため、ICからの電圧出力をベース電流に変換するのに入力抵抗R1が必要になります。デジトラはこのR1を内蔵しているので、部品点数やスペースの削減に適しています。

■抵抗R2について
・抵抗R2の役割:リーク電流を吸収し、誤動作を防ぐ。
抵抗R2は、入力側から入ってくるリーク電流やノイズなどをグランドに落とすことでトランジスタの誤動作を防ぎます。

微小な電流なら入力電流は全てグランドに落ちますが、入力電流が大きくなると、入力電流の一部がトランジスタのベースに入りはじめ、トランジスタがオンします。

入力電流が小さいときは、すべての入力電流がグランドに落ち、トランジスタはONしない。(リーク電流などで誤動作しない)

入力電流が大きくなると、一部の入力電流がベースに入り、トランジスタがONしはじめる。(通常のオン状態になる)
VR2=VBE<(EB間の順方向電圧≒0.7V)の場合 VR2=VBE>(EB間の順方向電圧≒0.7V)の場合

全体

設計・動作

周囲温度の変動に対してどのような注意が必要か?
許容損失(Pc)は周囲温度(Ta)に合わせて、軽減(ディレーティング)する必要があります。以下のグラフからトランジスタにかかる電力を周囲温度に合わせて軽減して下さい。
安全動作域(SOA)のディレーティングも必要ですので詳しくは「ロームのトランジスタを安心してお使いいただくために-TR使用可否判断方法」をご参照ください。
また、電気的特性では 例えばバイポーラトランジスタ/デジタルトランジスタの場合, 入力電圧(VBE, VI(on), VI(off),)や hFE, GIは温度により特性が変動します。電気的特性曲線グラフから温度が変化した時も動作に問題がないように設計して下さい。MOSFETも同様に配慮下さい。

仕様・規格

絶対最大定格とは?
半導体デバイスには必ず絶対最大定格を規定しておりますが、これは「瞬時たりとも超過してはならない限界値で、また2項目以上規格値が定められている時、どの2つの項目も同時に達してはならない限界値」(JIS7032)と定められています。この絶対最大定格を瞬時に超えるとすぐに劣化、または、破壊に至ることもありますし、あるいは、その直後には正常に動作していてもダメージを受けやすいため、その寿命を縮めてしまうことになります。したがって、どの最大定格も超えないようにシステム設計を行ってください。
熱抵抗:Rthとは?
シリコン素子のPN接合(またはショットキー接合)で発生した熱が発散するまでの熱抵抗値でRth(j-a)は接合部から周囲まで、Rth(j-c)は接合部からケースまで、Rth(j-l)は接合部からリード端子までの熱抵抗値を表しています。ホームページ上に各製品毎に下図のようにグラフを掲載していますのでご使用時の接合部温度:Tjを求めることができます。
ただし、この熱抵抗値は基板、ランドパターンなどの大きさ、材質などによって変わりますのでご注意下さい。
Pbフリー、ROHS指令について対応しているか?
全製品についてPbフリー、RoHS指令に対応しています。
トランジスタ/ダイオード製品のMSDS(SDS)はあるか?
トランジスタ、ダイオード製品については、 固形物に該当しMSDS作成及びその提供が適用されません。
ハロゲンフリー化の理由
従来よりRoHS指令に対応する臭素系難燃剤を含むモールド樹脂を使用していましたが、さらなる環境影響低減のために、ハロゲンフリー樹脂を採用していきます。
ロームのハロゲンフリーの定義(均質材料中で):
①塩素が900ppm以下
②臭素が900ppm以下
③塩素および臭素の合計含有率が1500ppm以下
④三酸化アンチモンが1000ppm以下。
これは、IEC61249の規定に適合し、環境管理に厳しい欧州主要メーカー要望値を満足するものです。
ガルウィングからフラットリードにするメリットとデメリットは?
メリット:
お客様での基板はんだ実装時、多少Θ(シータ)ずれが生じても溶融はんだの表面張力によるセルフアライメント性がよくなります。
デメリット:
端子自体が短くなり、曲げ加工部がなくなることで、実装後の基板曲げストレスや基板実装強度が低くなることが懸念されますが、フラットリードタイプでも絶対的な強度は十分であり、実使用上問題となることはありません。
絶対最大定格を一瞬だけ超えての使用は可能か?
絶対最大定格を越えての使用は一瞬だけでもできません。ブレークダウンしてトランジスタが破壊したり、hFEが低下するなど劣化の可能性があります。単発パルスの場合、使用できる範囲は安全動作領域(SOA)をご確認下さい。連続パルスの場合は電力計算や素子温度の計算が必要になります。詳しい判断手順は、「使用可否判断方法」・「素子温度の計算方法」をご参考下さい。
(また、合わせて”ディレーティング”に関する項もご参照下さい。)
MOSFETのパッケージ熱抵抗θjaは、パッケージが同じなら同じと考えてよいか?
小信号品では同じと考えて頂いても大きな差異はありません。
ただしパワー品では、定格によって同パッケージでも熱抵抗値は異なります。
半導体部品はUL規格に準拠しているか?
ULは安全規格であり、トランジスタ、ダイオード自体のUL認証はありません。ただし、難燃性が要求されるモールド樹脂については、難燃性グレードUL94V-0の認証がなされた材料を使用しています。
車載品と一般品との差異について
一般民生でも実績のある汎用タイプの製品においては、基本的には特性、仕様書上の保証項目、材料に差異はありません。製造工程においては、層別できるように特別管理を行っています。また、トレーサビリティについては15年を確保します。また、車載ユーザーからの、特別な個別要求に対してもできる限り対応できるようにしています。

一般・その他

保管に関する注意点
全製品、下記の条件で推奨しています。
(1)本製品を下記の環境又は条件で保管されますと性能劣化やはんだ付け性等の性能に影響を与える恐れがありますので
このような環境及び条件での保管は避けて下さい。
・潮風、Cl2、H2S、NH3、SO2、NO2等の腐食性ガスの多い場所での保管
・推奨温度、湿度以外での保管
(2)はんだ付け性等の性能は弊社出荷より1年間とし、上記保管方法を遵守された場合に限らせて戴きます。
(3)推奨保管条件 温度=5~40℃、湿度=30~80%
ハロゲンフリー製品は供給可能か?
小信号パッケージに関しては対応可能です(別途お問い合わせください)。
過電流保護素子(ICPシリーズ)の供給状況
過電流保護素子(ICPシリーズ)は生産、販売を中止しております。申し訳ございません。
端子曲げ加工の注意点は?
端子線を曲げ加工される場合は、下図のようにあらかじめ端子線をチャッキングして本体はフリーの状態で曲げて下さい。ただし、90度以上端子線を曲げることはお避け下さい。また端子曲げは繰り返さないで下さい。

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Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。

Siパワーデバイスのよくあるご質問

Siパワーデバイスの基礎