奨学生レポート RMFレポート ミュージックサロン インタビュー

ルーツと未来(関 朋岳さん)3/3

関 朋岳さん/Mr. Tomotaka Seki
(専攻楽器ヴァイオリン/violin)

[ 2023.03.10 ]

東京音楽大学アーティストディプロマコース

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の関 朋岳です。

 

まず始めに、日々多大なるご支援を賜りますローム株式会社の皆様には心から御礼申し上げます。ご支援いただいたこの1年間はおかげさまで大変実りあるものとなりました。

 

<ニューヨークでの演奏会の様子>

 

 

レポートを書くにあたり、1年間を総括する言葉を考えましたが、吸収という言葉が適切だと思いました。

今年は私にとってヴァイオリンを始めてから20周年という節目の時なのですが、人生において完全に生活の一部、体の一部となったヴァイオリンは今の私にとって、なくてはならないものとなりました。

 

しかしそれだけ長く続けてきたからこそ今一度自分の演奏やスタイルを見直し、頭を柔軟にして色々な考え方を改めて吸収したいという気持ちが生まれ、それを目標に掲げた1年でもありました。

 

 

そんな私にとって、今年は海外に行く機会に多く恵まれたことはとても貴重な事でした。

中間レポートでは、9月に訪れたウィーンでの出来事を書きましたが、その後1月にはニューヨークを訪れました。

ウィーンでは気品と伝統を学びましたが、ニューヨークは都会である東京をさらに上回る大都会であり、また違った文化の良さを体感しました。

 

ニューヨークといえばタイムズスクエアなどを想像していただけると分かると思いますが、圧倒されるような活気、そして人々の独特な自信とおおらかさ、食べ物のジャンキーさ、マリファナのにおい、など最初は戸惑ってしまうような光景ばかりでした。

その反面、移民の国でもあるので多くの人種が共に生活していることの魅力を感じたり、時にはヨーロッパの要素を感じる瞬間があったり、さまざまな顔を併せ持つ街に感激しました。

そんな人々や文化を間近で知ることができたのは私にとって価値観の幅を広げる大きな経験だったと思います。

 

ニューヨークのクラシック音楽についても触れる機会がありましたが、どれもレベルの高さを感じました。

ニューヨークフィルの公演に足を運びましたが、曲の解釈は様々な受け取り方があるとしても、その根底にある演奏自体の完成度と質の高さはものすごいです。

 

それ以上に感動したのは、メトロポリタン歌劇場でのオペラです。

愛の妙薬を観劇しましたが、歌い手やオーケストラの圧倒的に素晴らしいパフォーマンスはもちろんのこと、舞台や小道具などのセットの躊躇のないこだわりやお金の掛け方は想像を絶するもので、舞台装置のリアルさがまるで現実の世界のようでした。

ブロードウェイのミュージカルを見た際にも感じましたが、とにかくどのパフォーマンスにおいてもかなりハイレベルであり、多くの人々や人種、文化が交わる国だからこそ厳しいレースを勝ち抜かなくてはならない世界なんだと思い、それにより質の高さが生じている筈なので、私もこれからもさらに努力したいという刺激を得ることができた瞬間に度々出会いました。

 

<メトロポリタン歌劇場>

 

 

また、私はガラミアンという、もう亡くなってしまった名ヴァイオリ二ストが住んでいたニューヨークの家を訪れました。

私は小学生の時から小林健次先生に長くご指導いただいたのですが、その小林先生の師匠にあたるのがガラミアンです。

つまり私はガラミアンの孫弟子にあたるわけですが、昔から小林先生によくガラミアンの話をしていただいていましたし、小林先生がガラミアンから受け継いだものを度々教えていただいていたので、自分の演奏スタイルのルーツを垣間見ることができた事は幸せでした。

 

クラシック音楽は伝統ものなので、私が後世にガラミアンや小林先生の考えを伝えていく事は私の使命だと考えています。

ですので、今回の経験は必要不可欠だったと思います。

 

<ガラミアンの家にて>

 

 

これから様々な国に赴き、そこでたくさんの人と出会い、様々な価値観を吸収していきたいと思えた、そんな1年となりました。

今年は再度ニューヨークに、その後は初めてフランスへ訪れる予定がありますので、また新たな発見や出会いがある事に期待が膨らんでいます。